第2話 タックルの対策
いい天気だ。とってもいい天気。太陽がニコニコしている!爽やかな春って感じのいい天気!昨日の入学式と同様、今日も晴天であった。
入学式では大人しくしていた
「メルヘン女子になる。」
そうお父ちゃんと約束した
パンを買うためだ。
「パンを咥えたまま走ってイケメンに激突しろ!」というお父ちゃんの最後の言葉に従い、
きっとお父ちゃんは食パンの事を言っていたのだろう。
恋愛漫画のイメージでよくあるシチュエーションだ。
だが、
何故なら
それに恋愛漫画とか読まなかった。
「色々な種類があるなー。」
「おお、これならやりがいがありそうだぞ。」
形はコッペパンの様だが中身は何も入っておらず、外側がミルク風味の甘い生地になっている、メロンパンの様な生地だ。長さは三〇センチ程ある。
「これ下さい。」
(『これ下さい』っていう人、本当に居るんだな。)
と、思った。そして少しドキッとしてしまった。
そして顔も綺麗である。
大きく美しい瞳に通った鼻筋、そして麗しい唇の、整った顔立ち。
色白の肌に美しい身体のシルエット。
すれ違えば女も男も振り向いてしまうような美少女である。
「レジ袋は必要ですか?」
店員がそう言うと、
「要りません。食べ走りますんで。」
と、美少女は言った。
(『食べ走る』?食べ歩くじゃないの?)
と、店員は思ったがその事は口に出さずに会計を進めた。
「どうも。」
そして、鋭い眼光で店の出入口に向かって走り出したのだ。
出入口は自動ドアだが、
コンビニの店員は
ズダダダダダダダダ.........
目指すは最寄り駅。
横浜市なのに都会感が無く、落ち着いた雰囲気の街だ。
美蘭は最寄り駅に着いたが、一つ気付いた事があった。
(電車って、使っていいのか?)
お父ちゃんからは『走って激突』と言われた。
電車を利用するのは反則ではないか?と、
しかし、
「おはっちょーー!!」
バシンッ!
後ろから大声の挨拶と共に、背中を叩かれた。思わずパンを吐き出してしまうが、何とか両手でキャッチして
「
「テメェこそ朝から何してくれとんじゃコラァ!」
「危うくパンを落とすとこだったじゃねーか!この
「そ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか!」
と、ちょっと涙目になった黒髪ツインテールが言った。
「そう言えば、
この黒髪ツインテールの女の子、名前は
「一緒に行こうよ
「うん。じゃ、電車乗るか。」
「??乗るでしょそりゃ。」
「あたしは電車乗るか走って行くかで迷ってたのよ。」
「迷う
「そんなでも無いよ。歩いて四十分位でしょ?」
「遠いっつうの!」
「お前は修行が足りんのだ。だから背が伸びないんだぞ?」
「うるせーなー!いいから行くぞ!」
パクッ。
二人は改札口を通り、階段を
「...........................。」
「...........................。」
(えーい!話し掛けずらい!!)
何故なら
(なんなの?こいつ。なんでパン咥えてんの?食べればいいじゃん!おいしいやつなんだから、食べればいいじゃん!)
表情は真剣その物であった。
なんだかすごい
美人女子高生が長いパンを大きい口を開けて咥えている。
非常にダサい絵面だった。
ガタンゴトン.........
電車がやって来た。
(あ、きっと電車の中で食べるために咥えてるんだな。)
電車からの景色は決して綺麗とは言えない。
何てったって田舎街だし、
終点であるしらす台駅は地下にあるため、途中で完全に景色が見えなくなってしまう。
つまらん電車旅であった。
「...........................。」
「いや食わねーのかよ!?」
電車にのっている間、
咥えたままだ。
電車からは当然他にも通勤などで乗ってた客も出てくるわけだが、(あの子、すごい美人なのに何やってんだろう.........?)や、(何かのウケ狙いなのか?)などと思われていた。
タッタッタッ.........
ズダダダダダダダダ!
「ちょちょちょちょちょちょー!ちょーちょー待ってよおおおおおお!速いよー!」
ミッション再開。イケメンを見つけて激突せよ!
「あいつ、なんで
そんな
(イケメン、イケメンはどこだ!?そう言えば、イケメンの定義って何だ!?)
今更イケメンについて考える
別にアイドルとか俳優とかに興味が無いこの女には荷が重すぎるミッションであった。
しかし凄いのは
この速さであるにも関わらず千切れないし、曲がりすらしない。
真っ直ぐと綺麗な形を保ったままである。
これは
そして、学校まであと百メートルぐらいの地点でそのイケメンは居た!
身長百七六センチ、体重六二キロで金髪ストレートでハーフ顔の、マジで少女漫画に出てきそうなイケメンが居た!
横顔が見えただけでイケメンとわかる。
しかも、周りに女子が二人ぐらい居る!
(あのいけ好かない感じ、あれが恐らくイケメンってやつだな!)
そう確信した
それは、体勢を低くした完璧なタックルであった。レスリングや総合格闘技なら、綺麗にテイクダウンを取れる程見事なタックルだった。
「な.........え?.........お、俺?.........。ちょ.........待っ..................」」
と、相当ビビっていた。当然だ。白目をむいてパンを咥えた狂人が己に突っ込んでくるのだから。
「んーー!!んーーーー!!」
そして
バキャ!!!
イケメンは身を守る為に、
「..................何だ?.........コイツは.........。」
イケメンはなんとか難を逃れたかの様に冷や汗をかきながら言った。
「み゛、み゛ら゛ーん!!」
目をぐるぐる回し、ヘトヘトになりながらもなんとか走って追い付いた
「..................何だ?.....コイツらは.....。」
それを見たイケメンは
この一風変わった出逢いが、二人の恋心に火を点けることになる。
..................ってわけでもない。
続く!
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