第4話 フィジカル測定器

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 004_フィジカル測定器

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 今日は新しい武器を買おうと思って、シーカー協会の武器や防具を売っているフロアに向かった。

 短剣は使いやすかったけど威力がなかったので、普通の剣を買おうと思う。

 売店で剣を見ていくんだけど、とても多い。剣てこんなにも色々な種類があるんだ。


「あの、初心者でも使いやすい剣ってどれですか?」

「それならオーソドックスなショートソードが使いやすいと思いますよ」


 店員さんに教えてもらったのは、刃渡り六〇センチほどの剣だった。

 ショートソードと言われる剣も材質などでいくつか種類があって、僕に勧められたのは鉄製のものだった。

 値段を見ると鉄製は八万円が最安値だった。ダンジョン内で採掘できる魔鉄と言われるものだと五〇万円もした。

 八万円ならなんとか買えるので、購入を決めた。


 剣を腰に携えた僕は、第二エリアに向かった。もちろん、地図も購入済。

 大きなバックパックを背負い、最短の道を通って第二エリアに向かったんだけど、なんとエリアボスが居た。

 エリアボスが居ると、第二エリアに行けないので倒さなければいけない。

 エリアボスは大クモと言われる魔物で、その体長は一メートルほどある。足長クモの時も思ったけど、僕はクモは好きじゃない。見ていると鳥肌出てきた。


「大丈夫だ。今の僕ならやれる」


 そう自分に言い聞かせて『時空操作』を発動させた僕は、ショートソードを転移ゲートに突き刺した。

 エリアボスは大クモと言われる魔物で、その真上からショートソードが首に突き刺さった。


 足長クモならその一撃で落命するんだけど、さすがはエリアボスなだけあって大クモはまだ生きていた。

 怒った大クモはダダダッと僕のほうに走り寄ってくる。鳥肌が酷くなる。『魔眼』を発動させて『結晶』でその命を封印した。大クモは動かなくなって消えた。


「ふー、気持ち悪かった……あれ?」


 大クモの消えたところに、魔石とアイテムが落ちていた。エリアボスでもアイテムを落とさないことが多いのに、アイテムが落ちていることに僕の頬は緩んだ。


 アイテムは瓶に入った青い液体だ。ポーションだと思われるけど、鑑定に出さないと詳細は分からない。

 そういえば、鎧と指輪はいつ鑑定してもらおうかな。僕にも『アイテム鑑定』があればよかったんだけどなぁ。

 あの二つのアイテムを鑑定に出すのは、もっと後だな。


 第二エリアは地底都市の様相を呈していた。


「うわー、凄いや」


 岩の家や岩肌に階段とかあって、それを上ったり下りたりして進むのがこの第二エリア。

 第一エリアは二年二カ月も探索していたので地図を見なくてもどこに居るか分かったけど、第二エリアはまったく土地勘がない。


 僕が階段を上がると十字路の死角からダブルヘッドラビットが出て来たので、慌てて『魔眼』と『結晶』を発動させた。

 角が多いと、こういうことが起こる。もっと近かったら、特殊能力を発動する前に戦闘に突入ということも考えられる。

 何か対策を練らないといけないと思ったんだけど、そこでいい考えが思い浮かんだ。


『魔眼』は力場を見ることができるので、建物や岩の向こう側の力場も見えるんじゃないかと。

 そう思ったらやってみないと気が済まないので、『魔眼』を発動してみる。相変わらずサーモグラフィのような光景。

 慣れないと歩くのにも苦労しそうだけど、立体的な認識はできる。


 それから『魔眼』を発動しながら進むようにした。最初は壁伝いにゆっくり進んだ。

 壁の向こうに力場が見えた。その形と数からシーカーだと僕は思った。いつでも『結晶』を発動させられるように身構えながら、彼らが居なくなるのを待った。


「壁の向こう側の力場は見えるようだから、とにかくこの『魔眼』の世界感に慣れないと」


 少し進んだところで魔物の力場を発見した。壁の向こう、約一〇メートルくらいの場所に居る。

 壁越しでも『結晶』はできるかな。やってみたら、できてしまった。

 間に障害物があっても、『結晶』は問題なく効果を発揮してくれた。


 何度か休憩を挟みながら、『魔眼』の世界を進んで魔物を倒していった。

 今日の魔石の換金額は九万二〇〇〇円。第一エリアを最短で進んだのと、第二エリアで『魔眼』に慣れるために動きが遅かったせいで魔石の数が稼げなかったのが理由。


 でも、エリアボスの大クモの魔石は、極小四級の茶色だったので、一万円だった。初めて魔石一個で一万円になった。


 また、ポーションと思われるアイテムを鑑定してもらった。アイテム一個で五〇〇〇円の鑑定料が取られるけど、今なら払える。

 鑑定結果は下級ポーションだと分かった。下級でもポーションは五万円くらいするので、これは売らずにお守りにしようと思う。


 今日はアパートに帰る前に『SFF』を測定しておこうと思う。

『SFF』というのは、special factor forceの略で、直訳すると『特殊な因子の力』となる。

 細かいことは分かっていないけど、『SFF』が多いと戦闘力が高いと思われているんだ。

 学者さんたちが調べているけど、ほとんど分かっていない力。だけど、この力を基準にしているのが、シーカー協会なんだ。


 シーカー協会には、特殊能力ではなく『SFF』を測定してくれるフィジカル測定器がある。

 縦型の日焼けマシーンのようなカプセルがそれだ。服を着たままでも『SFF』を測ってくれる。


 二カ月ほど前に測定したけど、僕の『SFF』はたったの一六ポイントだった。

 一般人が一〇ポイント前後、レヴォリューターは少なくても三〇ポイントはあると言われている。

 そして、魔物を倒したら倒しただけ『SFF』は多くなっていく。

 二年もシーカーをしていたけど、前回の数値はレヴォリューターの基準さえも満たしていなかった。


 今回は……お、二一ポイントだ! やったー! 一年で三ポイント程度しか伸びなかったのに、二カ月前から五ポイントも増えたよ。

『SFF』が五〇ポイントを超えると、九級への昇級試験が受けられるので、早く五〇ポイントをクリアしたい。


 一説では、集中的に魔物を倒すほうが、『SFF』は増えやすいそうだ。

 僕は最近になって一日に五体倒せるようになった。それ以前はもっと少なかったので、『SFF』が増えづらかったんだと思う。


 あのドラゴンとゾウを倒した時、本来であれば膨大な『SFF』が僕に入ってくるはずだった。だけど、あの時は特殊能力の『時空操作』と『魔眼』を得た。

 このように特殊能力を得ることができた時は、残念ながら『SFF』は得られない。理屈は分からないけど、そういうものだということが知られている。


 アパートに戻った僕は、溜まりに溜まった結晶を卓袱台ちゃぶだいの上に置いた。

 極小五級の魔石よりもさらに小さな小石だけど、これは全て魔物の命の結晶。

『結晶』は力を結晶にできる特殊能力なのは言うまでもないけど、解放することもできる。

 魔物の命の結晶を解放したらどうなるか。それは『SFF』が上がるんだ。

 一番弱い魔物たちの生命結晶なので劇的な上昇は期待できないけど、『SFF』が五〇ポイントを超えてくれればと思っている。


 僕は生命結晶を一つ一つ握って、解放していった。

 全部で八八個の生命結晶によって、どれだけ『SFF』が上昇したかは分からない。明日もう一度フィジカル測定器で測定すれば、どれだけ上がったか分かる。そのために今日測っておいたんだ。


 翌日、僕は真っ先にフィジカル測定器を使った。


「っ!?」


 六五ポイントだった。あの生命結晶一つで〇・五ポイントも『SFF』が増えた計算だ。

『SFF』が多ければ多いほど、特殊能力を発動していない状態の身体能力が高いと言われている。


 八級のシーカーになると、ダブルヘッドラビットなどの弱い魔物を素手で殴り殺すことができるようになる。

 最上級の特級シーカーになれば、あのドラゴンやゾウを倒せるかもしれない。もしかしたら、あの巨大なネズミさえも倒せるかもしれない。

 シーカーにとって、『SFF』は強さの基準になっているんだ。


「普通に戦っていても『SFF』は増えるし、生命結晶からも増える。これまでの苦労がなんだったのかと思えてしまうよ」


 これならダブルヘッドラビットのような弱い魔物と剣で戦えるかもしれない。そう思うと、嬉しくて仕方がない。



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