第20話 終幕
僕たちは道中で待ち構える黒スーツの男たちをあしらいながら、テレビ局に向かっていた。
「明星透は仕事には一途で、逃げが早い。今、警察の捜査の手が入ってるだろうが、司会の仕事の時間を鑑みても奴が逃げるには十分な時間があるだろう」
「それで、僕たちは、走ってる、わけですか?」
「ああ、そうだ。お前、だいぶ疲れてるな。無理なら私だけで行くが?」
「いえ、大丈夫です、僕は、まだ、行けます」
「そうか、それなら頼りにしてるからな。あと、私はこの件が終わったら自首をしようと思う。お前も今後について考えておけよ」
「はい」
走りながら黒スーツをさばき、黒スーツをさばきながら走る。僕の肉体は限界ギリギリだった。
「ちっ、数が多いな。ここは私に任せて先に行け、烈火!」
「楓さん、頼み、ましたよ!」
僕は急いで先へ向かう。全ての元凶、明星透の元へ、、、
「えー、本日の司会はかの大物、明星透さんにお願い致します!どうぞ!」
拍手とともに迎えられるのは明星透、有名な司会者兼俳優である。
僕は、ハイに、なって、いた。気がつくと、明星透に、馬乗りに、なって、いた。
「おお、育ての親はかの有名な人殺しの二水烈火くんじゃあないか!?こんな場所までよく来たな!さあ、私を殺してみろ!そして、君の存在を証明してみせろ!さあ!」
「、、、」
観衆の多さも影響して、僕は徐々に落ち着きを取り戻していった。そして、殺し屋からぶんどったナイフを投げ捨てこう言った。
「ここであなたを殺したら、両親やあなたと同じになってしまう。一線だけは超えてはならない気がするんです、、、」
「は、はは!傑作だ!人殺しの子供がその業を否定するとはな!お見事じゃなか、二水烈火!お前の勝ちだ!!」
その後のことは、いまいちはっきりとは覚えていないんだ。多分、体を酷使したせいだろう、記憶が混濁していた。だが、警察に連行される明星透の姿ははっきりと覚えている。あとは、刑事さんにこっぴどく叱られたっけ。流石に今回の件で無理をしすぎた。しばらくは入院して、まともに体を動かせない生活が続くだろう。
僕は病室のテレビからニュースを聞いていた。
「一般人だと思われていた二水夫妻は、実はあの連続幼児誘拐事件の犯人で、彼らを殺したのは、その実の娘の二水楓でした!そして、その一連の事件を裏で操っていた明星透こと、輝良透も逮捕されました!」
僕は初めて照と光と出会ったときから、なんとなく感じていた、彼らを捨てたのは明星透なのではないかと。その読みはおそらく当たっているだろう。あえて彼らは本名を名乗ることによって現実と向き合っていたのだろう。
僕の入院中、鼎先輩や照、光、山田さんに草太、刑事さんがお見舞いに来てくれた。刑務所生活中の楓さんも手紙をよこしてくれた。それも、結構マメに。彼女の意外な一面が垣間見えた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます