帰り道

玉露

帰り道



小学校のとき、ときどき隣のクラスのコと帰りが一緒になった。

登校が同じグループだから、当然家までの道のりはほぼ同じ。最後の角で右に曲がるか、左に曲がるかの違いだけ。

たまたま授業の終わる時間が一緒で、たまたま帰り道が一緒なだけ。だから、一緒に帰っている訳じゃない。それを主張するために、お互い、道の両端を歩いた。

隣に並んで歩いたら、クラスのコに付き合ってるとからかわれる。反対側の端を歩いているということは相手も同じなんだろう。

会話なく、てぽてぽと歩く帰り道。少し上向きになってはぁ、と吐息を吐くと白く染まった。

なにげなく隣を見ると、相手と目が合う。そして、彼は前を向き、同じように大きく吐息を吐いて、空気を白く染めた。

白く染まったのを確認して、こちらを向いて、にかっと笑う彼。

私もつられて笑い、また空気を白く染めた。

そんな会話のない帰り道が楽しかった。

大きくなって、私は帰り道で吐息を吐く。やっぱり空気は一瞬白く染まる。

すぐ隣で吐息の音がした。音の方を見遣ると、私のより遅れて白く染まった空気がそこにあった。そして、にかっと笑いかけられる。

「寒いね」

「ね」

両端を歩いていた私たちはもういない。

今は、手を繋げる距離で笑い合う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰り道 玉露 @gyok66

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る