第1240話 システム

さてこれから1週間、本土での年末挨拶回りだ


初日、釣り客の社長さん宅にお邪魔していたのだが


21時頃、そろそろお暇(いとま)しますと切り出すと


「もっと釣りの話をしたいから泊まっていけば?」と勧められ


結局、朝方7時過ぎに社長宅を出た


駅まで車で送ると仰っていただいたが、酒を抜きたいので冷たい風に当たることにした


15分ほど掛かるJRの駅まで歩いたのだが、めちゃくちゃ寒い・・・


駅前のロータリーが見えてくると、ロータリー脇に「石焼き芋」と書いた軽トラが止まっている


乗り捨て・・・ではないな、運転席に人が見える


だが青いトレーナーを着た運転席のオッサン、大きく助手席側に傾いて熟睡しているようだ


いや・・・


エンジンは掛かってないが、まさか車内で一酸化炭素中毒で死んでいるのではあるまいな?


更に軽トラに近付く


あ、運転席と助手席の窓が半分ずつ開いてるのか・・・てかこんな寒い中、大丈夫か?


まさか一晩中、窓開けて寝ていたのだろうか家にも帰らず・・・あっ車が家なのか?


更に近付くと、口をカーッと開けて爆睡していたオッサンが突然


「ぐわっ?!」


真っ赤に充血させた目を見開いて跳ね起きた


「さむうっっっ!!!」


慌ててオッサンが両窓を上げる

俺は丁度その横を通り過ぎる


ところがその軽トラ、一体どのようなシステムを組んでいたのか知らないが


背後でキュルキュルッキュルッというセル音とともに


『・・・ぃもおぉぉ〜〜〜っ!!ぅおいもだよっ!!!』


突然鳴り響くスピーカー


びっくりして振り向くと

運転席のオッサンもびっくりしてエンジンを切っていた

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