第14話 猫人犬人帽子


いつもの朝、いつものお手伝い、いつもの勉強。

そしていつも家の中に響いている茶羽と黒羽の笑い合う声と走り回る足音。

茶羽さう黒羽くうが来てから俺の生活も変わった、今までは特に何かするわけではなくのんびりしては、健治の会社で人手が必要な時だけ働く生活だった。

二人が来てからは、何よりも二人を中心になっていた。

そんな生活も今日で三ヵ月になる。


などと考えていたら、茶羽と黒羽が俺の顔を覗き込んでいるのに気づく。


「「どうしたの?」」

「いや、茶羽と黒羽が来て今日で三ヵ月になるんだなって。」


そう言うと二人は俺の頭をなでてきた、お返しだと二人をなでるとキャッキャと楽しそうに笑う。

するとスマホが鳴る、ショッピングモールの服飾雑貨屋さんからだった。


「はい大空です。」

「突然のお電話すいません。」

「どうしました?」

「実は先日サイズを測らせていただいた帽子ができたので、お知らせしようかと。」

「はい、では明日にでもお店に行きます。」

「わかりました、お待ちしていますね。」


そう言うと通話を切る。


「茶羽、黒羽、前に頭測った時の帽子ができたって、明日取りに行こう。」

「「わーい」」


二人は早く明日になれ~と喜んでいた。


「明日はお昼から行って、帽子取りに行って、いつもの和食屋さんでご飯食べような。」

「「おさかな~」」



翌日、いつもの朝を迎えお手伝いを終えて勉強をしているが、茶羽と黒羽は帽子を取りに行くという事に気を取られて勉強は上の空だった。

時計を見ると11時になっていた。


「ちょっと早いけど、今から行くか。」

「「はーい」」


二人はいつものポシェットを取りに二階に走っていこうとする。


「行く前にドリルとノート片付けてからな。」

「「はーい」」


ドリルとノートを本棚に片付けると二階に走っていく。

二人が階段を降りてくる音が聞こえると俺も玄関に向かう。

車に乗るといつものように二人の「しゅっぱーつ」の掛け声に合わせて車を出す。


いつもの道は工事をしていたようで渋滞していた、ルームミラーを見るとなかなか進まない状態に窓の外をチラチラ見ている二人がいた。


今日は混んでるな、次の交差点で裏道行くか、と考え交差点で左折していつもは通らない裏道を進む、いつもと違う景色に二人は窓の外に夢中になっていた。

普段なら1時間もかからない距離だったのだが、今日は駐車場も混んでいて車を止めるのに2時間近くかかってしまった。


「お腹すいたろ、先にご飯にしようか。」

「「ごはん」」


二人の手を取りショッピングモールの入り口に向かう。

ショッピングモールに入ると二人に手を引っぱられながらレストラン街に着くと、先にトイレに行ってから和食屋さんに向かう。

和食屋さんに着くと昼を過ぎているからか、お客さんはまばらですぐ席に案内された。

焼き魚定食を3つ頼み来るのを待つ。

今日も骨を取ってほぐしてある焼き魚定食が来る、三人で「いただきます」と食べ始める。

茶羽と黒羽もがつがつと勢いよく食べなくなり、静かにゆっくりと噛んで食べるようになっていた。

それを見て二人も成長してるんだなと微笑みながら俺も食べる。


食事を終えると会計を済まし、茶羽と黒羽の手を引いて今日の目的の服飾雑貨屋に向かう。

お店に着くと犬人いぬひと猫人ねこひとを連れた人たちで混んでいた。

二人に「絶対手を離すなよ」と伝えて店に入る。

俺たちに気づいたオーナーが人混みをかき分けて声をかけてきた。


「大空さんお待ちしてました、こちらにどうぞ。」


そういうとカウンター奥のドアに案内される、関係者以外立ち入り禁止と書いてあるドアを抜けると、従業員の休憩と商品置き場にしてるのかテーブルがある奥の壁際に箱が積んである部屋に案内される。


「こんな場所ですいません。」

「いえいえ、お店ずいぶんと賑わってますね。」

「はい、犬人猫人用帽子が珍しくテレビで紹介されて、なにぶんオーダーメイドなので数が作れないのですが、予約とサイズを測りに来る方が増えまして。」


オーナーさんはそう言うと二つの帽子を出してきた、茶羽と黒羽に似合いそうな色でかわいいキャスケット帽だった。


「サイズは合うと思いますが、試着していただいていいですか?」


二人に帽子をかぶせて、最初見せられた時には見えなかった切り込みが入っているのに気づいた、耳を切り込みから出すと、


「お耳は大丈夫?痛くない?」

「「だいじょうぶ」」

「よかった、二人とも似合っててかわいい」


確かに二人に似合ってる。


「ありがとうございます。」

「後色違いでもう一つづつあるんです、これもどうぞ。」

「え、いや、二つ目は購入しますよ。」

「えっと、それなんですけど、もしよろしければですがサイトの商品画像に使いたいので、モデルとして写真撮らせていただけないですか?そのお礼というのでは駄目でしょうか?あ、載せるのは帽子だけですのでお二人だとは分からないようにしますので。」

「俺より二人に聞いてみてください、茶羽と黒羽はどうする?」

「さうはいいよ」

「くうもいいよ」

「二人も良いらしいのでいいですよ。」

「ありがとうございます、では早速。」


そう言うと棚の奥からカメラを取り出してくる。

壁際に椅子を置いて二人を座らせて、角度を変えて数枚撮ると、写真を見せてくれた。


「こんな感じで、載せるときは目の辺りで切ります。」

「茶羽、黒羽、見てみなかわいく撮れてるよ。」


結構かわいく撮れていたので二人にも見せると嬉しそうに笑っていた。


「あのもしよかったらこの写真頂けませんか?」

「それでは、後日プリントアウトしてご自宅にお送りさせていただきます。」

「ありがとう。」

「いえこちらこそ色々とお願いしてしまって、すいませんです。」


オーナーさんはもう一つの帽子を袋に入れてくれて、お店へのドアを出ると、また新作が出来たらご連絡させていただきます、とお辞儀して送ってくれた。

お店を出るときに他のお客さんから、二人はじろじろ見られて口々にあの帽子かわいいと言われていた、恥ずかしいのか俺にしがみついて隠れようとしていた。

宣伝効果も抜群だなと思いながらお店を後にする。


店を出てから二人はちょっと疲れた顔をしていたので自販機でジュースを買ってソファーで休憩することにした。


「大丈夫?、つかれたか?、少し休んだら帰ろうか。」

「「うん」」


ソファーで座っていても道行く人からあの子たちかわいいと言われてはじろじろみられていた、さすがにここだと目立って休めないかと思い、


「車で休むか。」


そう言うと二人の手を取り駐車場に向かった。








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