第1253話 サザエさん1話未満

先日、赤坂のホテルにチェックインしたあと、18時半ごろ外出する


「うおぅ・・・寒いな」繁華街に向かう通りを歩いていると


黒く長いベンチコートを着た茶髪の兄ちゃんが


「あっこんばんは~寒いんでカイロで~す」


そう言って俺に差し出してきたのだが、俺は一旦素通りしかけて


"いや、いまのカイロ袋から出してなかった?"


立ち止まり振り向くと


「もう温まってま~す」


手に持ったカイロを見せてくる


開封したカイロ渡すんかい。


なんじゃそれ・・・とまた歩き出したのだが


よくよく考えると袋のまま貰っても、開封してから熱を発するまでには時間が掛かる


それを、既に温まった状態で渡すのは理にかなっているじゃないか


逆にそれは心配りではないのか


5歩ほど進む間にそこまでを考え、やはり貰っておこうと踵を返す


手を差し出しながら兄ちゃんに近づくと


「もうダメですよ無視されたし」


(´∀`;)・・・。


「冗~談です、お店に来てくれたらあげます」


「ごめんな、先急ぐんや。代わりにこれ。さっき当たったから」


チェックイン前に立ち寄ったパン屋さんの、くじ引きで当たった3等の500円券を財布から出して渡す


「えっ?このパン屋いつも寄るんです!良いんスかマジで?ありがとうございます!」


カイロをくれた


のは良いが・・・あいつ一体、いつから持ってたんやろか


5分ほど歩くとカイロは冷たくなった

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