明石(あかし)

 須磨では嵐が続きます。源氏は住吉神に祈りを捧げますが、ついには落雷で屋敷が火事に見舞われます。

 ようやく嵐がおさまったある日の夜、突然夢に、桐壺帝の霊が現れます。桐壺帝は住吉神に従って須磨を離れるよう源氏に告げます。そして「都にも言いたいことがある」と言って姿を消したのでした。

 その夢をみた翌朝、明石入道あかしのにゅうどうが船に乗って現れ、源氏は須磨を離れ、明石へ移りました。



 須磨での生活で、源氏は「明石の君」という女性のうわさを耳にしていました。明石入道は、この明石の君の父です。入道は明石の君を源氏に差し出そうとします。明石の君は身分の違いを考えて乗り気ではありませんでしたが、源氏は手紙のやり取りをするうちにこの明石の君に惹かれていきます。そしてついに明石の君のもとを訪れ、契りを交わすのでした。源氏はそのことを(なぜか)都の紫の上に伝えます。紫の上は遠い地で日々を送る源氏を心配していました。しかし突然そんなことを聞かされ、当然嘆き悲しみ怒ります。源氏は、浮気に激怒する紫の上からの手紙を見て反省をし、しばらくは明石の君のもとを訪れなくなります。



 さて、都では太政大臣(元右大臣。弘徽殿大后こきでんのおおきさき、朧月夜の父)が亡くなります。さらに弘徽殿大后こきでんのおおきさき自身も病に倒れます。さらに、弘徽殿大后の子である現帝、朱雀帝の夢に桐壺帝の霊が現れ朱雀帝を叱責します。その後、心労がたたったのか、朱雀帝は眼病を患ってしまいます。

 不幸が連続する都、さらに父帝からの叱責を受けて、朱雀帝は源氏を都に戻すことを決断します。弘徽殿大后は最後まで反対しますが止めることはできませんでした。「源氏を追い落とすことが出来なかった」。弘徽殿大后は悔しさに涙をにじませます。

 こうして源氏は都に戻る事となりました。しかしこのとき、明石の君は既に源氏との子を宿していました。源氏は明石の君に、必ず都へ迎えようと約束します。

 

 源氏の須磨・明石での生活は、三年にも及びました。



明石入道あかしのにゅうどう・・・もともとは三位中将という、身分の高かった人物。実は源氏の母桐壺の更衣のいとこ。都の官職に見切りをつけた後、播磨守として現地に下り、そのまま出家して明石に住み、娘の明石の君が貴人と結婚をすることを住吉神に祈り続けた。


明石の君・・・明石入道の娘。源氏と結ばれ、子どもをその身に宿す。

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