第23話 引越し準備 続
「手伝ってくれるの!? ありがとうー。」
「じゃあ、これとこれとこれ捨てるねー。」
「うーん、どれとどれとどれー?」
「だから、このきつつきのぬいぐるみと、お兄ちゃんの小中の卒業アルバムと、このエッな本!」
うっ!!
きつつきのぬいぐるみは勝手に夜中に動き出して僕の頭を叩いて起こすし、卒業アルバムは黒歴史を思い出させるだけだし、エッな本は......
「捨てたらだめよ!」
「部屋綺麗にしててよ。私泊まりに行きたいんだから。」
うっ!!!
またまた強い衝撃。
こんな僕の家に来てくれるなんて...
「そいえば僕全然料理できないんだー。さっちゃんの手料理食べたいなー。」
「初めては、彼氏に作ってあげるって決めてるの! 呼び方きもいし。」
まあこれをきっかけになんかがんばってみるか。
小学校のときの夏休みのなんかカレー作るやつすら、適当に嘘ついて母と彩月に作ってもらってたくらいだからなあ。もうクックパッド最高とか聞くけど、まったくわからんし。砂糖と塩は間違えないけど大さじと小さじは間違える。適量とか、飴色になったころとか、わからないことばっかりだ。初心者にも優しくしてほしいものだけれど。いや? 流石に目玉焼きは作れるけどね。卵焼きはちょっと...(小声)
軽口は叩いているけれども、妹のおかげで案外早く作業は進んでいる。
多少雑だけれども、僕の大好きな小説とかもダンボールに入れてくれている。
『そして誰もいなくなった』
『透明な螺旋』
『君の膵臓をたべたい』
『迷子たちの街』
『実用判例六法』
『中学社会科教育法』
︙
︙
『青と君の憂い』
改めて見ると僕だとは思わない本たちが並んでいる。
特に、この最後の『青と君の憂い』という本は、ただの青春小説だとは、片付けられない。まあいいか。
準備はほとんど終えて、部屋を見ても、なにか変わったことがあるとは思わない。
詰め込みすぎていたものたちから、少し救い出してあげられたのかもしれない。
それでは、出発しようかな。
「プルルルルルル」
それがなにか、わからないわけではなかったがわからずにいようとした。
まあ、こういう状況では出るという選択肢しかないのだけれど。
画面には、彼の名前が出ているわけではない。
懐かしいあだ名__
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