第11話 それぞれの日常
私は鼎、乃木鼎。どこにでもいる普通の女子高生。今日もいつも通り烈火に一緒に帰らないかと誘う。ところが彼からは
「今日はいいです。友人と帰るので」
と断られてしまった。『今日は』って言ってるけど、『今日も』の間違いなのではないだろうか。
烈火はあれから変わってしまった。私が歩み寄ろうとしたあの時から、、、その事をお父さんに相談すると、
「それは鼎、お前の問題だ。私に相談するのはお門違いってやつだな」
と冷たい返しが来た。私はただ、悩みを共有したいだけだったのに。もしかしてそれが嫌だったのだろうか。まあ、確かに急に親が死んで、しかも殺されるなんて、平常心を保つことさえ大変だろう。私の母親は私を産んですぐに死んだからその気持ちはよく分からないけど。でも心の拠り所となる何か、それが必要なのではないだろうか。それが私なら、あの時の恩を返せるのに、、、
「鼎?かーなーえー?どしたの?ぼっとして」
友人から不意に声をかけられる。
「いや、何でもないよ。大丈夫大丈夫。」
教室でいつも通り授業を受けて、いつも通り友人と会話をする。何も変わらない、ありきたりな毎日だった。
私は光、輝良光。ちょっと真面目な、そしてそれを自覚している高校生。今日も弟の照と、友人の烈火、そして偶然帰るタイミングが一致した後輩の草太の4人で帰り道をたどる。すると突然照が、
「うわあぁぁ」
と叫び出した。
「どうしたの?いきなり、、、」
と烈火が尋ねると、照は
「ザリガニが赤ええぇぇ!見ろよ草太!ザリガニが赤えんだぞ、ザリガニが、、、!」
と興奮気味だ。すると草太も一緒に用水路を覗き込む。
「本当だ、ザリガニが赤いですね!、、、よく見てください、タニシも黒いですよ、先輩!」
草太は真面目すぎだ。
「おお、すげえ!よく見つけたな、草太!でかしたぞ!」
何言ってるんだか、、、烈火と一緒に呆れ返る私だった。
私は刑事、乃木刑事。刑事は私の名前であり、職業でもある。そんな名前を私は誇りに思っている。今日も二水夫婦殺害事件を捜査していた。後輩の山田は
「妙ですね、ここ20年間で起きていた連続幼児失踪事件もですけど、この事件は謎が多すぎます」と言う。
「そうだな、そう言えばその失踪事件、最近は起きてないんだろう?」
「そうですね、ちょうど二水夫婦が殺されてからですね」
「それも妙だな」
私たちは事件の真相にたどり着きそうになっていた。
僕は烈火、二水烈火。今日の一時間目は体育の授業。いつもは下から数えた方が圧倒的に早い僕の100メートル走の順位だけど、今日は彼にでも頼ろうかな。
(お、なんだ?俺の出番か?)
うん、しばらく出られてないから、窮屈でしょ?今日は協力して欲しいんだ。
(おう、任せろ!)
「よーい、、、ドン!」
「はっ、、、!」
駆けていく、きちんと整備されたグラウンドを。駆けていく、心地よい青空の下を。あっという間にゴールにたどり着き、僕は、もとい一太は圧倒的な1位の座をかっさらっていった。
「うおおぉ!」
「すげぇぇ!」
クラスメイトからの歓声が上がる。光や照含め、みんなが驚いていた。翌日、筋肉痛に悩まされたのは言うまでもない。
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