勇者

 「本当かよ~」

 「信じらんねえ。」

 学校で、リンは少年達に囲まれていた。

 「本当だって!塔の天辺には妖精が居たんだ。透き通って綺麗だったよ。」

 少年達はリンが、妖精が居たと言ってもなかなか信じない。

 ああだ、こうだと言って顔を見合わせる。

 「じゃあさ。その妖精ってのを捕まえて、学校に持って来ようぜ。」 

 「それ、いいな!見世物にしよう。皆喜ぶぞ。」

 ワイワイと盛り上がる。

 見世物… 

 リンは心が冷えた。

 「あ、あー冗談!」

 「はあ?」

 「妖精なんて居る訳ないじゃん!皆、騙されるかなあと思って。」

 途端、リンにキツイ目を向ける者も、だよなーと笑って誤魔化す者も居る。

 「つまんねー。行こうぜ。」

 始業のベルが鳴る。

 リンはニコニコしていた。

 ニコニコしてればそれなりにやって行ける。

 友達が居なくなる訳じゃない。

 ちょっと居心地は悪くなるかもだけど。


 これで良かったんだよね。

 僕、お兄さんを守れたかな?

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