第2話 帰宅途中

「ここら辺で。」


最近はシートベルトですらいろいろ考えちゃうからついてよかった。

うん、締まり具合がいいね。


5秒前に上がってしまったメーターを見る。ていうか高くない??

おかしいだろ、壊れてんのかこれ。信号待ちのときもなんか増えるし。


ていうかこいつ絶対遠回りしただろ。


まあ、こいつとか言うのはやめて、僕がイタ客じゃなくてよかったねっ☆

でもでも、なにが、「早い方でいきますねー。」だ。

僕のほうがここら辺の道知ってるに決まってるだろ。

なに知ったかしてんだよ。小銭稼ぎしすぎ。


ええと、笑顔を作って。そう、スマイルスマイル。スマイリングシンデレラ。


諭吉をおもむろに一枚取り出して肘掛けに置く。


「構いませんよ。」


キザなセリフを言ってみた。

人生で一回は言いたいセリフランキングを作れば、5位くらいにはきっと入る。


さーて、第三位! 「ここは、僕が。」

    第二位!!  「きっと僕は、君と相性がいいと思うんだ。一目見ただけでわかる。試してみる?」


    第一位!!! 「君の中にぶちこみたい!」



ごほごほ。反省はしてません。


だいたい、諭吉が必要な距離なんて、電車かバスだと思うでしょ?

ノンノン。甘い甘い。

僕がそんなのに乗るとなにが起こるかわかったもんじゃないのさ。

両手つり革でもどうにかして君にタッチ!

冤罪でお縄頂戴しちゃう。まあ、冤罪じゃないかもだけど。


★重大報告★

21年生きてきて、一回も公共交通機関で触ったことはない!


真の変態というものは見たらだいだいわかるもんなんだよ。

柔らかさ、クッション性、大きさ、重さ、経験、、、etc

わざわざ、触るなんて勉強が足りないな、初学者ども。

触って、変態として全国に名を売りたいならもっと勉強すべし。


僕は、そんなリスクを犯すようなことはしないさっ☆

(館山カズキさん、執行猶予判決でも、ちゃんと前科は付きます。就職とかで困らなければいいですね。ご健勝お祈りしています。)


じゃあなんで、家族の迎えは来ないのさー


ごめん、忙しいって絶対忙しくないやつだよね。

一族の恥とか言われてたらどうしよう。カズキ泣いちゃう。

ちょっとズボン脱いだだけじゃん。JRがだめなのか?

次は私鉄でやってやろう。うん。それがいい。


はー。

シャバの空気は最高だな。(とりあえず言いたいだけ。)

あんまスーハースーハーしてたら。小学生が集まってきた。

余計にスーハースーハー。


そろそろ、真面目カズキモード。

古めかしい家だ。達筆で書かれた「館山」の表札が見える。

こんなのを書いた厳格そうなひいおじいちゃんとかも、ちゃんとやることやってんだろうな。こちとらまだだってのに。

いけない、いけない。真面目真面目。


どんな謝り文句にしようかと考えていたけど、あまりに人の目が多い。

そんなに僕は魅力的??


しゃーない。とりあえず入るか。


「ただいまー!」

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