第16話 大事な大事な日
俺は一太。今日も烈火の深層心理で昼寝中だ。
「ねえ、一太。ポーカーでもしない?暇つぶしに、ね?」
律人も同じく暇を持て余していた。
「最近烈火の人付き合いが上手くなってる気がするんだよねぇ。だから僕の出番が減ってきちゃっててさ。一太はどう思う?」
「知るか、そんなこと。それよりも2人でポーカーって、やっぱりつまんなくねえか?」
「そっか、じゃあババ抜きでも、、、」
「それも同じだ」
「うーん、じゃあ、、、」
少し考えると律人は
「烈火に内緒で誕生日サプライズでも考える?2人だけでさ」と提案をしてきた。
「そうか、もうそんな時期か。って言っても、あいつの誕生日ってあいまいじゃねえか?」
「いいや、烈火はきちんと覚えてるみたいだよ。誘拐される前の記憶も少しあるみたいだし、それに、なんだか最近ソワソワしてるし」
「そうか」
俺は一呼吸置いて、
「良いかもな、その案、乗った!」と返事をした。
そして誕生日当日、、、
僕は烈火、二水烈火。今日は誕生日。誕生日なんて大昔にしか祝ってもらったことなかったから、少しモゾモゾする。
「よお、烈火!1日ぶりだな!」と照。
「照、また、あんたふざけて、、、」とツッコミを入れる光。いつも通りの風景だった。
放課後、照と光、草太と共に帰り道を歩いていると、
「やあ、烈火!また、会ったね、元気?」
プロデューサーの翔さんと出会った。
「なんだよ烈火、翔と知り合いだったのかよ!?だったら紹介してくれよぅ」
「ちょっと、照、呼び捨ては、、、」
「良いよ良いよ、僕も有名になったって実感できるからね!そんな事より、はい、これ!」
翔さんは僕に1つの小さな箱を手渡してきた。
「今日は烈火の誕生日でしょ?だから将来の有名タレントの君に贈り物がしたくてさ。早速開けてみてよ!」
翔さんに手渡された箱を開けてみる。中に入っていたのは1つの腕時計だった。
「え、すごい!これ有名ブランドの新作の腕時計じゃない?手に入れるのがすごく大変だって聞いたわ」と驚く光。照も、
「すげえ、さすが敏腕プロデューサー翔。誕プレも一級品だな!」と驚きを隠せていない。すると草太も1つの包み紙を手渡してくる。
「これ、つまらないものですが。開けてみてください」
その中には1本のブレスレットが入っていた。
「ありがとう、草太。大切にするよ」
「えへへ」と草太は照れていた。
「ねえ、照、もう良いよね、、、?」
「ああ、姉ちゃん、今がその時だな」
光もカバンに入っていた物を取り出し、僕に渡してきた。中には目覚まし時計が入っていた。
「最近、目覚まし時計が壊れたって言ってただろ?だから、2人で買ったんだ、、、」
照は少し恥ずかしそうだった。光も同様に少し顔を赤くさせていた。
「いいねえ、青春だねえ、君たち!熱い友情を見せてもらったよ!じゃ、僕は邪魔だから、また今度ね!」
翔さんは急ぎ足で立ち去っていった。
「みんな、ありがとう。僕の誕生日覚えててくれてたんだね」
草太は「大切な先輩の大事な日ですから」と言い、照も「なんだよ、水臭いなぁ、もう」と少し照れている。光も同じだった。
その夜、僕は乃木家で刑事さんと一緒に夕食のカレーを作っていた。ちなみに乃木家では、基本的に家事は当番制である。にんじんの皮むきをしていたとき、不意に刑事さんから
「お前、今日誕生日だよな。おめでとう」
と言われた。刑事さんらしい、淡白な祝福のしかただった。そしてその夜、、、
「誕生日おめでとう、烈火!ハッピーバースデー!」
鼎先輩からもお祝いの言葉をもらった。それだけでも十分だったのだが、、、
「はい、これ!お父さんと一緒に買ったの!開けてみて!」
綺麗な柄の包装用紙を開けると、中から美味しそうなショートケーキが顔を覗かせた。
「いいんですか?これ。僕なんかのために、、、」
「『お前なんか』じゃない。お前だからだ。2人で奮発したからありがたく食べろよ」
鼎先輩もだが、刑事さんも少し顔が赤かった、すると鼎先輩は意を決したように言った。
「烈火、ごめんなさい!あなたのプライベートに土足で立ち入るようなこと言って、、、」
「先輩、、、」
「私は烈火が辛そうにしてるのが耐えられなかったの、でもそれで烈火に嫌な思いもして欲しくなかったし、、、だから、、、」
「大丈夫ですよ先輩。また、今度、一緒に帰りましょう!」
「、、、!うん!」
それ以来、僕はいつものメンバーに鼎先輩も加え、大所帯で帰ることが増えた。
そして、その晩、こんな夢を見た。
「やあ、烈火。ここで会うのは初めてだね」と律人が声をかけてきた。
「昨晩はお前の誕生日だったよな。ちょっとばかし遅くなったが、おめでとう」そこには一太もいた。
「どうしたの2人とも、僕の夢の中にまで出てくるなんて」
すると律人はこう言った。
「君の誕生日をお祝いしたくてさ、改めておめでとう、烈火」
「あ、ありがとう、、、」
「お、なんだよ、照れてんのか?」
「うん、正直、ね」
少し気恥ずかしかった。
「そんでもってサプライズだ。俺たちはもういなくなる」
「!?」
律人も続けて言う。
「君には僕たちはもう必要ないと思ってね。君は立派に成長したよ。
「ちょっと待って、突然すぎやしないか?」
「そうだね、サプライズだからね」
「そんな、、、僕はまた一人ぼっちじゃないか、、、」
「いや、そんな事ないよ。君には頼れる仲間がいるじゃないか。照や光、草太、刑事さんに鼎先輩、翔さんに山田さんも」
「そうだ、お前なら出来る。俺たちがいなくてもやっていけるさ。自信持てよ」
「、、、うん」
「それじゃあね、烈火」
「寂しくても、もう泣くんじゃねえぞ!」
それ以来、彼らが現れることはなくなった。
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