第4話『お前、マジか……。』

『あ!横田!久しぶり!』

皆が僕に、近づいて来る。

まるで物珍しい動物を見る様な

眼差しだった。



そう。僕はヒゲを生やしボサボサの髪の毛をしていたのだ。

洋服も部屋着丸出しだった。


『横田~な~にしてたんだ~?』

皆が僕の事を、はやしたて

からかっている。

と感じて仕方なかった。


今の僕には……とても苦しいのだが、会話を合わせようと

必死に作り笑いをした。


《じゃ……じゃあ元気でなっ。』

と小走りに去っていった。


僕には……もう、友人すら

出来ないんだ。

フッ。と笑い歩き始めた。



あぁ。そうだ。

鍋なんか食べたいよな。

一人鍋か……。僕は、財布の

中身を見た。


二千円。

残金がこころもとなかったのだが

フラッと今度は珈琲を買った所と

違うスーパーにカゴを持って

入った。



鍋には何を入れよう?

しばらく考え事をしていると……


あ!湯豆腐……。いいね?

湯豆腐にしよう。


豆腐と出汁に昆布……ポン酢

なんか……良いよなぁ。


買い物カゴを提げて品物を探し出した。




と……その時……。

店内の私服警官に呼び止められた。


『ちょっと……そこの、

止まって……!』

え……?僕の事……?声の方を

振り向いて目をやると、


『悪いんだけど、あなたの残金

200円?しかもその格好!

ちょっと来て!』


スーパーの私服警官にバックヤードに、連れて行かれたのだ。


《え?僕は二千円持ってますが

……湯豆腐って、》


僕の話を遮るように私服警官が

話を始めた。


『あなたの残金、計算も

出来ないの?失礼だけど勤め先は

あるの?』


僕は……首を横に振ると、


『お金が無いのに……。

万引きと同じ事よ?ダメじゃないの!』


知らぬ間に前の珈琲を買った

スーパーで……



僕が珈琲と生クリーム……

それからチョコレートを買った

証拠が

見当たらなかったのだ。



食品はあるのだが、

肝心のレシートが無かった。


他の人からすると万引きに

当たるのだが、

私服警官が病院へ連絡すると

ようやく態度を

変えたのだった。


私服警官の女性らが僕に

注意を促してきた。


財布の中身を見て首を横に

振っていた。


《あなた、障害者年金か、

生活保護……受けてる?》


一瞬……専門用語が並び

訳が分からなくなった。



『今回は……仕方ないわ。

私達から食品の返品をしておく

から……

きちんと国や自治体の制度を

受けられる手続きを

して下さいね!』



僕には理解できなかった。

私服警官は役所に連絡を入れた。



僕は……万引き犯に間違えられて

スーパーを後にした。





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