第1078話 実家にて

この話、ZOTTOに載せるかどうか迷ったのですがこちらにします。


同い年で親友のJ社長


その社長の部下のI課長(49)


先日、御両親から「いずれ私たちが死んだ時の事を話しておきたいから家に寄って欲しい」


そう言われて土曜日、実家に戻った時の話


Iくんの父親は86、母親は83。


父母それぞれの生命保険はこれ

家の権利書はこれ

死んだら入れて欲しいものはこれ

・・・etc


うんうん分かった、まだ先の話として承ったから、と


すぐ帰るのも素気ないので、その晩は実家に泊まることにした


翌、日曜の朝


Iくんは6時から目が覚めていたので、1階リビングでテレビを観ていた


7時半、リビング横の階段から父親が降りてきた


「早いなお前」


10分ほどのち母親も降りてきてリビングを覗く


「パンでも焼こうか?」

「あ、食べる」


母親がダイニングに消える


「あの子に引き継いだら何だかホッとして疲れた〜」

「ふふ、日曜だし後で2度寝すればいいさー」


カチャカチャと食器の触れる音と共に父母の会話が聞こえてくる


まだまだ2人、元気そうだな・・・


ぼんやりそんな事を考えながら何気に、リビングの開け放したままの入口に目をやると


まさに今しがた階段から降りてきてリビングを覗き込んだ、といったテイで


寝巻き姿の母親がじっとこちらを見ている


えっ?


奥のダイニングではまだ2人の会話が聞こえている


「ええっ?!」


2回目は声に出して母親に言う


すると母親は


まるで後ろから強引に引っ張られたかのように姿を消した


呆然とリビング入口を見つめたままのIくん


そこに「ブレクファスト〜」と言いながら、パンやサラダの乗ったお盆を持った"部屋着姿"の母親が入ってきた


「ん?どうしたの〜?」


「いや何でも・・・」



J社長「俺、『寝惚けてたんだろ〜』としか言わなかったけどさ」


それを俺の横で聞いていた宮里くんが難しい顔をしている


J「なんだミヤ〜ン、何かあるの?」


「いえ・・・」


俺「何やねん言えよ」


「ん〜あの〜、Iさんのオカァ(母親)後ろから強引に引っ張られたように消えたって・・・」


J「そうだけど、どうした?」


「出番間違えたんじゃないですか・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る