第1274話 慣れ

突然、スマホが消えた


2台持っていたが2台とも同時にだ


朝、出港してから気が付いた


ポケットにはない


リュックにもない


勿論、船内にもない


2台ともケースは白地で、カラフルにデフォルメされた太陽が大きく印刷されている


めちゃくちゃ目立つから、どこに置いていてもそれと分かる


ちなみに手元に無い(スマホが使えない)ことはどうでも良いのだが、家や事務所にちゃんとあるのかどうかが、不安だ


夕方港に戻る前に、事務所には連絡を入れておいた


事務所には置き忘れていないようだ


となると自宅


船内の片付けもそこそこに、急いでウチに帰る


だが願い虚しく、ウチのどこを探してもスマホは出てこなかった(車にも無かった)



なくなって2日経った


警察に届けるべきか、いやまだ意外なところから出てくるかもしれない、そんな葛藤の中、船に乗る


事務所に置いてあった非常用のスマホを持ってきている


はぁ~テンション上がらん・・・


ボッロボロの非常用スマホを黒いソナーの天板に置き、エンジンをかけ


・・・あった。


ソナーの上に置いてあった


2台並べて置いてあった


米軍規格の衝撃吸収・超頑丈スマホカバー(黒)


まともに買えば一つ2万もするらしいそれを、基地の友人がプレゼントしてくれたのだ


その場で付けてみろと言われ、飲んだ席で2台とも付け替えたのだ


こんなん、もう擬態やないか・・・


絶対気づかへんわ


自分のスマホはカラフル太陽、と思いこんでいるから全く気付かなかった


「ほんま慣れは怖いで。永遠に白地に太陽や思うてたからな自分のスマホ。せやけどこうやって自然と足向いて、気が付いたら座って飲んどるんやから。これも慣れやで。全て君の魅力やけどな、ぁっ・・・あおいちゃん」


「ふん、またテキトーなことを」


未だ溝は深く。(♯126)https://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16816927861222652804

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