第4話 初めてのお風呂とニュース


ショッピングモールで最後に行ったのはカー用品のフロアだ。

茶羽さう黒羽くうのチャイルドシートを買いに来た。

来る時窓から外が見えないと大騒ぎされたのと、シートベルトがきちんとできなかったのもある。

それに法律で義務付けられているからな。

売り場に着くと店員を見つけて声をかける。


「この子たち用のチャイルドシートがほしいんですけどどこにありますか?」


俺の質問に店員は一度二人を見て


「チャイルドシートですか?お子様の背丈や年齢ですとジュニアシートの方がおすすめかと思われます、お車はどのような車種ですか?」

「ジュニアシートですか?そんなものもあるんですね、車はセダンタイプで後部座席に設置しようかと思っています。」

「それでしたらジュニアシートで大丈夫だと思いますよ、こちらにございます。」


案内された場所は座椅子の様なシートが並んでいた。


「こちらは車のシートベルトでシートを固定して、ジュニアシートのベルトでお子様を固定するタイプの物になります、お子様の年齢ですとこちらのタイプが安全かと思われます。」

「なるほどこれだと安定しそうですね。」

「はい、小学生の高学年になりますと座面だけのタイプなどもございます。」

「年齢で買い替える感じか、じゃあこのタイプを二つお願いできますか?」

「ありがとうございます、用意させていただきますのでこちらにどうぞ、お嬢様方もどうぞ。」


レジの横にあるテーブルに案内されると、支払いと保障証などの説明を受けた、二つ買ったことで取り付け工賃サービスで取り付けてくれるらしい、商品が用意されると店員を連れて駐車場に向かう。

エレベーターに乗ると黒羽が今度は行先階のボタンを押してドヤ顔していた。


10分ほどで取り付けも終わり茶羽と黒羽を座らせてベルトを締めると、運転席に乗り込む、店員さんはまだ居て出発するまでお送りするようだ。


「さて家に帰ろうか。」

「「しゅっぱーつ」」


二人の合図で車を出す、その際に店員さんにお礼を言って駐車場出口まで走らせる。

駐車場を出てから晩飯と明日の朝飯の事を思い出す。


「ショッピングモールで買ってくればよかったな、失敗した。」


そうつぶやいてルームミラーを覗くと二人はぐっすり寝ていた。

今日はいっぱいはしゃいでいたから仕方ないか、と微笑みながら家の近くのスーパーに向かう。

魚を中心に食材や飲み物を買って車に戻ってくると、二人はまだ寝ていた。


家に付いて車をガレージにしまうがまだ二人は寝たままである、まずは食材を家に運ぼうと玄関に行くと大きな箱が数個置いてあった。


「そうだ今日荷物が届く予定だったんだ、置き配設定しててよかった。」


そうつぶやきながら玄関を開けて荷物を中に入れる、そして茶羽を連れてベットに寝かすと、次に黒羽も連れていきベットに寝かす。

後はお風呂の自動スイッチを入れると玄関に積んである荷物を片付ける。


「猫用品必要なくなっちゃったな、いつか何かに使えるだろう。」


物置部屋に箱ごと積んで俺はつぶやく。

すると二階で物音がしたので二階に上がると茶羽と黒羽が起きてトイレに行っていた。


「二人ともトイレ覚えたな、偉いな」


トイレから出てきた二人は俺の姿を見て飛びついてきたので撫でながらほめてあげると、尻尾をゆらゆらさせていた。


「じゃあこれからお風呂にしようか。」

「「おふろ?」」


二人は首を傾げて聞いてくる。


「今日は外に行ったからね、それに人は毎日お風呂で体を綺麗にするんだよ。」

「「おふろはいる」」

「そうか、じゃあ準備するからリビングで待っててな。」

「「はーい」」


俺は着替えを取りに二階に行く、二人の着替えまだなかったんだよな、と思い出し今朝と一緒で良いかと俺のTシャツを二枚用意して一階に行く


「茶羽、黒羽、準備できたぞ、おいで。」

「「はーい」」


返事とほぼ同時にリビングから二人が出てくる。

お風呂に着くと服を脱がし、シャワーでお湯をかける。

最初はお湯にビクビクしていたが、体を洗い始めたら茶羽と黒羽は泡で遊び始めた。

そしてお湯で泡を流したら「泡が無くなった」と怒られた・・・


「次は頭だけど終わるまでぎゅっと目をつぶって開けたらダメだぞ、目を開けたら痛くなるからな。」

「「はーい、ぎゅーってする」」


頭からお湯をかけてシャンプーでごしごし洗う、そこでリンスがないことに気づいたが、今度買えばいいかと考えていたら、黒羽が突然騒ぎ出した。

待ってる間に目を開けてしまったらしい、すると茶羽も目を開けてしまい、二人で大騒ぎになってしまった。

慌ててシャンプーを流して今度は目をすすいであげて、やっと落ち着いてきた、それでもまだフーフーと威嚇するような声をあげていた。


「目を開けたらこうなるから次からは開けたらダメだぞ。」

「「ごめんなさい」」

「謝らなくていいよ、痛いのはなくなったか?」

「「うん」」

「ならよかった、じゃあ次はそこのお湯の中に入って温まるんだぞ。」


二人はおそるおそるといった感じで湯船に入っていく、うちの湯船は大人二人が入ってもゆったりできるくらいの大きさだ、それにちょうど二人が座ってもおぼれない程度しかお湯は張っていないので大丈夫だろう、その間に俺は体と頭を洗う。


「さて俺も湯船に入るぞ。」


俺が湯船に入ると水位が上がる、それが楽しいのかキャッキャとはしゃいでいた。

しばらく湯船でお湯をかけあったりして遊んだ後、出ることにした。

体と髪を拭いてシャツを渡すと慣れない手つきで着ようとしているので手伝って、髪を乾かすからまだここに居るように伝えて俺も部屋着に着替える。

髪を乾かすのに鏡の前に座らせて髪を乾かす、二人はお風呂よりドライヤーが気に入ったようで暖かい風が当たると幸せそうな顔をしていた。


リビングでゆっくりしていると茶羽と黒羽は隅に置いてあるテレビに興味を示しだした。

コンセントを差し込みリモコンで電源を入れると突然映るテレビにびっくりしていた。

ちょうど夕方のニュースの時間だったのでチャンネルを変えて子供向け番組にしてあげた。

最初は警戒していたがパソコンの画面と同じだと分かると、テレビの前に座って夢中になっていた。

ちょうどいいと思って俺はキッチンに行って晩飯の用意を始めた。


後は食べるだけという状態にしてリビングに戻ってくると、子供向け番組がちょうど終わって、ニュースになるころだった。

俺もテレビを見ようと、茶羽と黒羽の後ろに座ると二人は気づいたのか膝の上に乗ってきた。


二人をなでながらニュースのテロップを見て固まった。


『怪奇!!

 一部のペットが突然人間に!

 一晩で何が起こったのか!』


テロップにはそう書いてあった。

ニュース内容も

日本全国で昨夜から未明にかけてペットが突然人間になっていたという報告が上がっているという。

ただすべてのペットが人間になったわけではなく生後半年未満の犬と猫がなったという。

外見は耳と尻尾がある以外は人と見分けがつかないという。

そして今朝以降に生まれた犬猫はそのままで人間になっていないが、今後なる可能性もあるかもしれないという。

日本政府は人化したペットは猫人ねこびと犬人いぬびと、と呼び人権を認め、人として戸籍登録、国籍取得もできる方向で調整しているという、正式な発表は週明けになる。

もし野良猫人や犬人を見つけた場合はお住まいの地域の保健所もしくは役所に通報してくださいとのことだ。

野良猫や野良犬の子供ってことだよな、それだとありえない事じゃないだろうな、ペット限定なら野良は生まれないだろうけど。


「たつや、これってさうたちのこと?」

「ああそうみたいだな、それに茶羽や黒羽みたいに人になった犬や猫もいるらしい」

「さうたちだけじゃないの。」

「ただ今後元に戻れるのかとか増えるかは分からないみたいだな。」

「もどりたくない、さうはこのままがいい。」

「くうも。」

「そうだな、今は楽しいからな。」


いったいどうなってしまったんだ、これからどうなるのか。

今は深く考えるのやめるか。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る