第687話 おばちゃん

本年1月末に10日ほど、地元に近い有馬温泉に湯治目的で滞在していた


ここ数年まともに休みも取れず、体の節々が悲鳴を上げていたのだ


小学校時代を過ごした懐かしい土地で体を休めていると


「菊一文字https://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16816927861617008850 」や

「久木田のオカンhttps://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16816927861685463382 」など、昔のエピソードが脳裏に甦ってくる


それで、突然思い出した


久木田のオカンのあと、続きがあったことを。



小4の時に、友人の母親の醸し出す色気の虜になりまして。


「久木田~」を読んでいただければ分かるのですが、ちょっと訳あって、その母親とも会えなくなり


それ以来、大人の女性の色香を求めて彷徨っていた時期があった


そして小5のある日、そんな女性がとても身近にいたことに気付いた


俺の母親が「りっちゃん」と呼ぶ、母親の兄嫁にあたる女性


3歳年上のりっちゃんと母はとても仲が良く、学校から帰ると週3くらいの頻度でりっちゃんが遊びに来ていた


この方、顔はスザンヌ似

スタイルも良くてスレンダーな美人さん


それまでは「綺麗なおばちゃん」くらいにしか思っていなかったのだが


久木田の母親の件のあと彷徨っていた俺の心が、りっちゃんの存在を拠り所と識別した


それからというもの、学校から帰ってきてりっちゃんがウチにいると


野球の約束とか学校の宿題とか、どうでも良くなった


少しでもりっちゃんと絡みたく、側を通ったり、りっちゃんに話しかけたり


そうして見れば見るほど


久木田のオカンを10とすれば、りっちゃんも10かそれ以上の魅力で溢れていた


ところが


俺が小6に上がるころから、パタッとりっちゃんがウチに来なくなった


母親に聞いても「忙しいんちゃう?」としか言わない


まあ俺自身、小6にもなると流石に、現実的にりっちゃんと何かが"起こる"わけでもなし、と我に返ったのもある


・・・それから26年後。


母親の葬儀で久々にりっちゃんと再会した


「わぁ~まさくん、おじさんになったわねぇ」


「おばさん、お元気そうで何よりです。今日は有難うございました」


「あのね私、まさくんのお母さんに聞きたいことがあったの。でも聞けずじまいになっちゃった」


「何か、ありましたか?」


「う~ん。あのね、まさくん憶えてないかも知れないけど、私ず~っと遊びに来てたでしょ?でも急に来なくなったでしょ?」


「あー・・・僕が小6に上がる頃だったかな?確かに、急に来られなくなりましたよね。あれってやっぱり、何か御事情があったのですか?」


「・・・何も聞いてない?」


「えっ、母からですか?いや~なにも」


「そっか~。本当のことは分からないのよ、だから怒らないで聞いてね?私、まさくんのお母さんに『来ないでくれ』って言われたのよ」


「えっ?!何でですか??」


「うん、その理由が本当なのかどうか、聞けずに今までいたの。だからまさくん、聞いてもいい?」


「えっ・・・僕にですか?」


「お母さんに言われたのはね。まさくんが私のことを女として見てるって」


バレとったΣ((((;゜Д゜)))))))


「それってまさくん本当?それが理由だったのかな?」


「・・・おそらく本当です」


「・・・・・・」


「すみませんでした。あの頃、おばさんがウチに遊びに来るのが楽しみで」


「そうだったんだ・・・」


「はい・・・すみませんでした」


「まさくんが謝ることないのよ。ちょっとおばさん、複雑だけど」


「本当にごめんなさい」


「ううん、いいのよ。・・・で?今は?」


「えっ?」


「今のわたし」


いやいや!

それはちょっと、心の整理が!!


俺38、おばさん71の頃の話。

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