第3話 学校

 しらす台第一高等学校。

 この高等学校には桜の木がたくさんある。

 春の晴天であるこの日は余計に桜が美しく見える。しかもシダレザクラ。

 教室からこの景色が見えるというだけで入学して良かったと思う生徒は少ないんだけどね。

 でも美しい。しかし、そんな美しい景色を、高麗こまざわ美蘭みらんは保健室の窓から眺めていた。

 今は意識が回復してベッドに座っている。


 「あー、あー、鼻が痛い.........。」

 美蘭みらんはそう言いながら桜を眺めていた。だが悪いのは美蘭みらん自身だ。膝蹴りをぶちかましたイケメン男子に非はない。正当防衛である。


 美蘭みらんの鼻は大きくなっていた。

 骨折しているせいで、とっても大きくれている。

 鼻で風船ガムでも膨らませてんのか?って思うぐらい大きい。

 そのまん丸に膨らんだ鼻は包帯でぐるぐる巻きにされている。

 鼻がある場所にでかい包帯の球体がある感じだ。


 「あたしの鼻、ソフトボールみたいになってるなあ。」

 

 ガラガラッ。

 保健室の出入口が開く音がした。


 「高麗こまざわさーん、大丈夫うー?」

 女性の声だ。声の主は保健室の先生、たちばなかえで

 いつもニコニコしている感じの良い先生だ。

 白衣が良く似合っており、男子生徒から絶大な支持を得ているアイドル的な先生。


 「んがー、問題ありまへんよー。」

 美蘭みらんは返事をして保健室を出る準備をする。


 「ちょっと、無理しちゃダメよおー?病院行った方がいいわー。」

 「いやー、こんなもんつばつけときゃ治りますよ。」

 「つ、強すぎ!」

 「あたしは最強ですんで!」

 そう言って、美蘭みらんかえで先生にお礼を述べてから保健室を後にした。


 「んーと、あたしの教室は一年三組、二階ですな。」

 普通に教室に向かった。時刻は八時二五分。ホームルーム開始まであと五分あるので、美蘭みらんは普通に間に合った。

 教室のドア(横開き)を開けると、クラスの三六人全員が美蘭みらんに注目した。


 「(あたしの溢れんばかりの魅力がみんなを夢中にさせてしまった様ね。あたしって罪な女。)」

 なんて事を美蘭みらんは思っていたが、皆が注目しているのはでっかい包帯の球体、つまり鼻である。

 まあ魅力的であることには違いないかも知れないが。


 「なあ善波ぜんば、何だあれ?あいつ鼻になんか付けてんのかな.........?」

 「な、な、なんだろうなぁ.........?」


 この善波ぜんばとよばれた男子は先ほど美蘭みらんに正当防衛の膝蹴りをぶちかました金髪のイケメンである。

 彼は取り敢えず知らないふりをした。


 美蘭みらんは自分の出席番号を確認し、その番号が書いてある席に座る。因みに出席番号七番。すると、左隣の席に座っているのは膝蹴り男の善波ぜんばであった。


 「(嘘だろ、マジかよ!?)」


 善波ぜんば右肘みぎひじを机に立てて右手で顔をおおった。

 しかし、でかっぱなはまだ気付いていない様だった。


 美蘭みらんの席の右隣、出席番号一番は池谷いけたに葉月はづきだった。

 葉月はづきが心配そうに美蘭みらんに声を掛けようとした時、


 ガラガラガラッ!

 勢い良く教室のドアが開き、眼鏡めがねを掛けた男が入って来た。

 一年三組の担任、三枝さえぐさ昌樹まさきだ。

 身長百七八センチ、体重六五キロ、四七歳。

 見た目はせ形だが、実はかなり鍛えこまれた身体からだである。

 学校内一怖いと言われる男が、美蘭みらん達の担任である。


 「オラ、出席とんぞー、居ないやつ手ェ挙げろ!」

 と、三枝さえぐさ先生は言った。

 居ない奴は手を挙げられないがこの男は気にしない。だが今日は全員が出席している。


 「はい今日から授業始まっから、真面目に受けろよー!何か問題起こしやがったら殺すぞ。はい終わり。」

 他のクラスの担任はまだちゃんとホームルームをやっているが、この男はさっさと教室から出ていった。

 クラスにデカっぱながいる事も気にしなかった。


 「ねぇ美蘭みらん、うちらの担任、なんか恐くない?」

 「ありゃー恐いわ。」


 一時間目と二時間目の授業は校内案内。

 三枝さえぐさ先生の案内で校内の施設を見て回った。

 性格は適当な三枝さえぐさ先生だが、意外と真面目に案内してくれた。


 このしらす台第一高等学校はもともとは私立の女子校だったらしいが、十年前から共学なり、現在は男子生徒の方が少々多いくらいである。

 そして共学になってからは部活動が盛んになった。

 と言うわけで放課後は部活動見学の時間である。


 「美蘭みらん、一緒に見学行こうよ!」

 と、葉月はづきが言ったが、


 「めんどくさいし鼻が痛い。」

 と、美蘭みらんに言われてしまった。


 「ええー、良いじゃん!せっかくだし行こうよ!」

 「わかったよ、行こう。」

 美蘭みらん葉月はづきに付き合う事にした。


 「ていうかさあ、部活の種類多くね?」

 美蘭みらんが部活動の一覧表を見ながら言った。


 「多いね!美蘭みらんはやっぱり卓球部?」

 「卓球はもういいや。あたしは部活やらない。」

 「え!?そうなの?」

 「バイトしたいんだよね。」

 「ああ、そういうのもありか。」

 「で、葉月はづきはどの部活が見たいの?」

 「このー、E《イー》スポーツ部っての見てみたい。」

 「Eスポーツって何?」

 「最近世界中で流行はやってるじゃん!格闘ゲームとかパズルゲームとかのお、世界大会が開かれてんのよ!」

 「なんかつまんなそうね。あたしは小学生の頃、弟と格闘ゲームすると決まって本物の格闘になっちゃうのよ。二人とも格闘技が好きだからさ。」

 「危ねー姉弟きょうだいだな。あ、弟君おとうとくん元気?イケメンだよね。」

 「何?あんたまさかあたしのかわいい弟を狙ってるの?」

 「ええ!?いや、違うよ!」

 「そう、ならいいけどさ。」

 「(相変わらず弟大好きだなコイツ。)」

 「あ、ねぇ、葉月はづき。」

 「んにゃ?」

 「この『爆走竹馬部』見てみない?」

 「何かヤバそう.........。」

 「略して『爆竹ばくちく』。」

 「超ヤバそうなんだけど。でも、行ってみようか。」


 こうして、二人のヤバそうな部活見学が幕を開けたのだった。

 




 


 






 

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