第3話 家族会議

僕の前にそびえ立つのは古めかしい大きな家。

家に入るためには、当然ながら門をくぐらなければならない。


 さて、どうやってこの門を開こうか。

上手に開いていかないと痛いかもしれないし。


門番は怪しそうにこちらを見ている……

いざっバトル!っていうことにはならないけど。


本当にどうしようか。このままここでじっとしていて、不審がられて通報されたらせっかくの執行猶予判決がパーになってしまう。

門番は知らない人だし。

両親を呼ぶのもバカな話だし。


門番さーーん!

気づいてください!

僕、実はここの家の長男なんです。

大学休みがちでも、駅前でズボン脱いでも、頭の中にはいつも女性のヌードしかなくてもチェリーボーイでも。


冗談は地獄1丁目に置いておいて、まずは妹の彩月に電話をしよう。


プルルプルル

「さ・つ・き、助けてーお兄ちゃん、家に入れなくなっちゃったー!」

「(まったくどこかのバカ兄ちゃんはほんとにバカ)今いくよー」


ガチャ


相変わらずかわいいな、おい。ほんとに。

いやいやいけないいけない。妹だけはいけない。いけないぞー(棒)。


ていうか薄着過ぎない? まだ4月だぞ。平安時代だったら夏だけど。

まあ、館山小町ってよく言われるからなー。貴族さんでも似合うなー。

ぜったい誰にも渡さない。僕の「はじめて」と同じくらい僕から離れられない。


相変わらずうちの廊下はギシギシうるさいな。

こんな木造建築火つければ一瞬だな。


こそこそこそこそ


「彩月元気だったかー? なにか変わったことある? お父さんお母さん元気?」

「か が み み ろ 。(なんでこんな優しいんかな)

 私はずっと元気だし、変わったことといえばお兄ちゃんが逮捕されたことだし。お父さんとお母さんはずっと働いてるし。」

「......」


こそこそこそこそ


ほんっと、この家は広いなあ。拘置所が狭すぎたかな。


手洗いとうがいを済ませていざ戦場へ。


只今、帰りました。


ぎぎぎ


「まあ、座れ。」


ダイニングテーブルを囲んで四人。気まずすぎる。

なんでこんな思いしないといけないの。ズボン脱いだだけじゃん。


「ことの仔細を報告してもらおうか。」


「今回、わたくし館山カズキは駅前でズボンを脱ぎ、公然わいせつ罪で現行犯逮捕され、1か月くらい勾留されたのち裁判で執行猶予判決がでたので帰ってきたという所存であります。」


「いつからだ。」

「え?」

「いつからだ、その変態は。」


「ええと、中学2年くらいから目覚めてしまいまして…」

「医者を紹介しておこう。」


「この、執行猶予期間中になにかした場合はわかっているな?」

「はい。」


父とは目線で、文章にすると前述の5倍くらいの会話ができた。

母には心配の目線を受けた。


あんまりここにいても気まずので、もうさっと部屋に上がる。

階段のぼる。(大人の階段はのぼれない。)


やっぱ、自分の部屋は最高だなー。

この匂い、温度。

やっぱ、この椅子じゃないと、したときに違和感残っちゃうよなー。


いざおっ始めようと、ごほごほ。

のんびりしていたときのこと。


コンコン


いつもはノックなんかしないのに

おかげで見られかけたこともある。


「お兄ちゃーん!」


いったいなんだこの時間に。

夜這いか? でも、それだと俺がする方だし。


まあ、いいか。とりあえず入ってもらおう。


風呂に入った直後だと思われる彩月は、なんか湯気出てたし、もっと薄着だった。


「お兄ちゃんに聞きたいことあるんだけど。」

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