第15話
帝が輝く
帝は頭を垂れる役人たちの様子を眺めると、小さくため息をついた。脇に控えていた関白の
千手関白は朝参に集った役人たちに向かって、「皆の者、
千手関白の声を聞くと、役人たちは互いの顔を見合わせながら、ためらいつつ立ちあがり、礼をしなおした。地面に額ずく跪礼は、古来より最上級の礼とされている。しかし年老いて足の悪い者もあり、全員が跪礼をするまでに大変な時間がかかる。そのためこの頃は、立ったまま頭を下げる
ようやく立礼が整うと、帝が百官に向かって、朝のあいさつをなさる。そのお言葉を、千手関白が大音声にてくり返し、大極殿中へ聞かせた。
「我が祖
千手関白が代弁する帝のお言葉が終わると、百官は頷くようにさらに深く頭を下げるのだった。
けれどうつむいた百官の顔には、それぞれの思惑が浮かんでいた。
「帝の御お心は誠に清くあらせられる。
「千手関白様もご立派であらせられる。さすが亡き
帝と千手関白が大極殿を去ってしまうと、人々はこのように感想を言い交わした。
「いやいや、千手関白のあの傲慢な態度。帝の言霊をまるで自分の言葉のように話していたではないか。恐れ多いことよ」
と言う人もまたある。
そのなかで頼光は、恍惚とした顔で、後片付けの進む大極殿を見つめていた。
「朝から千手関白様のお声を聞けるなんて尊すぎる」
手を合わせて、涙を流さんばかりに感動している。
「ちょっと頼光ちゃん、いつまでぼうっとしてるの」
そう頼光に声をかけるのは、大学寮の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます