第16話 委員長

雅近を無視して学校に直行すると下駄箱にはすでに何人かの生徒がいた。

下駄箱を抜けて自分のクラスへと向かう。

教室に入ると1人の女子生徒が目に映る。


「おはよう。委員長」


「おっ今日は早いね」


そのまま俺と花憐におはようと言ったその女子生徒は


鷺町 椎名(さぎまち しいな)


俺たちのクラスの委員長である。

委員長はどちらかと言えば元気系の女子。

校則違反にならない程度に着崩した制服に、ショートボブの髪型。

誰とでも仲良くなれるのが彼女の良いところだ。


「柚木くん、僕は夏休みクラスのみんなと遊んだんだけどその中で唯一君と花憐ちゃんとだけ遊べなかったんだよ。」


へえー俺呼ばれてないんだけど?


「連絡してくれたら良かったのに」


「連絡したかったんだけど柚木くんと花憐ちゃんの連絡先僕知らないんだよね」


マジか。

そりゃあ誘われなかったことも納得できるわ。


「じゃあ交換しよう。良いかな?花憐。」


昨日みたいなことにならないように花憐に聞いてからにする。


俺と手を繋いだまま花憐はコクっと頷く。


手を繋いだまま………


手を………繋いだまま……………


うおぉぉおおおおおおお!

手繋いだままだった!?

完全に忘れてた!


俺は急いで手を離そうとする。

が、そうすると花憐がさらに強く俺の手を握る。

それはまるで離させないと言うかのように。


「私と手つなぐの嫌?」


上目遣いで俺の方を見る花憐。

それはずるい。


「べ、べべべ、別に嫌じゃない!ちょっと恥ずかしくなっただけだから」


「そう。なら良かった」


そう言って花憐はニコッとおれに笑顔を見せる。

かわいいなぁ。


「あのぉー目の前でイチャコラするのやめてくれない?見てるこっちが恥ずかしくなるよ」


「あっごめん」


委員長に心のなかでもう一度「ごめん」と謝りながら俺と花憐は委員長とLINEを交換した。


「そろそろ他の生徒も来るから手離したら?」


確かに廊下が騒がしくなってきた。

花憐もそれに気づいたのか渋々といった形で握っていた手を離した。


「じゃ委員長俺たち席に戻るね」


「はーい」


今日は席替えがあるらしい。

花憐の近くになるかな?

なったら良いな。

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