第778話 生ガキ

22の時に就職した会社で、初めてイベントに呼ばれた夏のBBQ


神戸の「しあわせの村」ってところが集合会場だった


所属社員が40名いたから、30人は来るだろうと参加したら、集まったのたったの6人。


食材運搬役の社員夫婦、男、女、女、俺


この会社、どんだけ結束力無いんだよ・・・


更に俺以外の5人、普段お互いにそれほど付き合いがある訳でもなさそうだし・・・


うち1人の男性が呉出身で


この日のために実家からわざわざ取り寄せた、牡蠣の剥き身がタプンタプンに入った一斗缶×6缶を持参


他の食材もそうだが「いったいどうすんの、これ」と


6人で大量山積みの肉や野菜&一斗缶を、ただ眺める


40人おるのに6人て。


「Tくんも参加するやろ?」


俺に電話を掛けてきた、てっきり主催者かと思っていた男性すら来ていない


まあ、でも、やりますか・・・?


それぞれに、この集まりの悪さに呆れながら、何も盛り上がらぬままBBQがスタートする


本来は6面借りていた焼き場の、一面だけに火を起こす


俺を除く5名は各々トングを持ち、やる気のないまま、網に食材を乗せていく


俺は・・・


全く誰も見向きもしない、カキの一斗缶×6に目をやる


"この人せっかく実家から取り寄せたのにな・・・"


呉出身の男性をみる

心なしか機嫌悪そうだ


そらそうだわな、機嫌も悪くなるわ・・・よし!


「あの、実は俺、カキが大好物なんすけど、1缶開けて良いですか?」


・・・べつに大好物でもなんでもないのだが。


「あ、どうぞ、是非」

「じゃあTさんカキ担当だね」


そんなわけで1缶、自分の横に置き、専用缶切りでギリギリ開ける


そして目の前の網に、ひたすらカキの剥き身を並べていく


剥き身のカキが一斗缶にタプンタプンて、どれだけの量か想像つきます?


俺はひたすら焼き、そのままトングで食べ、また焼き、トングで食べ・・・を繰り返す


「カキばっかり食べてないでこっちの肉とか野菜も食べたら?」


「Tくんって本当〜にカキ好きなんだね〜」


そうなんすよ・・・と作り笑顔を5人に向けながら、ひたすらカキを食べ続けた結果


一斗缶のカキを、深さ10センチほどまで消費ところで気持ち悪くなってきた


そして遂にギブアップ


もう食えません・・・

ちょっとベンチで横になります・・・


夏場の生ガキに当たった、という訳ではない

ただただ、カキの食べ過ぎ


それからというもの、生ガキの磯臭い匂いが漂ってきただけで吐き気をもよおすようになった


今現在も克服できていない、唯一のNG食材だ

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