第3話 初回から読み手の心を掴むのは難しい
初回から読み手の心を掴むのは難しい
今回も第1回に届いたご質問にお答え致します。
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五郎猫さち様
質問なんですが、ウェブ小説の読者というかそういった需要を理解していないのでお聞きしたいのですが、100万字も書いて読者はそれを見て判断しないのでしょうか。 新規ユーザーは毎日ちょびちょび読んでいくという感じでしょうか。
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ウェブ小説の読み手は、100万字に惹かれて読むことは致しません。
『カクヨム』であれば☆の多さに惹かれて読みに行くことはあります。
カクヨムの評価システムで最も信頼できるのが☆レビューだからです。
ですが☆をたくさんいただくには、より多くの読み手に読んでもらえなければなりません。
これではイタチごっこです。
では新規ユーザーはいつどのようにして作品を読んでいくものなのでしょうか。
1.ランキング上位から読む
小説投稿サイトでは必ずといってよいほど「ランキング」が整備されています。
「今人気のある作品を読みたい」「せっかく読むのだからハズレは引きたくない」
そう思っている読み手は、堅実にランキングから読みたい作品を選びます。
つまりイタチごっこです。
多くの読み手に支持されなければランキングは上がらない。
一度支持された作品はランキング上位に残って、さらに多くの読み手に読まれていきます。
これができるのは、多くのフォロワーを抱えた書き手だけです。
過去作でガッツリとフォロワーを抱え込んでいれば、新作を発表するだけでフォロワーが一斉に読み始めて作品フォローと☆評価とレビューをつけていきます。
スタートダッシュが効くわけです。
その小説投稿サイトで駆け出しの書き手には、このスタートダッシュは望むべくもありません。
2.検索に引っかかった作品を読む
小説投稿サイトのほとんどには整備されている「検索」を使った作品発掘です。
その日連載が始まった作品であっても、「検索ワード」にうまくヒットすれば読み手が現れます。
このパターンの場合、知名度はとくに必要ありません。
読み手が指定する「検索ワード」にうまくハマれば読まれます。
ただし、連載話数と☆評価の釣り合いを見て、連載10回くらいまでで☆レビューも2桁はないとまず読まれないでしょう。
こちらも1.のランキングによるスタートダッシュとは別の、面白さのブーストに乗る必要があります。
連載の早い段階で読み手をがっちりと捕まえられるかどうか。
試しに読みに来た人が迷わず☆評価をしてくれるような作品が書けたら、読み手が集まってきて、徐々にランキングに乗って、ある程度高まったら(だいたい検索の3ページ以内とされています)ブーストに点火します。
3.新着作品からの試し読み
ほとんどの小説投稿サイトに実装されている「新着作品」一覧機能。
ここは新人発掘、良作発掘の場としてたいへん重宝がられます。
基本的に検索ワードでチェックはしません。
リアルタイムで新たに投稿された作品から自分が読みたいジャンルを見つけて、あらすじをチェックし「面白そう」ならとりあえず読んでみる。
しかし、第1話しか公開されていないものは避けられます。
面白いのかどうか、この時点ではまだ判別できないからです。
一度に読める時間にもよるのですが、だいたい3話から5話、1万字ほどを目安にしているようです。
もちろん☆の入り方もチェックしている方は多いのですが、どちらかというと「まだ誰も気づいていない良作を一番に発掘して☆レビューを書く」のをモットーにしている方が多いようです。
もちろんひとりだけにアピールできてもランキングには載りませんので、連載を通じて毎回1人以上☆を入れてくれるような作品でなければなりません。
面白くなりそうかわかるところまでは読む
読み手が求めているのは「面白い小説」であって、「読むに値しない」と思われた時点で継続読みをあきらめられてしまいます。
で、それはどこまでなのか。
これが数字で出せるとよいのですが、さすがに難しい。
1話何千字で書いてあるのかがわからない以上「何話までに心を掴め」とは言いづらいからです。
それでも経験談でいうのなら「第1話は絶対に外さない」気概を持つべきです。
第1話が傑作であれば、第2話以降もある程度付き合って読んでもらえます。そうやって閲覧数(PV)を増やしていけば、周りにいる読み手がこの動きに気づきますからね。
そこでオススメしているのは「初回投稿は盛り上がる場面から始める」です。
物語の第1話と初回投稿は別です。
たとえばプロローグを書いてから、第一話を投稿すると、初回投稿はプロローグになりますよね。
このプロローグで「本作で最も推したいものを書く」のです。
バトル小説なのに、田舎の田園風景が続いて主人公が農民Aとして働いている牧歌的な場面から入ったら、間違いなく見切られます。
バトル小説なら、初回投稿は「バトル」を書かなければ意味がないのです。
初回投稿で「バトル」を書いたら、第一話からは田舎の農民Aでもかまわない。
まあそれでも読み手の忍耐が切れる前にまた次の「バトル」が欲しいところではありますが。
小説投稿サイトで良作発掘に燃えている方は、3話とか5話とか、だいたい1万字くらいまでは我慢して一気に読んでくれると思います。
そこまでで発掘隊を唸らせる作品が書けるかどうか。
逆に言えば、3話、5話、1万字までで発掘隊に「面白い」と思わせなければ先がないのです。
伸び悩むようならすぐに連載を畳む
超長編を想定していたのに、10話連載して☆もハートもフォローもPVも伸びないようなら、短編や中編に切り替えてすぐに連載を畳んだほうがよいでしょう。
今回の構想や表現の仕方では「面白い」と思ってもらえなかった。
だったらそんな連載を超長期で続けても意味があるのでしょうか。
連載500話で☆1000を超える作品がランキングに載っているわけですから、そんな作品と張り合えない作品を書き続けたって、いつまで経ってもランキングは狙えません。
それならランキングに載るような構想と表現を追求するべきです。
まあその結果が俗に「なろう系」と呼ばれる「異世界転生ファンタジー」「異世界転移ファンタジー」「VRMMORPG」「悪役令嬢」「スローライフ」「NTR」ものの大繁殖につながるわけですが。
だからこそ小説投稿サイトの発掘隊は、つねに新着や検索を駆使して良作を見つける努力をしています。
せっかく発掘隊に掘り起こしてもらえたのなら、立派な遺物であるべきで、子供の玩具を発掘されたら少し遊んでもそこで終了です。
発掘隊は「私が真っ先に見つけて☆レビューを残した」ことを誇りに思う方々です。
だから発掘隊は面白くなるか判断できそうなところまで、たとえば3話、5話、1万字まで連載が進んだ作品を一気読みして、☆レビューが妥当かどうかを判断します。
友人知人なら、文句もいわずに連載を追ってくれるでしょうが、発掘隊もただ時間に飽かして読んでいるわけではありません。
自分たちなりの楽しみ方を持って発掘し、読んでいるのです。
毎日連載を楽しみにしている人と毎週一気読みする人
小説を連載するとき、毎日やるべきか、一週間ぶんまとめてやるべきか。とても悩みます。
読み手にも日常生活があり、その空いた時間で小説投稿サイトを利用しているに過ぎないからです。
となると毎日連載は、本当に読み手のためなのか、いささか疑問が湧いてきます。
たとえば毎日小説を読まないと気が済まない方がいるとします。
その人は毎日同じ時間に小説投稿サイトへアクセスして、連載を追っている作品の続きを読んで「いいね」を入れて時間があればコメントを残していく。
それだけで1作10分かかるかもしれません。
問題はその人は毎日どのくらいの時間を小説に充てられるのか、です。
毎日1時間は、という方はネット小説中毒も過言ではないでしょう。
であれば毎日6本の連載を追うのが精いっぱいなはずですよね。
そういうことならランキング至上主義になっても不思議はないのです。
小説を発掘するのが趣味な方は、毎日三時間はとれるのかもしれません。
これなら読むだけに徹すれば30話ほどはチェックできるはずです。
3話、5話、1万字をまとめ読みすれば、だいたい1日10作品はチェックできるはず。
ジャンルを限定して、検索と新着を駆使して日々10作品を発掘していく努力には敬意を払うべきでしょう。
しかしそんな発掘隊は、土日も休まず探してくれるものでしょうか。
逆に、土日しか小説を読まない方のほうが多いのではないでしょうか。
となれば、土日に一週間ぶんまとめて投稿したほうが読み手を惹けるのではないか。
ここが悩みどころです。
本当に「一週間毎日連載」をやってしまうと、ついてこられない読み手が確実に増えます。もし本当に面白い作品なのであれば、挽回しようと1日2話読んでペースを取り戻すでしょうが、そこまでとは思っていなければ、どんなに面白くても途中で脱落していくのは目に見えています。
それなら最初から「月曜から金曜までの連載です」と書いておいたほうがよいのではないか。
また「土日のみの連載です」と書いておけば、休日派を取り込めるのではないか。
「月曜・水曜・金曜に更新します」と書いてあれば、素直に待てる方が多いのではないでしょうか。
そういう投稿ペースの最適化も考えられますね。
読み手が無理せず連載を追えるペースを守ること。
それが「何話くらいまでなら一気読みしてついてこられる」かを分けるのではないでしょうか。
「毎日ちょこちょこチェック」してくれる読み手は私たちが考えている以上に少ないはずです。
日本は時間に余裕のある国民が少ないですからね。
発掘隊も、毎日勤務より土日勤務のほうがやりやすいと思います。
月曜から金曜まで5話連載してきた新作を土日に発掘するほうが手っ取り早いはずですからね。
10話も連載してきて発掘されないのなら、それは需要のない作品だということです。
ただ、時代が早すぎたか作風が古すぎたかのいずれかである可能性もあります。
古すぎたものはなかなか挽回できませんが、早すぎたのなら時代が追いつくのを待つ方法もあります。連載ペースを落として時代があなたに追いつくまで待つ。
釣りと同じですね。
魚が食いついてくるまでゆったりとした気持ちで構えて、いざ食いついてくれたらそこから一気に時代のトップランナーになればよいのですから。
まぁ時代が早すぎた作品かは判別しにくいところはありますけどね。
古すぎたものは、本当に反応がないので、まったくダメというのがすぐにわかります。
読み手の消費動向を考慮するなら、一週間の毎日連載は避けるべきでしょう。必ず脱落者を生んでしまいますから。
新着欄も、第1話を読む方はなかなかいません。
ある程度話数が増えていて、一気に読めるくらいの分量になるまで泳がされます。
だから、作品を見限るのもそこまで待つべきです。
月曜から金曜まで連載するのなら、日曜が終わった頃に「良作か駄作か」はわかる頃合いだと思います。
以上が小説投稿サイトの消費動向です。
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毎度の告知です。
本コラムでは、皆様からさまざまなご質問をお待ちしております。
私ひとりで思いつくネタの数なんてたかが知れていますからね。
小説を書くうえで疑問に思ったこと、不安に思ったこと、迷っていること。
そんなことがございましたら、ぜひコメントを残していただけたらと存じます。
私が「小説の書き方」コラムで蓄積した知識を、より実践的にお示しできたら、きっと皆様のお役に立てるでしょう。
皆様のご質問を心よりお待ちしております。
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