葵(あおい)

 桐壺帝が譲位し、源氏の異母兄である東宮が朱雀帝として即位しました。それに伴って藤壺が産んだ若宮が東宮となり、源氏はこの異母弟(実際は子ども)の後見人となります。さらに、六条御息所ろくじょうのみやすんどころと前東宮(正体不明、故人。朱雀帝とは別人物)の間の娘が斎宮さいぐうとなることが決まりました。六条御息所はかつて源氏とも関係をもった年上の女性です。また、弘徽殿女御は大后おおきさきとなりました。


 賀茂祭(葵祭)の御禊ごけいの日、源氏も供のために参列します。この姿を見ようと人々が殺到、六条御息所の一行も身分を隠してやってきますが、そこで懐妊中の源氏の正妻、葵の上の一行と遭遇します。両者は見物の場所を巡って衝突、ついに葵の上の一行が六条御息所の牛車を破壊してしまいます。六条御息所は教養にあふれ、また身分も知性も高い女性、この事件は大きな屈辱でした。当然、自らに屈辱を与え、また自分が愛する源氏を独占する(というふうに彼女自身には思えた)葵の上へと、恨みは向かいます。役目を終えた源氏は左大臣邸に戻ります。そこで事の次第を聞いて驚愕、六条御息所の屋敷を訪ねますが門前払いにあいます。


 葵の上の出産が近く、源氏は若紫にしばらく会えないことを伝えます。すると若紫は「もう子供じゃないの。淋しいのくらい我慢できます。だからちゃんと看病して、さしあげて」と源氏を気遣い、源氏を驚かせます。


 懐妊中、病の床に合った葵の上はさらに体調を崩していきます。これは恨みを持った六条御息所の生霊の仕業でした。源氏は看病中にこの生霊に遭遇し、仰天します。

 八月、葵の上はついに源氏の子を出産します。のちに夕霧と呼ばれる男の子でした。しかし、葵の上は数日後に亡くなります。

 六条御息所は自身の身体から芥子の香りが消えないことに違和感を覚えます。そのとき、女房から葵の上の訃報を聞かされ、その意味に気づき、青ざめます。


 葵の上の葬儀、さらに四十九日が過ぎた後、源氏は夕霧の養育を左大臣家に託し、屋敷にある二条邸に戻りました。そして成長した紫の上と密かに結婚することを決めます。このとき、兄のように慕っていた源氏との初めての逢瀬に紫の上は困惑、しばらく口をききませんでした。

 源氏はこれを機に紫の上の父である兵部卿宮と世間に紫の上の素性を発表することとしたのでした。



登場人物

六条御息所ろくじょうのみやすんどころ・・・故東宮の妻。つまり、東宮が帝となっていれば帝の妻となっていた人物。詳細は不明だが、年下の源氏と関係をもっていた。しかし、徐々に訪れが亡くなり絶望する。東宮との間の娘が斎宮となった。葵の上を怨み、その恨み心が生霊となって葵の上の命を奪った。そのことに慄然とする。

朱雀帝・・・源氏の異母兄。桐壺帝の譲位を受けて即位。異母弟の源氏を気にするが、母の弘徽殿女御は源氏のことを快く思っていない。



斎宮・・・斎宮は「いつきのみや」とも呼ばれ、斎王の宮殿と斎宮寮さいくうりょうという役所のあったところ。斎王は、天皇に代わって伊勢神宮に仕えるため、天皇の代替りごとに皇族女性の中から選ばれて、都から伊勢に派遣された。

( https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/saiku/50284036117.htm )

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