第8話 スキルの把握

 エメラルドグリーンの長い髪に尖った耳、エメラルドの瞳、そして溢れんばかりの胸。

 身長は俺より少し小さいくらいなので165とかそんなところか。

 年は、見た感じ20歳くらいだろうか?

 てか、胸すごいな。

 初めて見たわあんな大きいの。

 そんなに巨乳好きではない俺でも、少し目が離せなくなる。


「きみー、そんなジロジロ見てどうしたの? 触りたいの? 触らせてあげようか?」


 えっ!? マジですか? あのたゆんたゆんのお胸を――


「おい、リザ。ユウザキで遊ぶのはそれくらいにしてやれ」


「はーい。分かったよー」


「こいつは、リザ。"完全なる平和パーフェクトピース"の一員で蘇生魔法が使える奴だ」


「わたしは、カーミル。ドラゴンよ」


 ちょっと不機嫌そうな感じのカーミルが自己紹介をする。


「カーミルちゃん、ちっさくて可愛いねー」


 リザさんはカーミルを抱き寄せて、頭をヨシヨシする。


 ちょっといいな。いや大分いいな。


「俺は、勇崎優心だ」


「ユウシン君、今夜、私と一緒に寝ない?」


「えっ!? ぜひ!」

 

 しまった。思わず口に出してしまった。


「ユウザキ、あいつのは冗談だぞ。まあ、童貞には分からねえか」


「ど、ど、童貞じゃねーし」


「フン」


 バレットさんに鼻で笑われた。


 後、カーミルの機嫌が悪くなった。


 ★★★


 翌日の朝。


 家から少し離れたところにある広場に俺、カーミル、バレットさん、リザさんの4人で来ていた。

 その広場は森の中にあった。

 そこは、"完全なる平和"が戦闘の練習の為に昔作られたらしい。


「そんじゃ、始めるか」


「バレット。知ってると思うけど、死体があんまりにも酷い状態だといくら私でも蘇生出来ないからねー」


「了解。了解」


 なんか、俺の命に関わりそうなやり取りが凄く軽い感じで行われていた。


「じゃあ、ユウザキ。取り敢えず、一回死ね」


「まった! そんな軽々しく死ねって」


「大丈夫、大丈夫。リザがいるから心配すんな」


 カーミルに助けての視線を飛ばすと目を逸らされる。

 リザさんの方を見ると、満面の笑みを浮かべていた。

 誰も止めてはくれないようだ。


「いやいや、そういう問題じゃ――」


「つべこべいうな。さっさと死ね。【氷弾】」


 あっ。


 俺は後ろへ倒れてく。

 視界には左胸から血が出てくるのが映る。




 ――力がみなぎってくる。


 スキルが発動したのだろう。


 俺は立ち上がる。


「ほう。全力で来い!」


「バレットさん。さっき行き成り魔法を打ってきたの怒ってますからね」


「じゃあ、その怒りをぶつけてこい。俺は強いからな。【氷弾】」


 ものすごいスピードで氷の弾がこちらへ迫ってくるのが見える。

 俺はそれを避けた。


「ほう、避けるか。さっきは全く反応出来ていなかったのによ」


「あの魔法って氷の弾丸を飛ばしていたんですね」


 普通の状態じゃ、早すぎて何も見えていなかった。


「これは避けれねえだろ【氷散弾】」


 氷が散弾状に襲いかかってくる。

 範囲が広い!


 俺は両腕で顔を庇う。


「まじかよ。全然効いてねえじぇねえか」


 あんなの普通食らったら怪我の一つはしそうだが、俺は無傷だった。


「これでいくか。【氷結の大剣】」


 バレットさんの手に白い冷気を纏った大剣が現れる。

 その大剣を右手に持ち、距離を詰めながら斬りかかってくる。

 俺はそれをどうにか躱す。

 あんなので斬られたら一溜りもない。

 あのゴブリンのようになってしまう。


 それから、バレットさんは片手で大剣をなんども振るい、俺を斬りつけてくる。

 それをどうにかこうにか躱し続ける。


「動きは素人だが、よく躱すな。その身体能力の上がり具合はなかなかだな」


 俺は、口を開く余裕もなく必死で大剣を躱す。


 バレットさんが大剣を持つのを片手から両手へ変える。

 そして大剣を振る。


 速っ!? 避けきれない――痛っ!


 俺の右肩が切り裂かれた。


「何っ!?」


 そして、白い大剣が砕け散った。

 バレットさんは一瞬、驚愕の表情をして後ろへ跳び距離を取る。


「痛い! 痛い――あれ?」


 痛くない。

 恐る恐る傷口を触ってみる。

 傷がない。

 あるのは血の跡だけだ。


「あの速度で傷が塞がるのか!? 【氷結針雨】」


 細く鋭い真っ白の氷の針が雨の様に俺へと降り注ぐ。


 ぜんぜん痛くない。

 ちょっとチクチクするくらいだ。


「おいおい。嘘だろ。全然効いてねえ」


「今の魔法なんだったんですか? チクチクするくらいで全然大した事なかったですよ」


 俺は少し調子に乗ってしまった。

 そして、後悔する事に。


「ほう。舐めんじゃねえぞ。【氷結の槍雨】」


 あれ、巨大蜘蛛を一撃で大量に葬った時の――


「バレット、それはまずいって!」


 リザさん焦った声が聞こえる。


 白い冷気を纏った氷の槍が雨のように降り注ぐ。

 槍が次々と俺に刺さり、砕けていく。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


 俺は蹲り、頭を守る。

 槍の雨に体を削られていく感覚がする。

 

 痛い。まさか、こんな所で殺されるのか?


 槍の雨が止んだ。


「バレット! 何考えて――――嘘でしょ。あの魔法受けてあれだけなの」


「ユウシン!」


「カーミル。心配すんな、大丈夫だ」


 体中の痛みがだんだんと引いてきた。


 バレットさんは呆然と立ち尽くしている。

 大分痛かったし、ちょっと仕返しをしてやろう。

 俺は、速攻で距離を詰めバレットさんを殴った。

 両腕をクロスするようにガードされたが、ザーっと音を立ててバレットさんは後ろへ押しやられる。


「はーい。そこまで。一旦、休憩にしましょう」


 リザさんがストップを掛けた。


 カーミルが俺のもとへと駆け寄ってくる。


「ユウシン! 大丈夫!?」


「大丈夫だ。今はどこも痛くない」


「ユウシンの戦い、凄かったよ」


「そうか?」


「うん! かっこ良かったよ!」


 なんか女の子にかっこ良いと言われると嬉しいな。


 リザさんがバレットさんのもとへと行き声を掛ける。


「バレット。ちょっとあれはやり過ぎよ」


「ああ。分かってる」


「らしくないわね。まあ、いいわ」



★★★


 それから、訓練の日々は続いた。

 最初はとにかくたくさんスキル〈死からの反撃デスカウンター〉を発動させて、発動時間やどのような能力があるのかを調べていった。

 最初のうちは殺されるのが凄く憂鬱だったが、1週間くらいである程度は慣れてきてしまった。


 死ぬのに慣れるってどうなんだろうな。


 スキルというのは基本、1人1つで生まれつき持っている者と後から目覚める者が半々であり、能力によってはものすごく重宝される。

 そして、スキルは判定によって分かるのは名前だけ。後は、能力を使いながら把握していくしかないのだ。

 スキルは似たようなものはあるが、基本的に同じ能力は存在しない。なので、人から能力を教わるということは出来ない。


 1ヶ月経つ頃には俺はスキル〈死からの反撃〉の能力を掴んできていた。


 1つ目、発動条件は死ぬ事。


 2つ目、スキル発動時、肉体の完全再生及び、体力の完全回復。

 肉体がどんな傷を負っていようと、そもそも肉体自体がなかろうと再生する。

 まあ、再生するのは肉体だけであって装備や服は再生しない。


 俺は、この訓練で何回全裸になったろうか。

  

 3つ目、身体能力の向上。


 4つ目、毒や薬物などの耐性。


 5つ目、肉体の高速再生及び、体力の高速回復

 スキル発動中は怪我をしてもすぐ治り、体力の回復スピードが早すぎてこの1ヶ月間では息が上がる事さえ無かった。


 6つ目、魔法破壊、魔道具破壊、魔力の消滅

 俺が魔法を受けても無事だったのも、カーミルの呪いが解けたのも、カーミルが魔力切れを起こしたのも、この効果の影響だ。


 7つ目、殺された相手による能力上昇の違い。

 バレットさん、リザさん、カーミル。殺される相手によって3~6つ目の能力上昇が違った。

 俺を殺した相手が強いほど能力の上昇が大きかった。

 ちなみに自殺をした場合、めちゃめちゃ弱かった。


 ちなみにカーミルは俺を殺すのを凄く嫌がっていた。

 それが普通の反応なのにバレットさんとリザさんと来たら。


 8つ目、スキルは一定時間で終了。

 一定時間というのは、俺を殺した相手が強いほど長くなる感じだ。

 最初は、分からなかったスキル切れのタイミングだが、今では感覚的にスキルが切れる30秒前くらいには分かるようになった。


 最後に、〈死からの反撃〉発動中に、死ぬと〈死からの反撃〉は発動しない。

 つまり、スキル発動中に死ねばそれまでって事だ。

 

 蘇生魔法の使い手は多くはいない。

 気を付けていかないとな。


 ただ、バレットさん曰く「お前を殺した相手にまた殺されるって事はそうそうないぞ。殺されるならスキル発動後に強力な敵が来るとかだな」と。

 そう、俺はスキル発動中、殺された相手に一度も負ける事はなかった。

 その後バレットさんは付け加えるように「でも、油断はするなよ。何があるかわからねえからよ。後、スキル持ちには気を付けろ」と。


 そしてリザさんは「そのスキルは強力だねー。自分を殺した相手を絶対殺すみたいな感じだよねー。だけど、スキルの条件を知ってればやり様はあるけどね」と。

 続けてリザさんは「例えば、眠らせた後に拘束して、そのまま死なないように監禁すればね、はい、終わり。スキルの事は安易に漏らさない事だよー」と。


 そして、スキルの把握がだいたい終わった所で、体力作りや肉体強化、体術、剣術の訓練も始まった。


 それから2ヶ月、勇者召喚をされた日から約3ヶ月がたった。



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