メルヘン女子に憧れて
大盛りごはん
第1話 決意
「お父ちゃん!お父ちゃん!あたしだよ!
病院のベッドで寝たきりの父親に必死で声を掛けるのは娘の
年齢は現在十五歳、中学三年生である。スポーツ万能少女であり、今日は所属している卓球部の全国大会であった。
お父ちゃんの仕事は一級建築士で、家が職場だったため
「お父ちゃん!!嫌だよぉ!お父ちゃん!!」
ピッ、ピッ、ピッ.........
バイタルセンサーの音はまだ鳴っている。お父ちゃんはまだ生きている。
ガラガラッ!
病室のドアが勢いよく開いた。
「嘘だろ?父さん!駄目だろ父さん!起きろよ!起きろって!」
父親が
そして
「お父ちゃん!起きて!」
続いて
「起きろよ父さん!!」
交互に二人の子供が泣き叫ぶ。
「起きてよ!お父ちゃん!」
「起きろよ父さん!!」
「起きてよ!」
「起きろよ!」
「起きてってばぁ!」
「起きろってのぉ!!」
「起きろっつってんだろがコラァ!!」
ドスッ!!
怒りの叫びと共に
「うぴー!!」
お父ちゃん、起きた。
「えぇ!?あ、あなた!?」
驚いたのは
「はぁ、はぁ、何だよおい。」
お父ちゃんは殴られて目が覚めたらしい。でも仰向けのままだ。
「お父ちゃん!!」
「おぉ、
お父ちゃんが苦しそうに、でもどこか嬉しそうに言った。
「お父ちゃん!あたし、あたし優勝したよ!」
「おお、そうか.........。良く頑張ったな
お父ちゃんは右手で
「
お父ちゃんに呼ばれて、
「お前も良く頑張ったな、今日は確か、お前も全国大会だったんじゃないのか?」
「そうだよ、でも俺は来年もあるし、そんなもんより父さんの方が大事だよ!」
お父ちゃんは
「お前は、お母ちゃんに似て本当に優しい子に育ったなあ.........。」
お父ちゃんは
「ありがとな、お母ちゃん。いや、
「たっちゃん!あたしも、あたしも、幸せだよ.........。」
お母ちゃんはお父ちゃんにそう言った。お父ちゃんの名前は
「そうだ
お父ちゃんが
「うん、そうだよ。」
「そうか、大きくなったなあ。しかも、お母ちゃんよりもずっと美人に育った。そんなお前に、お願いがあるんだ。」
「何?お父ちゃん!なんでも言っておくれ!」
「いいか
お父ちゃんはこの瞬間だけは意識をハッキリさせて言った。
「よ、よくわからんけど、パンを咥えながらぶつかればいいんだね!わかったよお父ちゃん!」
「
お父ちゃんは
「!!.........俺が、父さんの空手着を.....。」
ただでさえ涙を流している
「わかったよ.........。俺はやるぞ父さん。柔道だけじゃねー、父さんに教わった空手でも全国一、いや、世界一になってやる!!」
「.........もう、何も思い残す事は無いな.....。ありがとう、みんな.........。」
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーー......。
お父ちゃんの、脈が止まった.........。
お父ちゃんは三人の家族に看取られてとても幸せそうな顔で眠ったのだった。娘と息子はお父ちゃんにしがみついて長い
年が明け、四月。
チーン.........。
お父ちゃんの写真が飾られた仏壇に置いてある
「お父ちゃん、今日から本格的に登校だよ。うちは全員ごはん派だからパンは無いけど、途中で買っていくから、心配しないでね!あたしはメルヘン女子になる!」
「お、姉ちゃん、その格好は.........。」
弟の
まるで世界的に有名な
「
ガチャッ.........バタン!
外へ出て行った。
「.........フッ.........フッハッハッハ.........。やっぱり姉ちゃんは自慢の姉だぜ!何だかよくわからねーが、格好いいぜ!女なのに、
この姉にしてこの弟あり。どこかズレた感覚を持った姉弟の青春喜劇が、幕を開ける。
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