第9話 n回目の警察署 (n>5)

刑法 第26条

次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。(中略)

一 猶予の期間中に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。

(後略)


人生終わったか...? すでに終わっているか? 頼むよ裁判長〜〜!!

ズボンを脱いだだけじゃないですか、もう一回! 執行猶予を


もう、金輪際 心入れ替えるよ

ねえ、だから執行猶予で一度だけ見逃して


おっといけないいけない、これはどこかのなんとか裁判だ。



え? なんで僕がこんな条文を知っているかって?

それは、僕が法学部生 だ か ら!!


みんな僕が大学生ってこと忘れてんな

まあ、今の僕を見るとどうしようもないか

used to ってやつだよ


分厚い六法全書と判例の本を持って喫茶店とかに居座っていたんだよな〜

よくわからん視線を投げかけられていたのが懐かしい


店員さんからは何度も話しかけられるし

僕のこと気になっていたのかな?

憧憬かな、奇怪かな、蔑視かな、、、  だんだんかなしくなってきた


見直した?


高三のときは大変だったんだよな〜

一応勉強してたしね

その反動で今(語るまでもない)に至る



キキキー


相変わらず運転下手だなこいつ

おっとこいつとか言っちゃいけない


いつもお勤めご苦労さまです。

それは僕のほうか。(うるさい)

せめて女の子だったらなー


それにしてもバック下手、何回いれ直すんだよ

ラインずれてるし、ちゃんと終点の確認はしないと

バック担当変わったろかな

インをがん攻めで


目的地がわからないと、無事に最後までたどり着けない。

地図を持たない旅行者なんだ(それは湯川さん)


「降りろ。」


扉は勝手に開かない。タクシーシステムではないらしい。


相変わらず愛想ないなー。

もう僕は懲役刑が確定してるみたいなもんだから命令口調なっちゃった。

こんな隊長も好きだけど。次からはそう呼ぼうか。


下僕は言い過ぎだからやめておこう


よいしょ、ずりずり、すりすり


手錠をかけられているもんだから、移動にもいちいち大変だ。

誰か手伝ってくれないかなー、誰かー...


すっと横の、制服の胸部さんが大変そうな警官を見る。

横顔もいい。


ただ、僕に人の顔を愛でる性癖はそこまでないので(実行力)


「ちょっとひっぱたいてくれない?」

「は?」


やべ、言い間違っちゃった。


「引っ張り出してくれない?」

「いいけど。」


なぜか歯切れが悪い。


ずりずりずりざざー ばさばさ ごとごt...

なんか違うのも混ざっちゃったけど、偉い強く引っ張る


どうしてだろうか、僕に心当たりはない。


ほんと、この建物は高いなあ。

まあ、罪人はまずここに来るからね。

雰囲気は暗いけど。


勇気出して(出さなくても)この無限に連なるダンジョンを攻略していこうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る