第7話 冴えない連載小説のたたみ方って?
冴えない連載小説のたたみ方って?
今回もご質問にお答え致します。
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五郎猫さち様
できればまたの機会に、小説を畳む時の注意事項があれば教えてもらいたいです。
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10話ほど投稿したのだけど、どうにもウケの悪い作品というものがあるものです。
私の小説もご多分に漏れず、そのような作品で埋め尽くされております。
では、そのまま予定していた終わり方ができるまで連載を続ければよいのでしょうか。
私はその考えに反対致します。
ウケの悪い作品を予定通り完結させたとして、その作品が感動の超大作となるなんて、まず考えられません。
途中までウケの悪い展開をしながら、感動のラストで締められるものでしょうか。
途中までウケが悪いのは、出だしからの書き方や展開の仕方が悪かったからです。
つまりスタートダッシュに失敗して転んでしまったのに、それでも100メートルで10秒を切ろうと走っているのに似ています。
人間、割り切りが大事です。
とくに、渾身の大長編なのに最初から人気がなくて、いくら連載してもPVもいいねも評価もコメントも★もレビューも付かない。
これでも予定通り「渾身の大長編」を進めて、誰が喜ぶのでしょうか。
書き手のあなたは満足するかもしれませんが、誰も読まないで終わることなんてザラにあります。
そこで連載小説にとってたいせつになるのが「引き際」です。
ウケが悪いのなら、ほどほどのところでサッと連載を終わらせる。
「引き際」のよさが次回作への呼び水となりえます。
では上手な「連載小説のたたみ方」について考えてみましょう。
伏線はできるかぎり回収して終わる
小説を書くとき、皆様は序盤から伏線を配置していると思います。
この伏線が強い「惹き」となって読み手を煽るわけです。
そして連載を終了するとき、この伏線を回収せずに終わると、読み手が消化不良を起こします。
「この作者、途中でぶん投げやがった!」
言葉遣いが汚くて申し訳ございませんが、読み手の大半がこのような感想を抱くでしょう。
これでは次回作に挑んでも「この作者はすぐぶん投げるから」という理由で読み手が減ってしまうのです。
もちろん他の読み手から大絶賛を得るような作品だと知れ渡れば「今回だけなら読んでみるか」と重い腰を上げてくれるかもしれません。
しかし、それは「初動を逃す」という、最も目立てるはずのポイントを形成できない不利な面が出ます。
その点、伏線をできるかぎり回収してから終わると、「へえ、あの情報はこういう意図があって書かれていたのか」と、読み手から感心されます。
皆様もご存知の『週刊少年ジャンプ』の9話、10話で連載打ち切りになる作品たち。
編集部もお情けで「単行本が発行できる話数までは我慢する」からとそこまでの連載を許可しています。
単行本の印税が手に入らないと、作者は当初の原稿料しか手に入らないからです。
小説も商業ベースで考えたとき、最低限「単行本が発行できる話数までは我慢する」としても、マンガのように綺麗にスパッと終えるのが難しい。
伏線の回収は、とくに小説では必須のたたみ方です。
たとえば初回で「海賊王に、おれはなる!」と勢い込んでいたのに、海賊王とはまったく別の終わり方をしてしまったら。
「この作者、とんだホラ吹きだ」
そう思ってしまいますよね。
小説も同じです。
とくに初回に「主人公がどうなりたい」を書いてあるわけですから、それが叶ったのか叶わなかったのかくらいは書いてから連載を終了してください。
たとえば主人公の家族がある悪者に殺されたと知り、復讐心を駆り立てられて始まったシリアスな作品なのに、復讐を果たすでもなく、警察に逮捕させるでもなく、好きな人と結婚して終わりました。なんて許されるとでも思っているのでしょうか。
悪者を排除しないことには、新たに始まる幸せな生活もいつ脅かされるか。
それすら気が回らないのだとしたら、いったんプロの推理小説でも読みましょう。
ライトノベルの要
今のライトノベルは基本的に「異世界転生」「学園」「コメディ」「恋愛」要素で成り立っているところがあります。
これらを考えると、「異世界転生」と「恋愛」には明確なゴールがあるとわかるはずです。
たとえば「異世界転生」したのなら、その後現実世界に戻ってこられるのか、異世界で生をまっとうするのか。どうしても気になります。
また「恋愛」をお題目としている作品であれば、最終的に主人公は誰を選ぶのか。どうしても気になります。
このふたつは、ジャンルでありそれ自体が伏線なのです。
だから「異世界転生」をしたら「現実世界へ転生」して終わるのかもしれないし、「異世界で幸せに暮らしましたとさ」で終わるかもしれない。
ここをはっきりとさせる必要があります。
「恋愛」だって、気になる異性を複数登場させたにもかかわらず、誰も選ばずに終わる可能性だって当然あります。
ですが、たいていの場合、物語で最初に登場する異性の恋愛候補と結ばれるのが「予定調和」というものです。
「恋愛」で最終的に誰を選んで、どんな結末を迎えました。
ここをはっきりとさせる必要があります。
また「学園」だって、学園生活の終わりで物語を確実に終了させるのが基本です。
その定められた結末に向かって展開していく物語を、途中でたたまなければならないとしたら。
「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わるのかもしれませんし、卒業まで一気に時間を飛ばして「俺たちの結末はこうなんだ」で締めるのかもしれません。
「学園」にだって定められた時限はありますし、それが「伏線」を形成している場合も多くあります。
最低限、主人公がどうなったか書いて終えよう
伏線と同様の、どんな小説にも通用するたたみ方の鉄則があります。
それは「主人公がどうなった」かを明示することです。
「世界一の名探偵」になろうと意気込んでスタートした物語なら、連載をたたむときには「主人公は世界一の名探偵になりました」で終わるのが最もスッキリします。
もちろん「主人公は世界一の名探偵への道のりを歩み始めました」で終わってもかまいません。こちらにすると再度同じ登場人物で別の物語が書けるので、愛着のあるキャラクターと物語であれば、この「俺たちの戦いはこれからだ!」「○○先生の次回作にご期待ください」ENDもありといえばありです。
しかし、愛着のあるキャラクターと物語なのに、評価がきわめて低かったら。
そんな物語を二回も三回も書いたところで、打てば響くのでしょうか。
低評価作品の続編に需要はあるのでしょうか。
そう考えると「俺たちの戦いはこれからだ!」ENDは、形としてありでも、実際にやるのは不可能に近いでしょう。
あのサー・アーサー・コナン・ドイル氏『シャーロック・ホームズの冒険』だって雑誌連載でも中編小説で一作一作模索しながら書いていたわけです。
そしてジェームズ・モリアーティ教授とライヘンバッハの滝で争って消息不明となり連載がたたまれます。
つまり巨悪と直接対決をしての消息不明です。
「俺たちの戦いはこれからだ!」ENDではないですよね。
完全に1回ホームズを殺しています。
しかし熱狂的なファンが連載誌に大量の手紙を送り、その熱意が伝わってシャーロック・ホームズは復活します。
もし「ライヘンバッハの滝」でモリアーティ教授と対峙しているところだけ書いて「俺たちの戦いはこれからだ!」をやっていたら、今のシャーロック・ホームズ人気なんて存在しないのです。
一度明確に作者から殺されていたからこそ、「まだホームズの推理が読みたいんだ」という声が挙がるのです。
最後が曖昧なままで終わらせず、「主人公がどうなった」までをきちんと書いて連載をたたんだほうが、次回作につながります。
あなたの分身とも呼べる「唯一無二のヒーロー」がもう一度日の目を見るには、連載を畳むときにきちんと「主人公がどうなった」を書くことに尽きます。
「主人公がどうなった」を書かずに連載をたたんでしまうと、続編への期待なんて湧いてきません。
「この作者、途中でぶん投げやがった!」
という感想が直接寄せられることはまずありません。
小説投稿サイトでは「反応しない」という選択肢が存在するからです。
つまり「この作者、途中でぶん投げやがった!」と憤慨しても、それをレビューの形で書くのはかえってこの作品を援護しているようなものだからです。
だからどんなに腸が煮えくり返っても「この作者、途中でぶん投げやがった!」とは書かないのです。
それをよいことに「途中でぶん投げて」ばかりいると「悪事千里を走る」で、誰からも見向きもされない書き手に成り下がってしまいます。
放置せずきちんと完結させる
渾身の連載が不調で、どうにも読み手がつかない。
それなら、
(1) 伏線をすべて回収する。
(2) 主人公がどうなったかを書く。
を満たしたうえで、適当な終わり方を模索してください。
先ほども書きましたが、『シャーロック・ホームズの冒険』だって一度連載をきちんとたたんだのに復活の目が出てきました。
もちろん名作だからではありますが。
小説投稿サイトで「駄作」判定をされた作品に復活の目は正直厳しい。
ですが、あなたの筆力が上がり、今の実力であの作品を復活させたらどうなるか。
それを考えるのは自由だと思います。
そのためにも、連載が不調だからと放置せず、一度綺麗な形で終わらせましょう。
後腐れのないよう「伏線をすべて回収」「主人公がどうなった」をきちんと盛り込んでください。
作品を完璧な形で閉じられれば、そこから人気が出てくる作品だってあるはずです。
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毎度の告知です。
本コラムでは、皆様からさまざまなご質問をお待ちしております。
私ひとりで思いつくネタの数なんてたかが知れていますからね。
小説を書くうえで疑問に思ったこと、不安に思ったこと、迷っていること。
そんなことがございましたら、ぜひコメントを残していただけたらと存じます。
私が「小説の書き方」コラムで蓄積した知識を、より実践的にお示しできたら、きっと皆様のお役に立てるでしょう。
皆様のご質問を心よりお待ちしております。
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