帰り道
玉露
帰り道
小学校のとき、ときどき隣のクラスのコと帰りが一緒になった。
登校が同じグループだから、当然家までの道のりはほぼ同じ。最後の角で右に曲がるか、左に曲がるかの違いだけ。
たまたま授業の終わる時間が一緒で、たまたま帰り道が一緒なだけ。だから、一緒に帰っている訳じゃない。それを主張するために、お互い、道の両端を歩いた。
隣に並んで歩いたら、クラスのコに付き合ってるとからかわれる。反対側の端を歩いているということは相手も同じなんだろう。
会話なく、てぽてぽと歩く帰り道。少し上向きになってはぁ、と吐息を吐くと白く染まった。
なにげなく隣を見ると、相手と目が合う。そして、彼は前を向き、同じように大きく吐息を吐いて、空気を白く染めた。
白く染まったのを確認して、こちらを向いて、にかっと笑う彼。
私もつられて笑い、また空気を白く染めた。
そんな会話のない帰り道が楽しかった。
大きくなって、私は帰り道で吐息を吐く。やっぱり空気は一瞬白く染まる。
すぐ隣で吐息の音がした。音の方を見遣ると、私のより遅れて白く染まった空気がそこにあった。そして、にかっと笑いかけられる。
「寒いね」
「ね」
両端を歩いていた私たちはもういない。
今は、手を繋げる距離で笑い合う。
帰り道 玉露 @gyok66
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます