第1241話 深夜の電話

スマホのブゥ〜ンブゥ〜ンと振動する音で目が醒めた


えええ・・・何時?


テーブルの時計はAM2時半を回ったところだ


誰やねん・・・スマホを掴む


おや?顔見知りのラウンジの女性・KちゃんからLINE電話だ


しかし彼女とは特に絡みがあるわけでもない


なのに電話?こんな時間に?


急を要することなのだろうか


半分寝ぼけたまま通話ボタンを押す


「はい・・・Tですが」


電話の向こうではしきりに鼻をすする音


そのうち「待って」と聞こえ


スマホを置く「ガッ」という、耳障りな音が響いた


そして遠くでブーッと鼻をかむ音


「もしもし?もしもーし?」


話し掛けるが聞こえていないのだろうか?


すると今度は


「あーっもう!◯▲◻︎×凹凸✖︎✖︎!!」


ヒステリックな声が聞こえたが意味不明


その後ガサゴソ音がして、再度スマホを手に取ったようだ


「もう信じられない!」と言う


酔ってるのか?


「なにがー?どうしたーん?おれTやけどー?」


そう返すと突然ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・電話は切れた


翌日、AM10時。


『昨晩はごめんなさい!友達と間違えてしまいました・・・』LINEが入る


「それは良いけど何か深刻なことがあったのかとびっくりしたわ」


『ホントごめんなさい!いつもあの時間話している友達だと思い込んで、トーク履歴の返信で電話を掛けたらTさんでしたぁ』


確かに最近、用事があってLINEした気もする


「なら良いけど泣いてるのかと思って。信じられないっ!て叫んでたやろ笑」


『ああ!わたし猫飼ってるくせに猫アレルギーで鼻水が止まらないんです。あと、わたしの布団でおしっこしてるの見つけて・・・』


あ、そんなこと?


深夜の間違い電話に安眠を妨害されただけだったか。


それから数日後、客を連れてその店に伺った


この日、Kちゃんは見当たらない


いつも俺に付いてくれるY嬢に尋ねてみる


「Kちゃんおらんみたいやな」


彼女はあっ、という顔をして「後でゆっくり・・・」と言いにくそうだ


何かあったのか?


時が過ぎ、連れの客は付いた別の女性と盛り上がっている


ようやくY嬢が小声で教えてくれた


Kちゃんが居た前の店でストーカーまがいの客がいて


移ったこの店にも付いてきてしまい、ずっと悩んでいたそうだ


ママを始めスタッフは「警察に届けたら?」と勧めたが


Kちゃん本人はあまり乗り気でなく、かと言って皆さんに御迷惑掛けるのも・・・ということで


つい2日前に辞めたとのこと


「えっ、そのストーカーは客として来てたってこと?もしかして俺も知ってる?」


「・・・・」


「Oさん?」


Y嬢は無言で頷く


「Yちゃんさぁ、OさんとLINE交換したりした?」


「はい、してます」


「あの人のプロフィールってどんな名前?」


「ちょっと待って下さいね・・・えー『やまぴー』です」


「やまぴー?それってローマ字?」


「これです」


彼女が見せてくれたOのLINE名は『YAMA.P』となっている


ちなみに俺の登録名が「MASA.T」だ


はっは~んそれで間違えたんだな?


いつも夜中に電話していた友達とはOだったんだろう


なるほどね・・・ストーカーなのか彼氏なのか、わからんな


いちいち様子見に来られるのが嫌だったのか・・・まあそんなとこだろう。


ひとり納得顔の俺にY嬢が「何なんですかぁー?教えてくださいよぉ〜」と迫ってくるが


もうどうでも良いことなので話題を変えた



それから2週間ほど経った。


赤坂で散々飲んだあと、午前2時過ぎにホテルの部屋に戻ってきた


戻って来はしたが、壁を伝いながら辛うじて辿り着いた次第


あかんもう死ぬ・・・

とりあえずシャワー・・・


フラフラのまま全裸になる


バスルームに入ろうとして、"その前にウ○コ・・・"トイレに腰掛ける


上瞼は閉じかけ、白目を剥くほど酔っていたのだが、明日の予定だけは確認しておきたい・・・


なんとかスマホを開く


メモやカレンダーを片っ端から開き


これちがう・・・これは終わった・・・などとチェックする合間ずっと


酔いのため俺の鼻息は乱れ、さらに便座でリキんでいるため


ふふぅんーふふぅんーと、息というか声というか、漏れ続けている


突然、画面に何か映った


ん?

んん??


ベッド?布団?

なに?部屋?


・・・誰の?


あっこれLINE?

LINEのビデオ通話?


9・・・10・・・11・・・


えっ?

通話中??


・・・えっ?!


慌てて電話を切る


何?誰?

何ででこんな時間に?

夜中2時回ってるぞ?


いったい誰が掛けてきたのか?

目を見開き、LINEの通信履歴を見る


えっYちゃん??

AM2時半だぞ?


いやいや何か緊急の用だったかもしれん・・・


何度もミスタッチしながら、辛うじて

『電話くれた?』とだけLINEを送る


間を置かず彼女から通常の着信


「はい」


「ちょっとTさ~ん!あれダメ〜!超ウケたけど~!今日ね〜Lちゃん来て泊まってんの~」


「あ、そうなんですか?」


「も〜2人で超ウケた〜!」


「いや、あの〜さっきLINE電話くれましたよね?」


「ちがう逆逆〜!電話掛かってきて、見たらハダカでふぅんふぅん言ってる人が映ってて!変態や〜!! って騒いでたら白目のTさん!!あれ何してたの?オカズさがし?!笑」


( ̄▽ ̄;)

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