第43話 探索隊(二)
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043_探索隊(二)
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四階層にエリアボスのオークナイトは居なかった。怪しい罠やハグレのような魔物も居なかった。
冒険者とも何度かすれ違ったが、お互いに距離を取ってすれ違い、後をつけてくることもなかった。
ダンジョンにもシーカーにも、今のところ不審なところはない。
三階層へ下りてくまなく探索するが、ここも問題ない。二階層も問題なかった。
女性六人と男一人の僕たちに、変な目をしてくるシーカーは居る。でも、それだけで、すれ違ったシーカーたちに怪しいところはない。
一階層への階段を下りて、少し休憩をとることにした。常に気を張り詰めていると、精神的に疲れるからリセットする。
「コーヒー、飲みますか?」
缶コーヒーを出して見せた。
「今、どこから出したんだい?」
ナナミさんが驚いて聞いてきた。秘密と言ってもいいけど、『時空操作』のことを知っていると、収納のことに思い至るのは簡単だろう。
「もしかして『時空操作』はアイテムボックスのようなこともできるの?」
「そういう特殊能力ですから。コーヒーはブラックとカフェオレがあります。他にペットボトルのお茶もありますよ」
僕は微笑んで答え、缶コーヒーとお茶を出して並べた。
ナナミさんはブラックを取って「ありがたくもらうわ」
イザミさんはお茶を取って「ありがとうね」
アイコさんはカフェオレを取って「いただきますね」
アスカさんはカフェオレを取って「サンキュー」
アキナさんはブラックと取って「もらうね」
メリッサさんは水がいいと言うので、ペットボトルの水を出すと「感謝」
僕とアテナの剣のメンバーは、それぞれ喉を潤した。
休憩を三〇分とって、探索を再開した。女性ばかりのパーティーなので、もっとお喋りするのかと思ったけど、あまり喋らずじっと体を休めていた。
休憩するときはしっかり休憩する。そういった姿勢なんだと思う。
僕の場合、マンションに帰って休めるので、こういったことはない。お喋りの相手もいないけどね。
「さて、一階層をくまなく探索しましょう!」
ナナミさんが気合を入れ直した。緩んだ気が引き締まった。こういうのがリーダーの役目なのかな。
「リオン君、よろしく」
「はい」
斥候のアスカさんを先頭に、一階層を探索する。魔物と戦うのが目的ではないので、戦闘はあまりしない。してもオークでは相手にならないけど。
「罠はシーカー協会が出している情報通りですね」
「ハグレも今のところは居ないわね」
ナナミさんと簡単に情報を共有する。一階層もほとんど探索が終わり、隠し通路へと向かう。
「きゃぁぁぁっ」
もうすぐ隠し通路に到着すると言う時、悲鳴が聞こえた。
「急ぎます」
僕たちは警戒しながらも、足を速めた。そして角を曲がって隠し通路が見えるところに来た時、隠し通路に少し入ったところに六人のシーカーの姿があった。
魔眼を切って肉眼で見ると三人が立って武器を持っていて、三人は倒れている。
「様子がおかしいわ」
ナナミさんが警戒するように、厳しい声を出した。
僕たちは警戒しながら、その六人に近づいていく。
「私たちはシーカー協会から依頼を受けて、ダンジョン内を探索している者よ。そこの三人、武器をしまいなさい」
ナナミさんの声を聞いても三人は武器をしまわない。
近づいて分かったが、武器を持って立っているのは僕にトレインを擦りつけたあの三人だ。
倒れているのは女性のように見える。
「っ!?」
あれはまさか……ミドリさん?
近づいて分かったが、倒れているのはミドリさん、アサミさん、アズサさんの三人だ。
なんで三人が倒れているの?
思わず走り出そうとした僕の手をナナミさんが掴んだ。
「離してください。ミドリさんが倒れているんです」
「勝手なことは許さないわ。リオン君は後方へ下がって」
「でもっ」
「これは命令よ。あの三人のことは、私たちに任せてちょうだい」
「くっ……」
ミドリさんたちのことは気になる。だけど、ナナミさんの言うことは分かる。
「分かりました。ミドリさんたちをお願いします」
僕はアテナの剣の後方に下がった。
奥歯を噛み、ナナミさんたちに任せることにした。
「へへへ。またカモがやってきたぜ、サダジ、ミツオ」
「なんだ、今日は客が多いな。へへへ」
「カズアキ。万年一〇級のリオンが居やがるぜ」
「おお、本当だ。おい、役立たず。女に護られてここまで来たのか? ギャハハハ」
「おい、無視かよ、クズ野郎が」
三バカが何か言っているけど、それどころではない。ミドリさんたちは……まだ生きている。
今ならまだ間に合う。早く……。
「あなたたちが、その三人を殺したの?」
「「「ギャハハハ」」」
ナナミさんの問いかけに、三人は顔を見合わせて笑い出した。
「何がおかしいのよ!?」
「こいつらは
カズアキと呼ばれている金髪が、アサミさんの頭を踏みつけた。
「おうよ。簡単に殺したら面白くないじゃんか」
サダジと呼ばれている赤毛が、アズサさんの脇腹を蹴った。
「泣き叫ぶところを見ながら殺すのが快感なんだよ」
ミツオと呼ばれている茶髪のロンゲが、ミドリさんの背中を踏みつけた。
こいつら、狂っている。
「最近、多くのシーカーが行方不明になっているわ。あなたたちがやったの?」
「なんのことかな~」
カズアキがにたにたと気持ち悪い笑みを見せる。
「その三人を見れば、あなたたちの仕業なのは、明白よ。今すぐ武器を置いて、捕縛されなさい」
「「「ギャハハハハハハハッ」」」
耳障りな笑い声が、鼓膜を振動させる。
「これは最後の警告よ。今すぐ武器を床に置きなさい。あなたたち三人を拘束します。手向かえば、痛い目を見ますよ」
この三人は僕にトレインを擦りつけるだけでなく、こんなことをしていたのか。
僕がシーカー協会にそのことを報告していれば、ミドリさんたちはこんなことにならずに済んだかもしれない。
もしくは、僕がやり返していたら……。
「やれるもんなら、やってみろ。てめらじゃ、俺たちを捕まえるなんてできねぇけどな。ギャーッハハハハハ」
「「いいぞ、カズアキ! もっと言ってやれ! ギャハハハハハ」」
「抵抗すると言うのね。いいわ。皆、殺しても構わない。三人を止めるよ」
ナナミさんがそう言うと、アテナの剣のメンバー全員が武器を構えた。
「早くしないと、この女たちが死んじゃうぞ。ギャハハハ」
「ほらほら、死んじゃうぞ~。ギャハハハ」
「腕だけじゃなく、足も折っちゃおうかな~。ギャハハハ」
三バカはアテナの剣が三級パーティーだと知らないようだ。僕も知らなかったので、人のことは言えない。
でも、彼らのように七級の昇級試験に落ちているようなシーカーでは、太刀打ちできないのが三級シーカーパーティーなんだ。
三バカは隠し通路だった場所から出てこない。僕がいる通路よりも細くなっていて、大勢の戦闘には向かない。
あの三バカがそんなことを考えて、誘い込もうとしているのか? ん、誘い込む? なんだ、この違和感は。
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