第11話 連載を畳むべき? 続けるべき?

連載を畳むべき? 続けるべき?


 以前頂いたご質問にお答え致します。

 皆様も創作活動で疑問などございましたら、遠慮せずにコメントを残してくださいね。


────────

雨 杜和orアメたぬき様


ラストって、本当に難しいですよね。
そして、読み手の方が来てくださらない作品も残念です。

その上で、つい思ったのですが、どのくらい読まれていれば、その作品を続ける選択があるのでしょうか?
この辺り、線引きが難しいといつも書いていて思ってしまいます。

────────


 連載を畳む決意はいつすればよいのでしょうか。

 これに明確な数字やパーセンテージでお答えできません。

 ただ、基準があるとすれば「書き手かあきらめたとき」です。


 たとえば連載している作品が、10話で100PVを獲得していたとします。

 この作品を畳むべきか、続けるべきか。


 もし前作が10話で1000PVを稼いでいたとしたら、本作は失敗のように受け止められ、畳む決意を固めるかもしれません。

 しかし前作が10話で10PVしか読まれていなかったら、100PVは「読まれている作品」なのです。これは続けたくなりますよね。


 つまり書き手がそれまでに投稿した作品の手応えを元に、今作は失敗なのか成功なのかを判断し、「あきらめたら」そこで試合終了です。


 書き手によっては「何話でPVいくつ得られなければ畳む」と決めている方もいらっしゃるでしょう。

 底辺の書き手としては「1話10PV」でも小躍りするんですよ。

 「ああ、読まれているな」と。

 しかしてっぺんの書き手は「1話1000PV」獲れなければ失敗作だと思っている方もいるはずです。


 つまり「絶対値」で「連載を畳むべきか続けるべきか」は示せないのです。

 つねに「相対値」で書き手にとって好調なPVやいいね、評価、レビューの基準を持っているはずです。

 そしてだいたいは「前作と比較して」か「過去最高と比較して」となります。


 前作を超えられない作品をいくら連載しても、それ以上の作品としてフィニッシュさせるのはなかなか難しいものです。

 あまりにも前作が良すぎた場合は、次作を期待されてそれを超えるスタートとなることもあります。

 しかし必ずしも前作をすんなりと超えられるとは限りません。


 前作よりも上の作品を書こうとするのは「向上心の現れ」であり、至極喜ばしいことです。

 しかも「過去最高と比較して」さらに良い作品を、と狙って書いている方は伸びしろもそのぶん大きくなります。


 そこで「連載を畳むべきか続けるべきか」で悩まないために、過去作のデータをしっかりとっておきましょう。

 あの作品は「何話であれだけのPV、いいね、評価、コメント、レビューが付いていた」という実績こそ、比較対象として適切なのです。


 他人の作品の★評価を羨んで、「あんなに稼げていないから失敗作だ」と思ってはなりません。

 駆け出しがトップランカーに及ぶべくもないのは自明の理。

 比べるのはつねに自分が書いた前作と過去最高作です。

 ほとんどの書き手はこのふたつを見て「これは手応えが良い悪い」を感覚的にとらえているのです。

 だから、連載を畳む基準は「自身の過去作と比べて明らかに劣っている」ときのみです。



作品のよい畳み方

 作品を畳む時は、唐突に打ち切るのではなく、物語として綺麗に終わるように体裁を整えるべきです。

 その結果が夢オチでもよいではありませんか。


 オチをきちんとつけるのは、あなたが失敗作だと思っていても、連載を喜んで追ってくれていた読み手に対する最低限の礼儀です。


 中には連載を途中でぶった切って、作品を削除または非表示にしてしまう書き手もおられるようですが、これは絶対に推奨できません。

 これまで楽しんで読んでくれていた作品のフォロワーを裏切る行為だからです。

 こんな目に遭った読み手が、あなたの新作を期待して待ってくれると思いますか?

 「また途中で連載が打ち切られるんじゃないか」と考えて、多少興味を惹かれる作品であっても離れてしまう可能性のほうが高いのです。

 とくに駆け出しの書き手は作品のフォロワーをあなた自身のフォロワーに変えていかなければ、PVや評価やいいねや★やレビューは期待できません。


 最初の作品はどんなに手応えが悪くても、想定していた終わり方できっちり終わる。

 二作目からは前作や過去最高作と比較して、伸びるか止まるかを判断していき、どうにも旗色が悪くなったら、物語を綺麗な形で終わらせること。

 もちろん前作や過去最高作より伸びているなら、想定されていた終わり方まで向かってもよいですし、少し連載を伸ばしてみてもよいでしょう。




綺麗に終わらせようとするとよいことがあるかも

 ここでよくあるパターンをお話します。


 連載していてどうにも評判が今ひとつな作品があるとします。

 そして「これは畳んだほうがいいな」と見切って、物語を大急ぎで綺麗に終わらせようとまとめていったら、なぜか評判が急上昇することがあります。

 読み手が「結末が近いのかな」と感じて、いいねや評価をしてくれるようになるからです。

 するとなぜか急速に読み手が現れてPVやいいねなどがいきなり上昇してくる現象が発生することもあるのです。

 こうなったら、当初の予定通りに物語を畳んでもよいですし、本来の終わり方へ向かって仕切り直しできるのならそうするべきです。


 これはチャンスなのです。


 急上昇したPVやいいねは作品が面白かったことの現れであり、それを綺麗に終了させられれば作品のフォロワーもあなた自身のフォロワーも確実に増えていきます。

 それを本来の終わり方で締めるのか、短縮して綺麗に終われるところで締めるのかするのです。

 チャンスがまわってきたら、欲張ってもかまいません。元の終わり方に戻してもよいのです。


 どれだけ柔軟に物語をコントロールできるのか。

 その能力も書き手には求められます。

 「小説賞・新人賞」を獲って「紙の書籍」化をされたときも、連載はいつ終了となるかわかりません。

 好評なら、終わりをできるだけ伸ばしたほうがよいですし、不評なら最終巻できっちり終えられる。

 この能力がなければ、そもそも「紙の書籍」化を果たしても、二作目、三作目の引き合いなんて来なくなります。


 物語の完成度は、連載中よりも「連載の閉じ方・終わらせ方」によって決まります。

 途中がどんなに名作でも、終わりがひどければすべて台無しです。

 意外と打ち切り作のほうに名作が埋もれていた、なんてこともよくあります。

 「10週打ち切りマンガだけど、面白かったな」と思わせる。

 それこそ「○○先生の次回作をご期待ください」状態です。


 マンガも、読み切りを掲載して評判がよければ連載にまわします。

 そういう意味では、「小説賞・新人賞」で私たちが求められているのは「読み切り」なのです。これを本誌に掲載して「好評」なら本連載へ向けての準備が始まります。

 そのとき「本連載」は「読み切り」とは設定は同じでも「違う作品」になることがままあるのです。

 あの大場つぐみ氏&小畑健氏『DEATH NOTE』も、読み切りと本連載では「死神のノート」という設定は同じでも、主人公や作品背景がガラリと変わっています。

 「小説賞・新人賞」の受賞作はあくまでも「読み切り」でしかないのです。


 だから、物語として綺麗に終わっていなければ評価のしようもありません。

 連載マンガの第一話だけを応募して、大賞に二話以降を書かせるようなマンガ賞はどこにもありません。

 どんなマンガ家も一律に「読み切り」スタートです。

 小説だけが第一話スタートなんてことがあるはずもない。

 だから「小説賞・新人賞」に応募した作品は、あくまでも「読み切り」でしかないと考えてください。


 なんだ、「読み切り」扱いなのか。それじゃあ本当に書きたい物語は書かないほうがよいな。

 そうお思いかもしれません。


 確かに大半の作品は「読み切り」と「連載」で設定こそ同じでもキャラが変わったりストーリーが変わったりします。

 ですが、出色の出来であれば、「読み切り」の物語がそのまま「連載」になることもあります。

 だから出し惜しみはしないほうがよいでしょう。

 自分が考えた最良の終わり方を出し惜しんで、「小説賞・新人賞」が獲れるなんて都合のよい話はありません。

 すべての書き手が全力を出し切り、しのぎを削って獲った「小説賞・新人賞」のはずです。

 あなただけ余裕など残している場合ではありませんよ。



 不評なら早期に連載を畳む。

 基準は書き手自身の過去作です。他人の佳作ではない。

 そして好評なら、予定通りに終わらせてもよいですし、少し寄り道をしてもかまいません。

 すべての作品が好評なら言うことはないのですが、それほどうまい話はないと考えましょう。

 好評な作品は大事にして、連載を伸ばしていっても、誰も文句は言いません。

 好評なのに打ち切りであったり更新停止であったりすればたちどころに苦情が殺到します。

 PVやいいね、★評価を稼げる作品になりそうなほど好評なら、読み手へのサービスとして延長することも視野に入れておきましょう。

 その保険があってこそ「不評でもきちんと物語のオチをつけて連載を畳む」もあるのです。





────────────



毎度の告知です。


 本コラムでは、皆様からさまざまなご質問をお待ちしております。

 私ひとりで思いつくネタの数なんてたかが知れていますからね。

 小説を書くうえで疑問に思ったこと、不安に思ったこと、迷っていること。

 そんなことがございましたら、ぜひコメントを残していただけたらと存じます。

 私が「小説の書き方」コラムで蓄積した知識を、より実践的にお示しできたら、きっと皆様のお役に立てるでしょう。

 皆様のご質問を心よりお待ちしております。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る