第4話 部活見学

 高麗こまざわ美蘭みらん池谷いけたに葉月はづきは部活動見学へ行く事にした。

 最初に見学するのは、『爆走竹馬部』。

 その活動内容は、『校内の敷地を竹馬で爆走する』とだけ書かれていた。

 簡潔で分かりやすい。

 素晴らしい。


 「部室とか無いのかなぁ?」

 葉月はづきが言った。


 「この部活動一覧には『爆竹』だけ部室の事が何も書いてないのよ。」

 「マジ?何か本当に止めといた方がいいかもね。」

 「そうね。この部活は止めよっか。」


 と言うわけで、『爆竹』を見に行くのは止めた。


 「じゃあどうする?」

 葉月はづきがそう言うと、


 「空手部見に行こっか。弟が好きなんだよね、空手。」

 「弟くんは相変わらず格闘技きなんだね。」

 「あの子は格闘技しか出来ないんだよね。」

 「ええ?そうなの?」

 「そう、他のスポーツは何やらせてもポンコツよ。」

 「へー。あんたは?」

 「あたしは何やらせても完璧にこなせるよ。天才だもん。」

 「自分で言うか。」


 とりあえず空手部を見に行く事にした。

 空手部の部室は教室がある校舎から離れた場所にある『道場』とよばれる別棟べっとうだ。

 そこは柔道部や剣道部、薙刀なぎなた部も使っていてかなり大きい建物だ。

 その『道場』の他に体育館もあるのだから、この学校の敷地は相当広い。


 「ここが道場か。でけーなこりゃ。」

 建物を見上げながら葉月がそう言った。


 「空手部は三階か。行ってみよう。」

 建物に入り、階段で三階に上がる。

 階段を上がりきると、左側に引き戸があった。

 引き戸の上には『合同空手道部』と書かれていた。


 「『合同空手道部』?どういう意味だ?」

 美蘭みらんはそう言いながら引き戸を開けた。


 「せいや!!」 「せいや!!」 「せいや!!」

 部員達の気合いの掛け声が聞こえて来た。

 空手の基本稽古きほんげいこ中であった。


 この『合同空手道部』は、部員は男女合わせて全部で24人で、基本稽古の号令をかけているのは部長であるが、女性である。


 「おうおう、あなた達は見学かい?」

 部長の女性が美蘭みらん達に話し掛けてきた。


 「そうなんです。ちょっと気になりまして。」

 美蘭みらんがそう言うと、部長は嬉しそうな顔で、

 「ようこそ!よくぞ来てくれた!さぁ、こっちにおいで!」

 と、言って美蘭みらん達を歓迎した。


 「『合同空手道部』ってどういう事ですか?」

 葉月はづきが質問した。


 「それはね、直接打撃制と伝統派が一緒に練習してるって事なのさ!」

 「なんかややこしそうだ。葉月はづき、行こう。」


 美蘭みらんがそう言うと、

 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよお!あれだよ!強くなれるよ!本当に!」

 「なら心配要りません。あたし、最強なんで。」


 すると、その台詞せりふを聞いていた葉月はづき美蘭みらんに言った。

 「おう!おう!美蘭みらんさんよぉ、最強とは、随分自信たっぷりじゃねーかい。んならその実力、この場で見せてみやがれい!」

 「何?そのキャラ。」

 「ここに、コンクリートブロックがあるぜ。」

 葉月はづきはそう言いながら、いきなりコンクリートブロックを出した。


 「どっから出したの?」

 「まぁ、細かい事はいいんだぜ!さぁ、こいつを最強のちからって奴でぶっ壊してみな!勿論、素手でだぜ!」

 

 このコンクリートブロックは穴が空いていない。

 駐車場の車輪止めとして使われてるやつだ。

 それを素手で壊してみろと葉月はづきは言った。


 「そんなんで良いならやるよ。」

 美蘭みらんは普通に承諾した。

 そして葉月はづきが出したコンクリートブロックを取り上げ、ため息をつきながらそのブロックの中心にデコピンをした。

 すると、

 ガキガキガキ!ボロボロ.........。


 木端こっぱ微塵みじんになってしまった。


 「...........................。」

 「...........................。」


 葉月はづきも部長さんも唖然としてしまった。


 「そのデコピン喰らいたくないわ!」

 葉月はづきが言った。


 「大丈夫だよ、頭蓋骨ってのはコンクリートブロックより硬いから。」

 「それでもいやよ!!」

 「とにかく、この空手部には興味無いわ。」


 と言うわけで、美蘭みらん葉月はづきは合同空手道部を後にした。


 「まあ、弟には話してあげよっかな。」


 そして、その後も二人の部活動見学は続いた。

 合同空手道部と同じ建物の一階にある剣道部にも行った。

 だが、やたらうるさくて部員が言ってる事がよくわからないし、葉月はづきが「素手で竹刀を折ってみろ」と言うので、チョップで折った。


 そして次に女子野球部を見に行った。

 楽しそうだった。

 でも準備しなきゃいけないものが多すぎて金が掛かるし、葉月はづきが「この金属バット.........」以下略。


 「略すなよハゲ!うんこ!」


 うるせーよ、お前俺が作ったキャラだろ。ハゲは合ってるけど。


 その金属バットをすねで蹴り折ってしまった。


 そして次に二人が向かったのは『ドロップキック部』。

 校舎内にある多目的室が部室であるが、何をしているかと言うと、プロレスの映像に出てくるドロップキックについて語り合っているのだ。

 部員はスポーツとは無縁の進学を目指すエリート達だ。

 とは言え、このしらす台高校はそれほど偏差値が高いわけではない。

 それでも勉強して出来る限り良い大学や専門学校へ進学しようとする生徒も中にはいるのだ。

 そんな勉強ばかりしている彼らの楽しみはプロレス観戦。


 ある一人の生徒が『ドロップキック部』を発足ほっそくさせると、同じ趣味を持った勉強家達が集まったのだ。

 だから当然アスリート気質の美蘭みらん葉月はづきにはどうでもいい部活であったため、すぐに部室から出て行った。


 二人は校舎の外に出て帰ろうとしていた。


 「なんか、面白そうな部活無いわね。」

 美蘭みらん葉月はづきにそう言うと、


 ズダダダダダダ.........!!


 竹馬に乗った男女八人が美蘭みらん葉月はづきを横切った。

 彼らの頭の高さは約三メートルぐらいだ。

 だがメチャクチャ速い。

 最早もはや彼らは極めていると言っても過言ではない。

 速すぎる。

 並の運動神経ではない。


 「「爆竹だああああ!!」」

 二人同時に叫んだ。

 遂に見つけた!

 というか見かけた。


 「あたし、あれやりたいわ!!あれ超カッコいいわ!!入部するんじゃああああ!!」

 「マジ!?あたしも入部するううううう!!あんな高い景色見ながらで走ってみたあああああい!!」


 三年間の青春のいちページとも言える部活動。

 そのいちページをこの二人の美少女は竹馬と共に過ごす事になる。




  続く!


 


 



 


 


 

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