第929話 詐欺

年の初めくらいだったか、商工会の議題で


「若者をターゲットとしたFXやアフェリエイトで稼げる!詐欺」がますます流行っており


特に入社1~2年の若い社員が、いかがわしい講習会などに参加していないかどうか


良く目を光らせておいてください、との周知がなされた


詐欺を企てる側の口上に掛かると、若い奴らなどイチコロなのだろうか


世の中そんな旨い儲け話など無いし


引っ掛かる奴なんていないだろぉ~と我々大人は笑っているけれども。


そんな話を酒の席でしていると、飲み仲間の女性が


「もうほんとに、お恥ずかしい話なんだけど」と話しはじめた


彼女には大学二回生の娘さんがおり、折角バイトで稼いでも、計画なく散財して、いつもピーピー言ってるそうだ


まあ、どこでもそうだろう・・・ウチの下の娘もピーピー言ってたよ


で、ある時、娘さんが


いつもバイトの帰りに散財してしまうショッピングモールで、キャンペーン中のお姉さんに引き止められてVISAカードを作ってきたという


「あなた如きがカードを作れたの?どんな甘々な審査??」


あなたが持ったら大変な事になるからお母さんが預かります、とカードを取り上げたのだが


その数日後、娘さんが泣きついてきた


メールに「カード決済が下りました」と7万円の請求が届いたらしい


どうやら詐欺に引っ掛かった様子


いつも金欠の娘さん、何か良いアルバイトはないかとネットで調べているうちに


「女性限定!お金持ち男性の悩みや愚痴を、メールで相談に乗るだけで月100万稼ぐ人も!」


こんなアホなサイトに登録したらしい


『金は払うからメル友になって欲しい』という男たちのアピール一覧が載っていて


会費を払えば、直接交渉が出来るというもの


で、その会費というのが「ポイント」を買うシステムになっていて


カードを作った娘さんは、そのポイントを2,000円分購入、決済までしてしまった


その代金が、蓋を開ければ7万だった、という話。


「でもウチの娘、さらにアホでね」女性の話は続く


その決済時に、娘さんは「カードのセキュリティコード」について良く理解しておらず


カード裏側の番号ではなく、自分の生年月日を入力したそうだ


「えっ?それなら決済なんて下りないじゃん?その決済通知自体が詐欺なんじゃないの?」


娘のスマホに残っている決済通知のメールを見せてもらうと、代行会社の名前が載っている


女性はすぐ、その代行会社のカスタマーセンターに電話してみた


ところが怪しみながら掛けたその会社は、本物の決済代行会社だったという


「決済内容は本人でないとお答えできない」と言われたので、横にいる娘に電話を変わる


「はい、はいそうです、はい、はい」


娘さんは電話の相手とやり取りをしていたが


「セキュリティコード間違えてたら、エラーになるはずだって!」


明るくなった娘さんが、受話器を押さえながら母親に言うが


「えっ、7万の決済は本当なんですか・・・」また暗くなる


「セキュリティコードを間違えたのにどうして決済されたのか聞いてみなさい」


母親に言われた娘が、電話の相手に確認する


「本人確認の?身分証などで決済が下りることが?・・・ある?!」


わかりました、有難うございましたと電話を切った娘さん


「あのね・・・」


「何よ」


「その・・・報酬としてお金を振り込む時の、身元確認のためにって言われて・・・」


「・・・何したのよ?」


「マイナンバーカード、コピーして送信した」


だから決済されたのか。


「自分のデータを晒すことに何の躊躇(ためら)いも無いって・・・こんなアホな娘、ウチだけ?」


少々不安になったので、その日の夜遅く下の娘にLINEを入れた


こうこうこんな詐欺サイトがあるらしいわ、と。

アンタも気ィつけやーと。


すると。


どれだけミラクルなんだろう・・・同じようなサイトで5万喰らっていた( ̄д ̄;)


それもまだ、神戸にいた3年前の話らしい。


俺に言うと激怒されるから、こっそり母親に相談したそうだ


もちろん母親からも大激怒されたらしいが。


もうこんな世間知らずの娘たちが、2度とアホな詐欺に遭いませんようにと、祈るばかりだ。

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