第18話 覚醒
僕は目覚め、そして全身が激しい痛みに襲われていた。だが、そこに恐怖はなく、ただ、大切な人たちを助けたい、そんな一心で動いていた。
「くっ、なんだこいつ。いきなり様子が、、、」
「構うもんか、やれっ」
四つん這いの姿勢から無理に立ち上がったせいか背中が痛い、だけど、こんな痛みくらい、、、!
「があぁぁ!」
僕は一太がしていたように、筋肉のリミッターを制御しきることに成功していた。そして殺さない程度に、相手の急所を突く。
「ぐわっ、、、」
「やれっ!」
大柄の男が僕を襲う。一発大きいのを食らってしまった、
「っっ!」
だが、怯むことなく反撃をする。
「はっ!ふっ!」
右のジャブ、左で股間を打つ!
「ぐっ」
2人倒した。だが、相手の殺し屋はまだ何人もいる。
「どうした、お前ら?こんなヒョロヒョロの相手、私が出る幕じゃないだろ!?」
楓さんは焦っていた。だが、相手の統率は取れている。どうにかして突破口を見つけないと、、、ただ単に相手の動きに合わせて攻撃しても、何発かもらう可能性が高い。それなら、、、!
僕はある1人の男に目をつけた。それの動きを予測しながら戦ってみた。
「ふんっ!」
まずは右のジャブが飛んでくる。それを外せば体制が崩れる。その隙を狙って、、、!
「はっ!」
僕の蹴りが相手を捕らえた。僕の持ち前の観察眼が生きたようだ。
次にナイフを持っている危険なやつを狙おう!警戒しながら近づく、、、
「うおっ」
風を切る、物凄いスピードで自分の体が動いているのが分かる。明日は筋肉痛で動けないだろう。だが、大事なのは今だ、ここを切り抜け、2人を助けないと、、、!
「っっ!!」
相手の動きを読む、冷静に、落ち着いて、まず1人、、、ナイフで僕の心臓付近を狙ってくる、それなら、、
「ふっ!」
体を強引に曲げ、ナイフを避け、相手の腹部を勢いよく蹴る!
、、、次にまとめて3人、1人は不意をつけば倒せる。後の2人はナイフで奇襲してくる。
「はっ、ふっ!」
2人のナイフを突く手にチョップを入れ、はたき落とした。
「痛っ、、、」
その隙を見逃さずカウンターで頭部にパンチを入れる。
、、、残りは4人。
「まとめてかかって来い、、、!」
「いい度胸だ、やれ、お前ら!」
男たちは無言で拳銃を取り出し、こちらに構える、、、!
「っっっ!」
1人が一発打ってくるな、僕の脚を狙って来ている。なら、このスピードについて来られるか、、、!
銃弾を避けながら接近し、相手の隙を作る。
「はっ!」
腹部を強く押し、1人を無力化する。その間も銃弾が飛び交う。だが、僕は全ての弾道を予測して、体を無理に捻じ曲げたりしてさばき切る。
「うおっ、、、」
無事に残り3人を無力化した。残りは、、、
「おかしい、こんなのおかしい。お前がこんなに強いわけが、、、」
「楓さん、僕はあなたを助けられなかった。それを謝りたいんです」
「違う、違う、違う!私はあんたの苦しむ姿が見たかった。ただそれだけなんだ」
彼女は語り出す。
「私は生まれた時からひどい暴力を受けて来た。ある日は浴槽に頭を突っ込まれて、またある日は熱湯をかけられて、散々な毎日だった。だから、どうやったらあいつらから『愛』を受けられるかずっと考えていた。そんな時、2人はあんたを攫って来た。あんたは2人に大切に育てられた。私の分の愛情まで受けて、私はそれが憎たらしかった。許せなかった。そんなある日、あいつに、明星透に言われたんだ。二水烈火に復讐がしたくないか、とな。私はそれからやつに暗殺術を習い、一端(いっぱし)の殺し屋のスキルを得た。そして、あの日、お前の、二水夫婦の家を訪れた。本当はお前を殺すつもりだった。だけど、その時、お前はいなくて、私の親しかいなかった。だから、、、」
「、、、殺したと、、、?」
すると彼女は開き直ったかのように続ける。
「ああ、そうさ、私が殺したんだ、あいつらをな!ああ、良いキミだ!本当に良いキミだ!私の本当の強さをあいつらに教えてやったよ!断末魔を叫ばせる間も無くトドメを刺したよ!」
「あなたは、、、」
「うん?」
「あなたは本当にそれで良かったんですか?後悔は、、、」
「あるわけねえだろそんなもん。当然の報いだ」
「確かに彼らは許されない犯罪を重ねました。あなたがそう考えるのも無理はない。ですが、あなたはそれでも彼らに、二水夫婦に愛してもらいたかったはずです。それを自分の手で断ち切るなど、、、」
「黙れよ、今のお前がいくら強くても私が、、、」
「あなたでは僕には勝てない。本当はそう思ってるんじゃないですか?」
「うるさうるさい!私は強い、本当に強いんだ!明星透にも逸材と言われた。だから、、、」
僕は彼女を抱きしめていた。
「もう良いんです、もう。あなたは無理をしなくて良い、自分を偽らなくて良い、誰かに依存しなくて良い」
「う、うわぁぁん!」
彼女は突然泣き出し、涙で水溜りが出来た。
しばらくして彼女は泣き止むと、鼎先輩と草太の居場所を教え、去っていった。
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