第640話 リサーチ不足

カナダから単身赴任で日本に来られているロベールさん


大手水産加工会社のディレクター(部長)をされている


半年前から技術研修で沖縄に住まわれているのだが、御本人が大の釣り好き


そのロベールさんの大学生の息子さん2人と高校生の息子さん、合わせて3人が1週間、沖縄に滞在されるとのこと


ウチの釣り客でもある軍のアメリカ人から、ロベールさん御一家を釣りに連れて行ってやって欲しいと依頼があり


このゴールデンウィーク中、ロベール一家4名の離島遠征ツアーを受け持つことになった


あいにく俺は某グラビア撮影の遠征が入っていたので、ロベール一家の釣行は谷やんに任せることにした


ちなみにウチのバイリンガル部隊は大場くん・坂下くん・宮里くん・上の娘だが


彼らはダイビングなどのマリンスポーツを主に、若者客のツアーに同行していたため


俺とU部長の次に釣り経験が豊富で、簡単な英語のやりとりもできる、彼にしたのだ


「谷やん、カナダいうたらサーモンとかハリバット(オヒョウ。1mを優に超えるカレイの仲間)とか巨大魚のメッカやけど、沖縄の巨大魚で度肝抜かせてやってくれよ」


「任せといてください。最高の釣行にしますから」


ところが前日の夕方、ロベールさんを紹介してきた外人さんから電話があり


ロベールさん本人に急用ができた為、本人は参加できないが、息子3人を港まで送るので宜しくお願いしたい、とのことだった


・・・さて、釣行当日の夕方。


グラビア撮影御一行との夕食の合間、谷やんに電話を掛けてみる


「もう~先に言っといてくださいよ~!!」


開口一番、谷やんが文句を言ってきた


「なに?何だよ?」


てっきり英語の通じるお客様だと思ったらしい

俺もそう、思い込んでいた


後で知った事だが、ロベールさん御一家はモントリオールの方で、モントリオールは8割がフランス系カナダ人


ロベールさんは仕事上、英語も話せるが、息子さん達はがっつりフランス語オンリー


「『レテショモン!レテショモン!』とか話してくれるんですけど意味分からんから『ダンケ!ダンケ!』程度しか言えませんでしたよぉ~!」


ダンケってお前。


あ、釣り自体は良型カンパチ爆釣だったそうです


※皆様ご存知かと思いますが、カナダでは英語とフランス語が公用語


「レテショモン」は恐らく・・・


La tension monte!(テンション上がるわ~!)

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