第519話 ワイン

「そう言えばTちゃん。25日、あの3人さん来るよ」


大阪のバーのマスターからLINEが入った


あの3人。


先月、兄貴分のマスターのバーで飲んでいると3人の来客があり


カウンター左端の俺から2席空けて、日本人の男性・外国人の女性・日本人の女性、という並びで座られた


挟まれた、若く背の高い外人女性はどうやらフランスの方


右手の女性は通訳さんかな?

左手の50代の男性は、俺は初見だがバーの常連さんのようだ


マスターが「Mさん、今日は珍しい組み合わせですね」男性に声を掛ける


料理の注文が済む。

飲み物は3人とも、いきなり赤ワインのようだ


マスターが注ぐ赤は、ちょうど俺も先ほど同じものを飲んでいた


乾杯がおわり、右手の女性が席を立ちトイレに向かう


残された男性にフランス女性が何やら声を掛けたが、男性には言葉が判らないようだ


フランス女性がワイングラスを持ち、"これは(銘柄)何ですか?"みたいなジェスチャーをしたので


男性はようやく「ああ!」と理解した


・・・のだが


どう言ったら良いものか相当悩んだのだろう、意を決して口を開く


「これは、シャァァーンピニョォォォーン」


キノコだそれは。


それを言うならシャンパーニュだろうが・・・そもそもそれ、発泡してないただの赤だ。


フランス女性は首を傾げて苦笑いしている


通じていないと悟った男性は、焦ったように1人つぶやく


「何だったかなぁ〜イタリアの〜何処だったかなぁ〜・・・ルチアーノか?」


ん?マフィア?


言わんとするのはシチリアーノ(ナ)なんだろう


そこにマスターが料理を持って厨房から出てきた


「あっマスター!これイタリアの何処だっけ?」


「チリ産です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る