第779話 浅知恵

木の葉を隠すには森へ

小石を隠すなら砂浜へ


先週末、とあるビーチでBBQを行った


関係各位、家族も参加して、密にならぬよう気を付けながら40人ほど集まる


焼き場を4カ所借り、各グループがあっちこっち箸を突つかぬよう、具材を各家族用に分ける


さて、今回の幹事 "も" 谷やんに任せた


責任感を持たせる教育の一環だ


ところが谷やんは焼肉に目がない


自分が幹事だからと言って、喰いそびれるのだけは避けたかったらしい


後で知ったのだが、自分用の肉3パック(900g相当)をこっそりと


自分の背後に置いてある、水に氷を浮かべてビールを冷やしているクーラーの底に


水が入らぬよう、ビニール袋で二重にガードして沈めていたらしい


「谷やんビール取って」と言われると「はい〜」と取り出す、自分管轄のクーラーだ


他人に触られる恐れはまず、無い


そして案の定谷やんは、あっちの焼き場・こっちの焼き場と忙しなく世話係をしているので、食事をする暇がない


"肉、確保しておいて良かった・・・"

ほくそ笑んでいたことだろう


そんな中、参加していた子供たち10人ほどが、何か別の飲み物が無いのかと騒ぎ出す


母親の1人が「幹事さんのところにあるんじゃない?」と言い


「幹事のおじさんどこ??」と子供たちに聞かれ


「あれ?いないねぇ?でもあそこの席よ、ほら」と


母親が指差した先に、子供たちは走って行った


俺はちょうど、今回参加している子供たちの監視役みたいなことをしていたので


すぐ傍の席で、そのやりとりを見ていた


程なくして子供たちが


「見て見て!あそこにこんなにいっぱいお肉があった!!」と


飲み物の代わりに、水の滴るビニール袋に包まれた肉3パックを持って帰ってきた


俺「え?まだそんなにいっぱい肉あったの?皆んな!食べろ食べろ!!」


子供たち「やったー!!」


5分後、自席でクーラーを引っ掻き回し


キョロキョロと辺りを見廻しては首を傾げる谷やんがいた

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