第2話 渡る世間に鬼はなし
警察署を出た僕は行くあてに困っていた。両親が死んで、自宅だった場所にもしばらくは警察の捜査が入るだろう。要は住む場所がない。途方に暮れ、署前をうろうろしていた僕に声をかける一人の男性の姿があった。
「よう、お前は確か二水烈火だったな」
げ、この人は僕に厳しい尋問をしてきた乃木刑事(のぎけいじ)だ。名前からして生粋の刑事なんだろう。
「何ですか、まだ僕を疑っているんですか?事件のあらましなら、もう話しましたよね?」
すると予想外の言葉が返って来た。
「うちに来い、住む場所がないんだろう?だったらうちに来るといい。俺にはお前と歳があまり変わらない一人娘がいるんだ。そいつの話し相手になってくれ」
「、、、それは構いませんが、何故あんなに疑っていた僕を、、、」
「いいから!来るんだ!」
僕は半ば強引に彼の車に押し込まれると乃木さんの自宅に向かった。
しばらくして彼の家に着いた。
「この部屋を使え、幸いここは空き部屋だしな」
僕はそれから1、2時間使い、その部屋を自分なりにアレンジした。部屋の整理が終わり、少し経つと、
「ただいまー」
と少女の声がした。
「お帰り、鼎(かなえ)。突然だが今日から我が家に新しい家族ができた」と乃木さん。
「え、何、お父さん、突然。犬でも飼うの?」と少女。
「こんばんは」
僕は彼らがいる隣の部屋にひょいっと顔を出す。
「うわあ、びっくりした!まさか新しい家族って、、、」
「そう彼、二水烈火だ。これから仲良くしてやってくれ」
絶対、拒否される。そう思っていたのだが、、、
「久しぶ、、、初めまして、烈火!これからよろしくね!」
あっさり受け入れられていた。
「そうだ、烈火。自己紹介するね!私は乃木鼎!鼎って呼んでほしいな!」
初対面の人を名前で、しかも呼び捨てにするとは、ハードルが高いな。
「あなたは、僕より年上なんですから、先輩って呼ばせてもらいますよ、先輩」
その返答に、先輩は何故かとても驚いていた。
「え、何で私が年上って分かるの、、、?」
「いえ、見れば分かるじゃないですか、見れば」
僕らはお互いの年齢と学年を教え合った。
「まさか、本当に年下だったなんてね、、、てっきり同い年かと思ったよ。でもただ『先輩』だとなんだかよそよそしいなぁ、、、」
先輩は少し考え、やがて
「私のことは鼎先輩って呼んでね!改めて、これからよろしく、烈火!」
厳格そうな中年男性と、なんだか距離の近い先輩が新しい僕の家族となった。
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