第522話 ない

谷やんを連れて客先に訪問し、懇意にしているK専務と応接で打ち合わせしていた


要件も終わり、雑談に移る


確かK専務は不整脈で、循環器系に通ってらっしゃったのを思い出し、質問してみた


俺「先だって受けた人間ドックの結果が来たのですが、心電図で引っ掛かってしまいまして。専門医への紹介状まで入ってましてね」


K専務「何て診断されたの?」


俺「たしか 『ST-T異常』 と書いてありました」


K専務「あ~ST-Tね、はいはい」


谷「えっ、まさかスペース・トルネード??」


それはSTO(小川直也の必殺技)だ


そんなのが心臓で起こったら即死だ俺は。


その後、心臓専門の大きな病院で診てもらったところ、結果的に「貴方の心臓は馬力もあるし異常なし」と診断され、ホッとしたのだが


その過程。


心エコー検査の担当が若い女性技師で、プローブという、エコーをはかる髭剃りみたいな機材を体に当てて、心臓の波形を見ている


結構念入りにグリグリと測っていたのだが、途中で「ちょっとグラフ見てきますね」みたいなことを言って立ち去り


すぐに年配の女性技師を連れてきて、計測を交代した(エコー検査は技師の技量で結果が左右するそうだ)


その2人の会話が、俺に聞こえないようにヒソヒソ話のつもりなのだろうが所々、漏れ聞こえる


見えないところあるよね・・・

う~ん低いけど・・・診断するまでも・・・

ないなぁ・・・ある?

ない・・・


ないって何?!

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