第6話 美術館?
でっかい球体となっていた鼻が治った。
綺麗に元の形に戻った。
「
親友の
「どうしたの?
「楽しそうな部活に入れたじゃないか!」
「まあ、今日は水曜日だから部活は休みだけどね。」
「それでも楽しみなんだ!竹馬に乗って、風を切って走りたいのさ!絶対アガるから!」
「そうだね、絶対最高だよ。」
竹馬は本来風を切って走る物ではないはずだが.........。
二人が教室に入ると、既に教室に居た生徒達が
「(え?こんな美人居たっけ?)」
「(誰よ、この美人.........?)」
「(ヤバっ、スタイルもめっちゃ良いんだけど.........。うらやましいわ。)」
と、男子も女子も思っていた。そして、
「(お前かああああ!!)」
と、大多数が思った。
そりゃそうだ。
なんつったって、昨日はわけのわからんデカっ
しかし、実際は超美人だったのだ。
「お、おはよう.........。」
左隣の男子が
ハーフ顔のクセに超
「ん?おはよう。」
「この前は、悪かったよ.........。そのー.........
」
「なかなか見事な
「.........。まさかいきなりタックルされるとは思わなかったんだよ。」
「うん、あれは全てあたしが悪い。もうあんなこと二度としないよ、ごんめんね。」
「(う、か、可愛い.........。こんな可愛くて美しい女子に
残念ながらこのイケメン、実は隣の
「(もし俺に彼女がいなかったら好きになってたかもな.........。)」
そして、さっき美蘭はあんなこと二度としないと言ってしまった。
つまりお父ちゃんの悲願である、『パンを加えてイケメンに激突』はこれで終わった。
「(
と、思っていたのは
そこには、黒髪ストレートで眼鏡を掛けた男子が居て、大学ノートにシャーペンで絵を描いていた。
「何描いて.........」
「見るな!!まだ出来上がってない!出来上がったら見せてやるから待っててくれ!」
「.........ご、ごめんちゃい。」
「(何か変な奴に話し掛けちゃった......。)」
ちょっと後悔しながらスマートフォンをいじること十五分、後ろの男子が葉月に話し掛けてきた。
「出来たぞ、これだよ。僕はこれを描いていた。」
「どれどれ?.........」
「うおっ!!」
うんこの絵だった。
デカデカと描いてあった。
しかも
巻き糞って時点で現実ではまず見られないが、うんこの描き方は非常にリアルでり、モノクロの写真かと思う程だった。
シャーペンだけでここまで描けるのは凄い。
凄いのだが、
「何故.........うんこなのだ?」
「うんこは、人類いや、生き物ならば誰もが生み出せる芸術!うんこに限らず僕は芸術が大好きなんだ。日々芸術とは何かを考えるのが大好きだ!」
「.........あたし、うんこを芸術って言いきる奴初めて見たわ。」
「つまり僕は君の人生に新たな芸術の価値観を植え付けてしまったんだね!?」
「植え付けられてないよ?だってさぁ、うんこじゃん!こんなもん芸術じゃねーよ!クソだクソ!!何でこれが芸術なのよ!?」
「良いだろう.........教えてあげよう。君、料理はするのかい?」
「んー、まぁ、ある程度は。」
「例えばテレビ番組で、一流の料理人が作った一流の料理をみんなで食べるみたいなコーナーがあったりするのは見たことある?」
「うん。」
「では、食べられたその一流の料理はどうなる?」
「..................あ!!」
「気付いたか!?そう、うんこになるのさ!逆にぃ、逆にぃ、料理の素人が作ったクソ
「.........う、うんこになr
「その通り!!!!芸術というものは、生み出した本人が意図していないのに優劣を付けられてしまう物だ。料理も例外ではない。一般的な家庭料理も僕はそれぞれの家庭に
「..................(こいつヤベぇ.........。)」
「因みに僕は自分のアトリエを持っているんだ。今度展示会を開催するんだけど、見に来るかい?」
「マジ?すげー!行くよ!」
「良かった、是非来ておくれ。これが僕の名刺だ。」
「お、おう、ありがとう。」
『
「難しい字の名前だなぁ。」
「今週の土曜日の午前十一時からだよ。さっきのうんこの様な素晴らしい作品がたくさんあるよ!」
そう言いながら、
「え?貰っていいの?」
「もちろんさ。君は僕の芸術の理解者だからね。普通なら二万円だが、君なら
「いや理解したつもりは無いけど。ってか高過ぎだろ!!」
なんとなくだが、
土曜日。天気は快晴、おしゃれもバッチリ。
途中、コンビニのトイレで自身の服装を確認する。
「(そんなに、おかしくないよね.........?)」
全然おかしくない。
黒地の長袖Tシャツの上からポリエステルの伸縮性のあるフード付きシャツ。
この色は白地に黒のストライプ。
そして白寄りの水色ミニスカート。
首には黒のチョーカーを着けている。誰が見ても可愛いと思ってしまう格好だった。
しかし、例のアトリエに近づくにつれて、だんだんスーツを着たセレブの男や、ドレスを着たセレブの女が多くなってくる。
「(この辺って金持ちが多いのかなぁ....?)」
ここは横浜市瀬谷区内の住宅地。
決して大金持ちだらけの地域ではない。
彼らの向かっている先が
そのセレブ達は皆十字路を左に曲がっていく。
「え?この先左って、あたしの目的地と同じじゃん?」
スマートフォンのナビに従って
「こ、ここ?」
突き当たりに立派な屋敷があった。入口には大きい観音開きの門があり、左側のレンガ造りの塀には『石川』と書いてある表札がくっついていた。
セレブ達が次々に屋敷の門の中へと入っていく。
「ま、まじ?うち、超場違いな格好なんだけど.........。」
それでも負けずに勇気を出して
「うわぁ.........。」
門の中にはでっかい噴水があり、その回りに立派な彫刻などが並べられていた。
白いドレスを着た美人女性が噴水の前に立ち、マイクを使って言う。
「皆様、本日はお越し頂き、誠にありがとうございます。
拍手が凄い勢いで鳴り響いた。
「アトリエってか.....美術館みたい.....。」
そして、屋敷の中から
「石川って、すげー奴なんだな.........。」
すると、
恐る恐る近づく
「来てくれて嬉しいよ!同級生が来るのは初めてなんだ。」
「そうなんだ。それにしても、すごいね。」
「ん?何が?」
「いや、何がって、この作品の数々よ。」
「あ、ああ。まぁ、前回から三年も経ってるからね。作品のレベルは上がったと思ってるよ。」
「え?いつからこんな事やってるの?」
「展示会は三年前が最初だから、今回は二回目さ。」
実はこの
絵画や彫刻、家具や自動車、洋服のデザインなど、あらゆる芸術に手を染めている。
この展示会のチケットは抽選であり、定員五十名に対して応募数はなんと三五〇〇万人だったらしい。
そう考えると、
実は五一人目のゲストなのだ。
「まあ、ゆっくりしてってよ。」
「うん!いろいろ見てくるよ。」
屋敷の中は凄かった。
シャーペン一本で描き上げた風景画から、油絵、陶器まであった。
そして天井のシャンデリアや
一番驚いたのはこの屋敷。
この立派な洋風屋敷も
どれも美しい。
葉月が気に入ったのは
冷凍ショーケースに入ってるのだが、見事な地球儀なのだ。
でかくて四角い氷を彫刻刀だけで削って球体にし、大陸の形を彫っている。
たくさん見れた。
正直すごい楽しかったのだが、思わず
「うんこねーじゃん!!」
別にあるとは言っていないが、
続く!
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