第46話 試作四号機、五号機

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 046_試作四号機、五号機

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 今日は安住製作所に出社している。週に一回だけなんだけど、出社でいいのかな?


「ミドリさんはどう?」

「お姉ちゃんはすっかり元気になりました。でも、お父さんとお母さんが、ダンジョン探索を許さないんです」

「ご両親の気持ちも分からないわけではないかな」


 ミドリさんは家から出られないらしい。あんなことがあったから、ご両親の気持ちも分からないではない。

 アサミさんとアズサさんも、親からシーカーを辞めるように言われているらしいけど、三人はシーカーを続けるつもりらしい。

 三人がシーカーを続けるには、ご両親をしっかりと説得して納得してもらわないといけないだろう。


 結晶の納品が終わったから、新型機の開発状況の確認だ。これでも僕は役員だから、少しくらいはそういうことを気にしている。


「あれ? 二機?」


 試作四号機は一機のはずだけど、スマートメタルが二機ある。


 一機は重厚なフォルムで脚部と腰に箱型の武装がついていて、両肩に凹型の一五〇センチの棒がついている。

 以前、試作四号機は中距離支援機だと聞いたことがある。この機体はその試作四号機だと思う。


 もう一機はかなりスマートなフォルムで、初めて見た時のスマートメタルに近い。武装は左腕に固定されている丸盾くらいしかない。

 盾があるということは、接近戦用の機体なのかな? でも、接近戦用の機体の開発をしているとは聞いてなかった。


「よう、来たか」


 ヨリミツが手を挙げて近づいてきた。


「この機体は何?」


 挨拶もそこそこに、スマートなほうの機体について聞いた。


「そいつは試作五号機だ」

「え? 四号機だけじゃなかったの?」

「すぐに五号機の予算が下りたから、同時進行で製作していたんだ」

「知らなかった」

「この五号機は接近戦用として初期型を元に製作したものだ」


 初期型に似ていると思ったら、あの機体を元に作ったのか。


「初期型に似ているが、出力はかなり上がっているぞ」

「へー」


 ヨリミツが細かい話を始めた。こうなったらしばらく止まらない。適当に聞き流す。


「武装はエネルギーソードと電磁ワイヤーだ」


 僕の興味がある話になった。


「エネルギーソードって、どういうものなんだ?」

「特殊合金を振動及び高温加熱したもので、これは自衛隊と伍菱重工業いつびしじゅうこうぎょうが開発したスマートメタル専用の接近戦用武装だ」

「電磁ワイヤーは?」

「それはウチが開発した武器で、ワイヤーでモンスターを拘束したり、引き切ったりする武器だな。追加効果として電気ショックを与えることができる」


 随分と楽しそうな武器じゃないか。


「でも、それだとかなり多くのエネルギーを消費するんじゃないのか?」

「お、リオンなのに良いところに気づいたな」

「舐めんなよ」

「ははは。エネルギーに関しては、エネルギーボックスを脱着型にした」

「エネルギーボックス?」

「実際に見たほうが早いだろ」


 ヨリミツが指示すると背面の箱が外れて、別の箱を装着した。あの箱がエネルギーボックスということらしい。


「一個のエネルギーボックスには、生命結晶が四個入っている。それを本体と武装のエネルギー源としてそれぞれ二個装着できるようにした」


 エネルギーボックスは一〇センチ四方の小型な箱で、僕でも持てそうだ。


「つまり、四個のエネルギーボックスがついているということか……ん、数が合わないけど?」


 しかし、今のヨリミツの説明では、四個のエネルギーボックスが装着されているはずだけど、全部で八個ある。


「四個は予備のエネルギーボックスだ。一個で二時間の連続稼働が可能になっているから、予備を全部本体用に使ったら一二時間の連続稼働が可能になる」


 一二時間も・・・・・稼働できると言うべきか、それとも一二時間しか・・・・・・稼働できないと言うべきか。


「その顔は、たった一二時間と思っているんだろ」

「まあね」

「エネルギーボックス一個は大した重量じゃないから、補給用のスマートメタルを運用することで数十時間の連続稼働が可能になるぞ。その場合はパイロットのほうが疲弊して使い物にならなくなるだろうがな」


 補給があれば長時間の運用が可能になるわけか。それはシーカーも同じことだから、そこまで問題にはならないかも。


「五日後にこの二機の実戦試験が行われる。それにはリオンも参加だからな」

「実戦と言っても、どこでするんだ?」

「ダンジョンに入る。枇杷島ダンジョンのサハギン砦で試験することが決まった」

「えぇ……枇杷島ダンジョン……」


 最近、なぜか枇杷島ダンジョンに縁があるんだけど……。

 あんなことがあったから、ちょっと入りづらい。


「最近、シーカー殺人事件があって、枇杷島ダンジョンに入るシーカーの数が減ったらしい。おかげでスムーズに許可が下りたと社長が言っていたぞ」


 あの三バカの一件以来、枇杷島ダンジョンは縁起が悪いと言うシーカーが、他の支部に移籍したらしい。

 元々清洲支部に所属しているシーカーはかなり多かったから、多少減ってもあまり影響ないと聞いている。人の噂も七五日と言うから、それくらいしたらまた増えて行くと大水支部長が言っていた。


「ウチだけじゃなく、自衛隊からも多くの見学者が来るらしいぞ」

「そこで猛烈アピールして、量産化させようというわけか」

「その通りだ。社長が気合を入れていたし、シーカー協会に護衛も頼んでいるらしい」


 スマートメタル商品を売ろうとすれば、こういうデモンストレーションが必要なのは僕でも分かる。

 しかし、ダンジョンに入るのか。

 実際にスマートメタルがどれだけできるか、見てみたい。呼んでもらえて嬉しいくらいだ。


「僕は直接枇杷島ダンジョンに向かうよ」

「構わないが、当日はスーツで来いよ」

「はぁ? ダンジョンに入るのにスーツとかあり得ないだろ」

「そのために多くのシーカーを護衛として雇っているんだ。問題ない」


 アオイさんにスケジュールの調整をと言うと、すでに予定を組んでいると言われた。

 何日か前にこの予定を入れたと聞いたらしいけど、その頃は枇杷島の後始末でちょっと忙しかったから聞き流してしまったようだ。


「で、あっちの四号機は支援型なんだろ?」

「ああ、真空砲を四門と、荷電粒子砲レールガンを二門を備えた支援機だ」

荷電粒子砲レールガンって、なんか凄そうだな」

「実際に凄いと思うぞ。試射の結果だと一〇メートルのコンクリートを簡単に貫通したからな」

「それは凄いな……」


 一〇メートルのコンクリートを貫通する攻撃は、五級シーカーでも持ってないんじゃないかな。

 僕のドリル弾とどっちの威力が高いんだろうか? 試す気はないけど、実戦試験が楽しみだ。



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