第75話 結晶・改
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075_結晶・改
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家に帰ると、アイカがご飯を作っていた。
「お帰りー」
「ただいま。今日のご飯は何かな?」
「今日はハンバーグだよ」
「おおおー! ハンバーグ!」
「お兄ちゃん。ハンバーグ好きだよね~」
「カレーも好きだよ!」
僕は庶民なんです!
「もうすぐできるから、手を洗って着替えてきてねー」
「ほーい」
美味しいハンバーグを食べて、可愛い妹のアイカと楽しいお喋り。
アイカは会社に慣れて、最近は表情に余裕ができた気がする。
「あ、そうだ。今度うちの会社で、安住製作所の仕事をするんだって」
「そうなの? どんな仕事?」
アイカの会社は電子部品の設計製造を手掛けていると聞いていたけど、アイカがその中でどういった仕事をしているのか知らないや。ここでしっかり聞いておこう。
「うちは電子部品メーカーで、なんでも新しい装置の電子部品の設計と試作を依頼されたそうよ」
「僕はあまりスマートメタルのことは分からないけど、それが継続した仕事になるといいね」
可愛い妹が勤める会社だけど、僕は口をださないからね。
「うん。今をトキメク安住製作所の仕事だから、皆気合が入っているよ」
「今をトキメクって(笑)」
「何言ってるの、お兄ちゃん。安住製作所といえば、今や優良企業の代名詞よ。何せ国が相手で、数千億の予算が通っているのよ。そこにうちの部品が採用されたら凄いことなんだから」
「お、おう。なんで僕よりアイカが熱いんだよ?」
「お兄ちゃんが無頓着すぎるのよ」
そうか、僕は無頓着なのか。
安住製作所の仕事は結晶を卸すだけと思っているからかな。
「ところでアイカはどんな仕事をしているの?」
「私は設計アシスタントね。CADで部品の設計図を描くの。最近やっと慣れてきたの」
僕は機械のことはさっぱりだけど、アイカは昔から機械に強かったもんね。
大学も理系の学部だったけど、まさかアイカが設計をしているなんて思ってもいなかったよ。我が妹ながら、凄いものだ。
「凄いな。アイカが設計した部品がスマートメタルに使われるんだね」
「安住製作所の仕事はさすがに無理よ。私はまだアシスタントだから、既存の製品のマイナーチェンジを任されるのがやっとだわ」
「アイカならやれる! がんばれ!」
「もう、お兄ちゃんは適当なことばかり言うんだから!」
アイカにとってやり甲斐のある職場そうでよかった。
食後は僕の部屋で、お待ちかねのあれだ。
目の前に置いたレヴォリューションブック。
「よし、やるぞ!」
気合いを入れる必要はないけど、なんだか力が入る。
レヴォリューションブックを開く。わけのわからない文字がびっしりと書いてある。
そのページの上に手を置くと文字が輝き出して蠢く。その文字がまるで蟻のように僕の腕を上って来きて、体中に広がっていく。
痛くはないけど、ちょっとだけ不快感がある。そんな感覚を感じつつ待っていると、体中に文字が染み込んでくる。
「ふー……終わったか」
パワーアップした『結晶・改』の使い方は何となく理解できる。
「あ……」
新しく追加された能力に僕は絶句する。
「マジか~。凄いぞ、これ」
『結晶』は『魔眼』が必要だけど、かなり凄い特殊能力だ。人や魔物、果ては重力まで結晶化してしまう。
今まではその魔物の生命力を封じた生命結晶は、魔石の七倍の力が封印されている。それがスマートメタルのエネルギー源になっているのは、説明するまでもない。
重力を封印した重力結晶は、指向性重力制御システムによってスマートメタルの動きを補助している。
パワーアップした『結晶・改』の能力は、封印エネルギーの効率が良くなった。今まで七倍だったのが、パワーアップしたことで一〇倍くらいになったのではにだろうか。
重力にしても同じで、封印できる効率が上がったことで五割くらいアップしているようだ。
さらに回復効果も上がっているし、『SFF』の吸収効率も上がっている。
「しかも特殊能力まで使用できるようになるのか……」
今までは人や魔物が持つ特殊能力を結晶に封印することはできても使うことができなかった。それが今回使うことができるようになった。
これは大きい。僕の収納の中には三バカと昇級試験の時に襲ってきた三人の特殊能力を封印した結晶がある。
それにワイバーンの飛ぶ力を封印した結晶もある。
これらの結晶から特殊能力を覚えることができるというものが、今回追加された効果だ。
「凄すぎないか、これ?」
僕は他人から特殊能力を奪うだけでなく、それを自分のものにできるようになった。レヴォリューターたちからしたら、明らかに天敵だ。
「これ、誰かに知られたらヤバいよね?」
考え方を変えてみる。
現在僕が持つ特殊能力は、『結晶・改』『魔眼』『時空操作・改』『サハギン王・改』『テキスト』の五種類。
上位シーカーだと複数の特殊能力を持っていると聞くけど、実際にどれくらい持っているか僕は知らない。
それでも六種類も特殊能力を持っているのは多いと思う。それがもっと取得できるのだ。もう、最強じゃないか!
結晶に封印した特殊能力は、僕が使うことで他人に覚えてもらうこともできる。クランメンバーに色々な特殊能力を覚えてもらうのもいいだろう。
これはとても大きなことだけど、僕の頭じゃどういった利用ができるか多くは想像できない。こういう時は頭だけはいいヨリミツに相談してみるのが一番だ。
「もしもし、ヨリミツ? ……うん、僕。今度安住製作所に行った時にちょっと相談があるから、時間を作ってくれるかな。……うん。よろしくね」
これでよし。あとはヨリミツの判断を聞いて、上手いことやればいい。
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今日はフウコさんがクランハウスにやってくる日。
アイカと一緒にマンションを出らた、すぐに到着。今は多目的ホールでコーヒーを飲んでいる。
「美味しいな、このコーヒー」
皆がコーヒー好きだから、高級なコーヒーメーカーを入れたとアオイさんが言っていたっけ。
「「リオンさん。おはようございます」」
「ミドリさん、アオイさん。おはよう」
二人もコーヒーを持って僕の前に座る。
そこにアズサさんとアサミさんもやってきて、その後ろからルカが眠たげな顔でやって来る。
ルカはダンジョン暮らしが長かったため、帰る家がないと言う。それまで暮らしていた賃貸マンションとかは全部解約しているらしい。
親御さんは北海道で暮らしているらしいけど、北海道に帰るつもりはない。このクランに加入するということで、空いている部屋に昨日から住み着いたんだ。
「皆、おはよう」
「「おはようございます。リオンさん」」
「おはよう」
ルカは朝が弱いみたいで、ダンジョンの中で出会った時のような鋭さがまったくない。
「昨日はルカさんの新規加入があって忘れていたのですが、報告があります」
皆が座るのを待って、ミドリさんが話があると口を開いた。
そういえば、昨日は嬉しそうにしていたね。
「何かな?」
「昨日は花ノ木ダンジョンの第八エリアで隠し通路を発見したんです」
「隠し通路を発見するなんて、凄いじゃないか」
「魔物は少し強かったですけど、宝箱を三つも発見しました」
宝箱からはアジリティブーツが一足、バトルスーツが一着、風の杖が一本出たらしい。
「アジリティブーツはスピードが上昇する効果があって、私が使うことになりました」
『短剣二刀流』を持つアズサさんが速度上昇の効果があるアジリティブーツを使うと自慢げに話した。
「バトルスーツは私。防御力が高く、状態異常になりにくい」
アサミさんのバトルスーツは、かなり丈夫で防御力のある不思議な生地の全身タイツのようなもらしい。このバトルスーツの上に鎧をつけることができて、状態異常に耐性があるらしい。かなりいいもので、僕も欲しいくらいだ。
「マジックワンドは私が使います。風による攻撃の威力が上がる効果があります」
『風操作』を持つミドリさんが風の杖を使う。効果を考えれば、当然の選択だね。
「いい感じに戦力アップができてそうだね」
「はい。これもリオンさんに隠し通路の見分け方を教えてもらったからです。ありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
「そんなことないよ。これは三人が努力した結果だからね」
装備が良くなるのはいいことだ。
花ノ木ダンジョンは海とか大河とかがフィールドだから、なかなか探索が進まないダンジョンなんだけど、三人は第八エリアまで進んでいる。
三人のシーカーとしての潜在能力が高いからだね。
「船は小型のものだよね?」
「小型ですけど、改造が色々されているものです。収納袋の容量がかなり取られてしまいますが、なんとか持ち運びができるサイズの船ですね」
船は花ノ木ダンジョンで活動していたシーカーから譲ってもらった。これまでに複数のシーカーの間を渡り歩いた船で、清州支部が仲介して手に入れたものだ。
これまでの持ち主たちが色々改造していて装甲強化は当然で、エンジンもかなりの馬力になっていて、ソナーなどもついているらしい。ダンジョンの中でしか使わないから、地上ではできないような改造が普通に施されているものだと聞いている。
「しかし第八エリアか。花ノ木ダンジョンは第一〇エリアまでだから、完全踏破までもう少しだね」
「「「はい。絶対に踏破します!」」」
三人なら完全踏破も時間の問題だと思う。無理せずがんばってね。
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