第10話 後輩
ある日、僕は1人で下校していた。すると山田さんと久々に出会った。
「山田さん、こんにちは。弟さんですね?」
彼は弟と一緒にいた。
「え、よく分かったね。あまり似てないと思うんだけど、、、」
「こんにちは、山田草太(そうた)と申します」
弟さんも挨拶をしてきた。兄とは違った真面目な性格なんだろうな。
「こんにちは、草太くん」と僕も返す。山田さんは続ける。
「草太は明日からそこの高校に転入するんだ。確か烈火くんも通ってるよね?」
「はい、そうですね、となると彼は後輩になりますね」と僕が返すと、
「よろしくお願いします、先輩」とハキハキと返事をしてきた。
翌々日、昼食を取ろうと輝良姉弟と共に学校の食堂に行くと、長テーブルの隅っこに1人でこじんまりとカレーライスを口に運ぶ草太がいた。
(ここは、僕の出番だね)
律人がそう言ったので、僕は体の主導権を彼に預けた。
「やあ、草太」
「あ、二水先輩、、、」
草太はカレーを食べる手を止めた。
「なになに?烈火の知り合い?」
尋ねる光に律人は答える。
「うん、知り合いの弟さんで、最近転校してきたばかりなんだ」
すると照は
「おう、二水先輩ってことは、お前は後輩か!?」
と草太の顔を覗き込んだ。
「うわっ、、、」
「ちょっと照、彼、困っちゃってるじゃない。ごめんね、うちの弟、いつもこんな感じで、、、」
「いえ、ちょっとびっくりしただけです」
そう言うと草太は自己紹介をした。
「お二人とも初めまして、昨日からこの高校に転入してきた、山田草太といいます。よろしくお願いします」
「ええ、よろしく草太。私は輝良光。それでこっちが、、、」
「俺は姉ちゃんの双子の弟、照っていうんだ。よろしくな!」
「お二人は仲良さそうですね、羨ましいです」
「お、なんだよ。草太の兄ちゃんか姉ちゃんとは違うのか?」
照に草太はこう返す。
「ええ、僕の兄はいつも仕事で忙しそうにして、あんまり話せてないんです。まあ、僕が口下手なだけかも知れませんけど。だから一昨日の夕方、二水先輩と会ったときは珍しい方だったんです」
そうか、僕は気づかなかった。あの時は仲が良さそうにしてたから、てっきり家族関係は充実しているのかと思っていた。でも、僕は輝良姉弟との一件もあり、あまり深く突っ込むのはやめた方がいいと分かっていた。だから、律人を引っ込ませ、僕は
「そうか、たくさん話せるといいな」
と言い、話の奥底に入るのはやめておいた。
(お、いい感じだね。烈火も人付き合いに慣れてきたんじゃない?)
「そんなことないよ」
「?どうしましたか、先輩。急に独り言なんて、、、」
わっ、やばい。声に出てたか。
「いや、なんでもない。それより、ほら、僕たちも昼食買ってくるから、草太も一緒に食べようよ」
「、、、!はい!」
それ以降も草太とは何度か顔を合わせることになるが、初めて会ったときよりも彼の表情は心なしか段々と明るいものになっていくような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます