第8話 ジャンルは絞ったほうがいいの? 多彩がいいの?
ジャンルは絞ったほうがいいの? 多彩がいいの?
小説投稿サイトでより注目を集めたい。多くの読み手にこれまで書いたたくさんの小説も読んでもらいたい。
私もすべからくそう思っております。
ではご質問の原文から。
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雨 杜和orアメたぬき様
私は歴史、ミステリー、異世界ファンタジー、恋愛、現代ドラマとジャンルが一定してなくて、ここはジャンルを絞って。そこで読んでもらえる作品を書かなければならないなんて、思いもしています。 どう思われますか?
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アメ様は実に多彩なジャンルに挑戦しておられます。
そこがアメ様の魅力であり、引き出しの多さなのです。
おそらくどんなジャンルも書こうと志ざせば書ける方だと思います。
そのため『カクヨム』でも記載されているように多くのジャンルの作品を残しておられます。
以下がアメ様のプロフィールページになりますので、実際にどのジャンルを書いているのか、ご確認いただくと理解が早いでしょう。
https://kakuyomu.jp/users/amelish
アメ様は、その多彩さゆえに「ジャンルを絞って着実に読み手を増やしたほうがよかったのでは?」とお考えのようです。
では、多彩さをアピールするべきか、ジャンルを絞るべきなのか。
ジャンルは期間限定で絞るべき
いきなり結論を書いてみました。
短期的に見れば、明らかにジャンルは絞ったほうが有利です。
たとえば「異世界ファンタジー」でフォロワーを集めたら、そのフォロワーは必ず書き手のページに飛んできます。
先ほどのアメ様のページのように、ですね。
だってあんなに面白い「異世界ファンタジー」を書いた人なら、他の作品も面白いと思いますよね。
だからそれを読むためにページを訪れます。
そのとき、投稿されている作品のジャンルで「異世界ファンタジー」がそれひとつしかなかった場合。
同ジャンルで別の作品を読みたがっていた多くのフォロワーが「回れ右」して帰ってしまうのです。
ひとつ、大衆にウケたジャンルを書いたら、過去作を検索されるに決まっています。
とくに『カクヨム』は作者のプロフィールページに飛びやすいシステムですし、そこからどんなジャンルの作品かも一覧で見られます。
そのとき「回れ右」されたくなければ。
「異世界ファンタジー」で面白い作品が複数あれば、書き手自身をフォローしたくなります。
「ミステリー」にも秀作があったとしても、当面の読み手の需要が「異世界ファンタジー」なのであれば、「ミステリー」は読まれません。
つまり勝負をかけたいジャンルを決めて、最低でも二本あると書き手自身をフォローしてくれる確率が高まります。
その書き手の異なる「異世界ファンタジー」を読んでも面白かったら。
読み手は書き手自身をフォローしたくなるものです。
多彩さは将来への布石
書き手自身をフォローしてもらうこと。
これが小説投稿サイトを活用するうえで最も肝心要なのです。
つまり書き手自身がフォローされる下地を作らなければ、目的を達成できないのです。
小説投稿サイトはいずこも「異世界ファンタジー」が最大の評価を受けます。
これは小説投稿サイトに期待している読み手たちが読みたいのは「異世界ファンタジー」だ、ということに起因するのです。
それに迎合するのは気が進まない。
そういう方は無理に「異世界ファンタジー」を書かなくてもかまいません。
少し回り道となりますが、「歴史」一本でフォロワーを築いていく方だっておられるはずだからです。
このように「異世界ファンタジー」でも「歴史」でも「ミステリー」でもかまわないので、書き手自身のフォロワーがある程度増えるまでは、ジャンルを固定して書きまくったほうがよいのです。
現在ランキング上位にいる「異世界ファンタジー」の書き手の中には、初めての作品が「異世界ファンタジー」であり、それを連載していて人気を博している方もいらっしゃいます。
そういう方は、他の小説投稿サイトで築いたフォロワーが大挙してその書き手をフォローしているのではないでしょうか。
他に何作か書かれているトップランカーは、総じて「異世界ファンタジー」しか書いておりません。
そして例外的に、多彩なジャンルを書いている方がいらっしゃいます。
では「多彩さ」は小説投稿サイトでは下手な手なのでしょうか。
短期的に見ればそのとおりです。
ですが、長期的に見れば書き手を利する可能性が高いのです。
書き手をフォローしてくれる読み手が増えたら、他のジャンルだけど面白いかもしれない、と考えて第一話くらいは読んでくれるものです。
ですが、その作品がホームラン級であれば、★レビューが書かれて多くの方に認知される可能性がきわめて高い。
そして「小説賞・新人賞」は応募作以外は読まれないから、という理由で、他のジャンルの作品を書かない方が多いと思います。
それ、間違った思い込みではないでしょうか。
「小説賞・新人賞」を開催する出版社からすれば、腕の良い書き手は是が非でも欲しいところです。
ではどうやって「腕の良い書き手」を見つけ出せばよいのか。
ひとつの答えが「小説賞・新人賞」です。
集まった作品の中から、出色の作品を書いたからこの人に賭けてみよう。
そう考えるのが一般的な「小説賞・新人賞」の意義です。
しかしそれなら「紙の書籍」の「小説賞・新人賞」でもよいのです。
あえて小説投稿サイトで開催するのは「他の作品も読んでみたい」から。
小説投稿サイトはそのシステム上、その書き手が掲載している作品はすべて閲読できるようになっています。
つまり「気になった書き手が書いた他の作品をチェックできる」のです。
そのとき、多彩なジャンルが揃っており、いずれもレベルが高いと判断したら。
大賞を争っている書き手たちは「小説賞・新人賞」応募作がすべてと思い込んでいますが、その実「過去作」も俎上に載せて判断されているとは気づいていません。
応募作に差がなければ、同時受賞でもいいじゃないか。
そう思われるかもしれませんが、出版社側はすでに予算を計上しており、大賞を複数出して賞金が予算を超えるなんてできやしません。
だから「大賞なし」にして「優秀賞」を増やすのです。
ですが「大賞なし」が続くと「小説賞・新人賞」自体の質が低下します。
かの有名俳優が処女作を応募して、とある小説賞で初めての大賞を獲ったとき、そのあまりのレベルの低さに業界が騒然としました。
1000万円もの賞金が、この程度のレベルに支払われるのかと。
そんな事態が発生したのも「紙の書籍」の小説賞だったからです。
つまりその書き手の他の作品を見ていないので、実力がまったくわからない。
しかし小説投稿サイトで開催すれば、他の作品も読んでみて書き手の力量を測れます。
そのとき、開催している小説投稿サイトで多彩なジャンルの作品があり、そのいずれもが面白い。または、伸びしろが期待できる場合。
同じくらいに面白い応募作の優劣は、過去作の勝負に持ち込まれるのです。
日頃の行ないは小説賞で報いられる
卑怯と感じる人もいるでしょう。
しかし小説投稿サイトに登録したばかりの方が「小説賞・新人賞」を獲得してしまうと、他の小説投稿サイトから腕利きが大挙して訪れ、日頃の活動のないまま応募作一本で大賞をかっさらっていく、なんてことが続いたら。
その小説投稿サイトの存在意義が失われかねません。
だからこそ、日頃から地道に執筆活動をしていて、小説投稿サイトを賑わせているような方がより有利になる選考システムを採用するのは至極当然なのです。
通称「カクヨムコン」の一次選考が読者選考となっているのもその証左です。
小説賞にだけ応募している書き手はなかなか大賞が獲れないように出来ています。
もちろん会心の作品が書けたら、これが大賞でないなんておかしい、と感じてしまうでしょう。
そういう方は「日頃の行ない」を計算に入れていません。
小説投稿サイトを盛り上げてくれた功労者が大賞にふさわしいのです。
短期的には同じジャンルを集中的に書いて「書き手自身のフォロワー」を増やす。
長期的には多彩なジャンルを幅広く書いて「書き手の多様性」を知らしめる。
これが小説投稿サイトを有効に活用するための手段となります。
ですのでアメ様のご質問への答えは「ある一定期間はジャンルを固定したほうが有利です」となります。
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毎度の告知です。
本コラムでは、皆様からさまざまなご質問をお待ちしております。
私ひとりで思いつくネタの数なんてたかが知れていますからね。
小説を書くうえで疑問に思ったこと、不安に思ったこと、迷っていること。
そんなことがございましたら、ぜひコメントを残していただけたらと存じます。
私が「小説の書き方」コラムで蓄積した知識を、より実践的にお示しできたら、きっと皆様のお役に立てるでしょう。
皆様のご質問を心よりお待ちしております。
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