暗くなったとはいえここは住宅街の中それほど危ない場所ではない。ただあの店だけは異彩を放っている。今夜もネオンサインが不思議な空間を作り出していた。中をのぞいてみるといつものようにキャンドルが灯っている。

 ちょっとした気まぐれからかさっきまでミカちゃんと一緒だったせいか店の中に入ってみようという気になってしまった。どうせ開いてないだろうとドアに手をかけると僕の予想に反してスーッと開いてしまう。僕は恐る恐る中に入っていく。

 店の奥で誰かがぼくを見ていて、その目に引き寄せられるように僕はその方向に歩いていた。ヴェールをかぶったその女性は一見するとシスターのように見える。

「ひとり」

 若い声。かすかに見える顔もまだまだ無垢な少女のようだった。

「はじめてね」

「いいわ、今日はサービスしてあげる」

 そう言ってその女性は光の漏れたカーテンを指さした。

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