第641話 敵討ち

大阪に向かうJRの車内、俺の座る正面のロングシートに


大きなマスクを付け、あんた溶接工かというくらい長いサンバイザーまでして電車に乗ってきたサラリーマンが座った


背筋ピーンの内股状態で文庫本を読み出した、その怪しいサラリーマンだったが


ものの数分もしないうちに寝落ちして、隣のオッサンの肩に倒れてきた


オッサンがグイッとサラリーマンの頭を押し戻すと、サンバイザーがずれて大きく斜めになる


しかしサラリーマンは寝落ちしたままだ


それをほぼ正面から見る位置に座っていた俺には


必殺仕事人の無駄のない動きにより、瞬時に首を折られ絶命した男にしか見えず


見れば見るほど吹き出しそうになるのを、必死に堪(こら)えている俺の


隣に座っていた女子2人組の片方が


「これでおっかさんも浮かばれる」


小声で言ったのが聞こえてしまい、思わず吹き出してしまった

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