澪標(みおつくし)

 源氏、時に28歳。都に戻った源氏は右大将から大納言へ昇進します。参内した場所で、源氏は異母兄朱雀帝と三年ぶりに再会します。その後、東宮や、東宮に仕えていた息子夕霧とも再会するのでした。


 東宮が元服したのをきっかけに、朱雀帝は異母帝の東宮に譲位、朱雀院となりました。一方、東宮は冷泉帝として即位します。その頃、明石の君は娘を出産(明石の姫君)、源氏はこの明石の姫君を将来きさきとすることを考えており、祝いの品と乳母を明石へ送ります。一方、子のない紫の上はひそかに嫉妬の心を抱くのでした。

 秋、源氏は住吉へ詣でます。そのとき、たまたま明石の君も参拝していましたが、源氏のきらびやかな様子に圧倒され、あらためて身分の違いを感じます。従者惟光に、明石の君がいたことを知らされた源氏は、明石の君の心中を察し、和歌を贈るのでした。



 譲位に伴い、斎宮として伊勢に下っていた六条御息所ろくじょうのみやすんどころとその娘、斎宮が帰京します。しかしまもなく御息所は病に倒れ、源氏は彼女を見舞います。そこで御息所は、源氏に娘を託します。ただし次のように釘を刺しました。


 「決して愛人にはしないこと」


 こうして御息所は亡くなります。源氏はこの斎宮に未練を感じつつも約束通り、自らの養女としました。この斎宮には、朱雀帝が思いを寄せていました。朱雀院はぜひきさきに、と要望を出しますが、源氏は藤壺の助言により、冷泉帝へと入内させることを決めます。

 斎宮は源氏の二条邸に引き取られ、紫の上はこの斎宮のためにあれこれと世話を焼きます。

 ついに入内の日。故六条御息所に仕えて来た女房達は、亡き御息所がこの光景を見ていたらさぞ喜んだだろうと涙を流します。これ以後、彼女は斎宮女御さいぐうのにょうご梅壺女御うめつぼのにょうごと呼ばれるようになります。また、源氏は養女を通じてではあるものの、帝の義理の父となったのでした。実際には本当の父親ですが。



明石の姫君・・・明石の君と源氏の間の娘。源氏に、将来帝のきさきとなることを期待される。

斎宮女御・・・六条御息所と故東宮との間の娘。斎宮として伊勢に下ったのち、朱雀帝の譲位に伴って帰京、源氏の養女ちなり、冷泉帝のきさきとなる。

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