第一章 地神に首を取らるる話
第8話
むかし、まだこの世とあの世の
平安京という都があった。
この世を
さて、東の山の向こうから太陽がせり上がり、空がだんだんと白んでくると、都の人々は目を覚まし、あちらこちらで火を焚く煙がのぼり始めた。
都の北側、
しんとした邸のなかが、煮炊きの音、人の動く音、鳥たちのさえずる声などで、次第ににぎやかになる。
一番に起き出して、
と、紀代が切った芋を鍋に入れようとしたとき、芋のかけらがぽろぽろと鍋の口からこぼれ落ち、囲炉裏の灰のなかへ飛びこんでしまった。
「あれまあ」
紀代は少し眉を寄せたものの、
「灰が香ばしくなって、いいでしょう」
とひとりごちて、火掻き棒でもって、芋を灰のなかに隠してしまった。
そうして、すました顔でまた料理を続ける。
芋とごぼうとを煮ながら、となりではきのこの羹を作る。
毎日同じ頃合いに起きて、水を汲み、火をおこし、こうして朝餉を作り始める。何年も変わらない暮らしをしているものの、こしらえる料理は季節の色とともに移り変わる。春は春草の生まれたばかりの苦さを味わい、夏はさっぱりと瓜などを食べ、秋は熟した木の実をつぶしてその色を楽しみ、冬には秋までに作り置いた乾物を味わい、湯気立ちのぼる
そのような日々を何遍もくり返すうち、庭に集まる犬猫は子を産み、やがてその子が子を産み。蝉はひと夏を身もだえるように鳴いて、ころりと命を終え、さて何代分の命の声を聞いたことか。そうした様を、毎年庭に訪れる渡り鳥も、松の上からひとしきり眺めて去ってゆく。
そろそろまた、
さて、そうして紀代が秋の朝を味わっているところへ、頼光の母、
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