第42話 探索隊(一)

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 042_探索隊(一)

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 枇杷島ダンジョンで異常が起こっているという情報は、昨年末から公開されていた。八級と七級シーカーには、受付の人たちが声掛けをして注意を促してもいた。

 僕はそういったことに無頓着だったと反省する。


 そう言えば、ミドリさんたちがダンジョンがなんとかとか言っていたような……。その時はアオイさんと経費の話をしていたので、身を入れて聞いてなかった。あの時に、ちゃんと聞いておけば良かった。

 連絡したけど、ミドリさんたちに電話もメールも繋がらなかった。ダンジョンに入っていると、連絡できない。

 アオイさんに聞いたら、昨日から四日の予定で枇杷島ダンジョンに入っているらしい。ちょっと不安だ。何もなければいいけど……。


「久しぶり」

「お久しぶりです、メリッサさん」


 本部から派遣されたシーカーは、アテナの剣という六人パーティー。

 三級シーカーが四人、四級が二人の構成だ。この六人で三級パーティーとして活動しているらしい。

 その中に僕の五級昇級試験で試験官をしてくれたメリッサさんが居た。今日もゴシックな服装をしている。


 メンバーは三級シーカーで前衛(格闘)のメリッサさん。

 三級シーカーで前衛(剣)のナナミさん。茶髪のショートボブの女性。

 三級シーカーで中衛のイザミさん。何がとは言わないけど、大きい。

 三級シーカーで後衛のアイコさん。清楚な感じの黒髪の女性。

 四級シーカーで斥候のアスカさん。活発な感じを受ける女性。

 四級シーカーで前衛(大剣)のアキナさん。僕よりも背が高く、モデルさんのような女性。


 このクラスのパーティーになると、斥候を含めたバランスが大事になると聞いたことがある。一人で色々できればいいが、そういったシーカーは少ない。だから、パーティーを組んでお互い助け合うのだとか。


 あれ……そう考えると、僕は一人でなんでもできちゃうよね?

『魔眼』で索敵や罠、それに隠し通路の発見ができる。

『時空操作』は攻守共に有効で鉄壁の空間の壁が出せ、ドリル弾という必殺技もある。移動だって便利だし、大量の荷物も運べる。

『結晶』は魔物の生命力を封印できる。最近は部分的な力も封印できるようになった。それに、生命結晶を使うと怪我の治療もできる。

 これ、ソロ(ボッチ)をずっと続けろということなの?


「このカカミ君は五級だが、これまでに隠し通路を五カ所も発見している。探索は得意中の得意だ」


 プレッシャーをかけないでくださいよ、大水支部長。


「頼もしいね。明日はよろしく頼むよ、カカミ君」

「カカミは言いにくいでしょうから、リオンでいいですよ」

「助かるよ、ちょっと舌を噛みそうになったんだ」


 ナナミさんは三五くらいの女性で、このアテナの剣というパーティーのリーダー。アテナの剣は女性ばかり六人組で、さらに上を目指せるパーティーと大水支部長が言っていた。

 二〇代前半のメリッサさんから、三五くらいのナナミさんまで幅広い年齢層のパーティーになっている。女性ばかりでパーティーを組んだことで、こういった年齢層になっているんだと思う。男性シーカーは粗野な人が目立つからね。


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 僕はアテナの剣と共に枇杷島ダンジョンに入った。


「第四エリアに最短で行きたいの。案内をお願いね」

「それなら、転移しましょう」


 僕の転移ゲートはメリッサさんも知っているので、隠す必要はない。多分、こういった時間短縮も考えて、大水支部長は僕を案内役にしたんだと思う。


「え? 転移? 本当に転移なんてできるの?」

「ええ、できますよ。メリッサさんから聞いてませんか?」


 全員の視線がメリッサさんに集中する。


「試験官として知り得たことは、パーティーメンバーでも口外しちゃダメ」


 昇級試験の時のことをメリッサさんは口外してなかった。僕と二度と会わないかもしれないのに、律儀にルールを守っていた。こういう人は信じられる。そう思い、メリッサさんへの好感度を上げた。


 僕は転移ゲートを起動させた。水面のようなゲートを抜ければ、そこが第四エリアだ。


「僕に続いて来てください」


 僕が最初に転移ゲートを通ると、アテナの剣も一人ずつ続いた。


「ひえー、本当に景色が変わったわ」


 アスカさんの言葉に、メリッサさん以外が頷く。


「大っぴらにしてないので、他では言いふらさないでくださいね」


 絶対に秘匿したいと思っているわけではない。でも知られたことで面倒が起こることもあるので、そういうことは極力避けたい。


「分かったわ。皆もいいわね」


 ナナミさんが同意してくれて、他の人も頷いた。

 メリッサさん以外の人たちは、信じられるか僕には分からない。でも、情報が漏れたとしても、それはいずれ起こることだと思う。気にしたらダメだ。


「どういった経路で探索しますか?」

「私たちはこのダンジョンに詳しくないから、リオン君に任せるわ」

「分かりました」


 このオーク城について説明をする。全五階層のオーク城は、四階層に次の第五エリアに繋がる通路があって、オークナイトが守っている。

 最上階にはオークジェネラルがいるけど、エリアボスではない。そして一階層には隠し通路があって、そこにはオークキングが居る。


「ここはオークジェネラルが居る五階層です。シーカーには不人気なので、隠れるには丁度良い階層です。ここから下へ向かって探索しようと思いますが、それでいいですか?」

「任せるわ」


 先頭は斥候のアスカさん。僕がその後ろで道順を教えながら進む。

 現れるオークたちは、アテナの剣が瞬殺する。E級ダンジョンの魔物に、彼女たちが苦戦することはない。その光景を見ると、まったく異次元の実力なんだと感じた。

 いずれ僕もアテナの剣を超えて、もっと上に行きたい。最近はそう思える欲が出て来た。今でも十分に稼いでいるけど、それで満足したら成長しないからね。


 五階層では三組のパーティーに遭遇した。彼らが僕たちを襲ったらアウトで、後をつけてきたら判断保留。でも、三組はそれぞれの狩りに集中していた。それに、まだシーカーが原因と決まったわけではない。ダンジョンの中で何かが起こっているという線も十分に考えられるのだから。


「五階層に特に変わったところはなかったわ。シーカーについても不審なところはないわね。四階層へ移動しましょうか」


 ナナミさんの判断を他のメンバーが支持し、僕たちは四階層へ向かった。

 四階層にはエリアボスのオークナイトが居て、第五エリアへの通路がある。


「こういう城型のエリアは他にもあるけど、普通は一階層に入り口があって、最上階に次のエリアへの通路があるんだけど、変な造りになっているんだね」

「そうなんですか? そう言えば、第五エリアのゴブリン城のほうは、一階層から入って最上階の六階層に次のエリアへの通路がありますね」


 アスカさんが持った疑問は、考えたこともなかった。言われたら不思議な造りだとは思うけど、これが普通だと思っていた。


「ダンジョンの構造なんて、誰も理解できないわ。ほら、先を急ぐわよ」

「へーい」


 ナナミさんが無駄口叩いてないで進むよと、アスカさんのお尻を叩いた。



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